You’re gonna meet some gentle people there

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韓国ドラマ「世界のどこにもいない優しい男」

 
マルとウンギの思い出の曲 ♪ San Francisco ♪
ドラマ中で、マル、ウンギ、ジェヒは口々に「この地の果て」とか「この旅の行きつく先」と言っていたが、彼らの旅の行きつく先には、この歌詞のように ♪ You’re gonna meet some gentle people there ♪ だったのだろうか。

■ ソ・ジョンギュ(キム・ヨンチョル)
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このドラマでも、「赤道の男」に続き、実は密かに、手に入らなかった愛に苦しむ父親を、キム・ヨンチョルは演じていましたね。
愛に苦しんだ挙句、女を信じなくなり、周囲の女を不幸にしていく男。自分の娘さえも。
ウンギの序盤のヒステリックさは、父から長男の役目を背負わされ、女性性を否定され育った反動でしょうね。

 

 
■ ジェギル(イ・グァンス) & チョコ(イ・ユビ)
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実は一番、その役割が謎だった2人ですが、このドラマの癒しでもありました。
チョコの難病設定とかは、どこに行っちゃったんでしょうか。そして序盤では、兄を独占したい妹なのかと思っていたら、そうではなくって、結構マルをほったらかしていましたね~(笑)
ジェギルの御曹司設定も、何かあるのかと思っていたら、何にもなかった・・・(笑)
しかし、このカップルには本当に癒された! 私だけではなく、マルもこの2人がいたからこそ、生きていけたのでしょうね。
このカップルは波乱万丈なストーリー展開の中で、きちんと「普通の生活」という碇の役目もあったのかな。

 

 
■ 弁護士たち
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「優しさ」の定義なんか、人それぞれでしょう。彼らは、彼らが信じた「優しさ」を愛する女たちに、実行しただけなのです。悪事に手を染めようと、真実を求める女に対して嘘を言おうとも、ただただその女のことを思ってやる自分たちの行為を「優しさ」だと、彼らは思っていたはずです。
このドラマは、ワルツなので、彼らはあくまでスパイスの役目しかなかったけれども。
パク弁護士が、ここぞという時に言う「ウンギ」の響きに、ウンギと彼の歴史を感じたし、アン弁護士の「優しさ」ゆえに、ジェヒと共に崖に墜ちていくのも切なかった。
やっぱり、ジャッカルとコヨーテの話は、実はアン弁護士とジェヒのことなのかしら。

 

 
■ ハン・ジェシク (ヤン・イクチュン)
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「優しい男」におけるトリックスターでしたが、彼はわかりやすい人物であり、そう思うと愛すべき人物だった。
親に愛されなかった子供であり、誰かに認めてもらえなかった、寂しい人間でもあった。無条件に愛してくれる人がいなければ、人はなにもかもどうしていいのかわからなくなってしまうものだから。
そんな彼を「2+」のお肉が救ったなんて・・・涙。チキチキチキチョコの「普通の生活」が彼を救ったのでしょうね。食生活が、誰かを救うのね~と、再認識しました。
愛すべきトリックスターぶりに、敬意を。

 

 
■ ハン・ジェヒ(パク・シヨン)
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ジェヒヌナ、本当に好きだったわ~
常に満たされない心を埋めるためにあがく女。手に入らないものだけを、追い求める女。失ってしまって、はじめて自分にとって大切なものだったと気づく女。
マルやアン弁護士から愛されていた時は、彼らを見向きもしなかったのに、失ってしまって初めて呆然と佇む女。
彼女が求めていた愛は、本当はいつも彼女の周囲にあったのに、気づかないのよね。
彼女のそういう愚かしさが、身につまされて、ジェヒヌナは愛おしいなぁ・・・と思います。失った愛を取り戻そうとする彼女のもがく姿に、心が痛くってね。

 

 
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彼女が本当に欲しかったのは、暖かい家であり、食事を共にする家族だったんでしょう。
しかし、ジェヒヌナ、マルが目の前に現れるとマルに執着するけれども、彼がいない時は探そうともしなかったみたいだし、そんなところは、世の中の男は皆私のモノ・・・みたいな、強烈な女王気質を感じます(笑)
ウンギがマルを好きになったから、対抗意識で昔の男マルにちょっかいを出したのじゃないか、と思えるフシあり。やっかいな性格です~
彼女を愛する人間に対しては実に残酷にその愛を取り上げて、鞭のように、その愛をその人の頭の上で振り回すんだもの。
このドラマはワルツだと思っていたのですが、後半ジェヒヌナの役割が、ヒールとしてマルに試練を与える狂言廻しとなったのが残念。マルとの関係でも対峙関係ばかり・・・ 失ってしまった愛のかさぶたをはぐと、じくじくして痛いのに、この二人にはそんな痛さが演出されていなかったような気がします。

 

 
■ ソ・ウンギ(ムン・チェウォン)
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猪突猛進な女。彼女は一つのことしか目に入らないんだろうな~。どうも仕事でもそうだったらしく、お酒で相手をつぶそうとしたり、村に泊まり込みで住民を説得したり、なりふり構わず。それが恋愛にも表れています。
父親から長男の役目を背負わされて息苦しい所に、マルが現れたのでしょうね。
父からの抑圧を逃れるには、恋愛しかなかったのかもしれません。
ヒステリックで偏屈で、片意地ではありますが、妙に素直なところもあったりして。その素直さに、マルはやられてしまったんでしょう。
あんなに真っ直ぐに相手に突っ込んでいくような、ある意味破壊的な愛を見せるヒロインは、そうそういません。相手がどう思うと関係なく、常に自分がどう思うかが大切な女。
そんなウンギが好きなマルって、彼女に振り回されるマルって、マゾなのかもとこっそり思っています。
孤独でとげとげしくて、理解不能で、それでいてどこか目に見えない所の傷口から血を絶えず流し続けるようなそんな女。全身で愛を求めているのに、愛していると言えない女。「憎んでいる」をまるで「愛している」と同じ意味で語る女。
しかし、彼女が全力で愛に向かって走って行くさまは、まぶしくもあり、うらやましくもあり、怖くもあり。
韓国ドラマのヒロインにありがちな「いい子」じゃないところが、好きでした。

