泡沫の夏(2018)


泡沫の夏 Summer’s Desire 全36話 (208年 中国)

■原作:ミン・シャオシー
■キャスト:
チン・ジュンジエ(歐辰)
チャン・シュエイン(尹夏沫)
ホァン・シェンチー(洛熙)

 

養父母の元で弟と暮らす女子大生の尹夏沫(イン・シャーモー)は、御曹司の歐辰(オウ・チェン)と交際し、幸せな毎日を送っていた。だが、彼女の家に孤児の洛熙(ルオ・シー)がやってきたことで生活は一変。夏沫と洛熙の仲が深まっていくのに嫉妬した歐辰が、洛熙を海外へと追いやってしまう。深く傷ついた夏沫は、歐辰に別れを告げ…。3年後、芸能界で成功を掴もうと奮闘する夏沫の前に、大スターとなって帰国した洛熙と記憶を失った歐辰が現れる。再び動き出した3人のラブストーリーはどこへ向かうのか