 

 
■ カン・マル(ソン・ジュンギ)
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実はマルは、empty-nest syndromeじゃないかと思ったりします。誰かから強烈に必要とされることでしか、自分のアイデンティティを見出せない男。
ジェヒヌナに切り捨てられ、ウンギを見失ったあの事故以来、彼は緩慢な自殺をしていったのね、詐欺師になって魂までも売り払っていた。そこに又、自分を必要としているウンギが現れたのだから。
生きる目的ができたのね。
いつも、いつも、誰かのために自分を犠牲にし、耐えて、苦しんで、しかし「幸福」も感じていると言う。ウンギの記憶を探す旅も(彼が全部お膳立てしてたのね!)、まるで研究者のようにじっとウンギの様子をうかがいながら、優しさにつつみながら、手助けしていく。彼女が記憶をとりもだ推す過程は、彼には苦痛しか与えないというのに。

 

 
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前半の復讐に燃えるマルには私は全然心動かされなかったのに、後半のマルのマゾぶりに、すっかり心が持っていかれました。あの12話のモノローグが、私の心には響いたなぁ。
それまで、彼がどういう思いで、どういう気持ちで、ウンギに接しているのかわからなかったのに、あそこですとんと胸に落ちた。
マルがいつウンギのことを愛するようになったかが、まったくわからなかった私。そうだったんだ、と。結構な衝撃でした。そうなるとマルのマゾっぷりに、ものすごく心が痛んで、持っていかれたわ。
そこからこのドラマを視聴する姿勢が変わりました、私。シンクロ率がものすごく上がりました(笑) 前半のマルの魔性ぶりにはやられなかったのに、中盤からのマゾぶりにノックアウトされちゃった。
残念なのは中盤にかけて、ジェヒヌナとの対峙をもう少しメランコリックに描いて欲しかったわ。この二人の関係って、もう少しウエットで狂おしくて、切なくって、やるせないはずなのにな~ 妙に勧善懲悪みたいな対決になったのが残念。
マルが19話で述べたように、彼がモンスターを作り出したのだし、彼の「優しさ」は間違っていたのだから。
このドラマでは「優しさ」というものがキーワードになっていますが、「優しさ」というのは、両刃の剣だったりしますもの。弁護士たちみたいに「優しさ」が正しい・・・とは限らないもの。
ジェヒヌナに対する「優しさ」では失敗してしまったけれども、ウンギに対しての突き放す「優しさ」は、彼女が記憶を取り戻すきっかけになったのね。間違えずにすんで、よかった。

 

 
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16話の感想で、次のように書いたのだけれども。

神様、とつぶやいてみる。
神様。
孤独な孤独なマルの、幸福が、彼の元から去らないように、と。彼は、本当に、何一つ今までの人生で望んだことは叶わなくて、全てを失って、そんな彼が望んでいるささやかな「幸福」を奪わないで、と。

20話ラスト、同じようなモノローグがマルの口から語られたことに衝撃でした。
シンクロニシティだわ~と。

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 2 )

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  1. fiona

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    はじめまして。

    優しい男を見終えたところです。
    マルとウンギの思い出の曲って、サンフランシスコだったのですか!?
    車で流れてた、そして無言電話の時に流れてた曲のことでしょうか?
    Mnetではクラシックっぽい曲だったのですが。差し替えられてたのかな?
    驚きました。何か全然ドラマの雰囲気が違ってしまいそう。

    yucaさんのサイトはかなり前から見せていただいていたのですが、
    優しい男ですっかり廃人になってしまい、ついに書き込みデビューです。
    考察が素晴らしすぎて、本当にありがとうございます。

    ちなみにこちらのサイトで知った、ホワイトクリスマス、なかなか
    問題作でしたが、面白かったです。教えていただき、ありがとうございます。

  2. moonlight-yuca

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    ♪fionaさん、コメントありがとうございます♪

    はじめまして!こんな僻地のブログに遊びに来ていただけて光栄です!!

    >何か全然ドラマの雰囲気が違ってしまいそう。
    えええ!教えていただいて確認しましたら、やっぱり差し替えられていました(号泣)
    このドラマの要となる歌だと思うのですが。
    著作権絡みとは言え、なんともやるせないですよね・・・
    やるせないあまりに、記事を一つ書いちゃいました(苦笑)

    「優しい男」なんだか廃人になりますよね。
    ものすごくわかりにくいドラマなのですが、そのわかりにくさを考えているうちに廃人になっていました、私も。
    互いに「幸せ」とつぶやきながら、その言葉を「嘘」と思い、すれ違う二人に、また泣けるんですよね。
    忘れ難いドラマです。

    「ホワイトクリスマス」も面白いですよね。
    緊張感が半端ない。大好きなドラマです。fionaさんも気に入ってくださって、お仲間になれて嬉しいです~

    こんな勝手気ままな、書きたい放題のブログですが、またお時間のある時にお立ち寄りいただけたら、幸いです♪
    これからもよろしくお願いします。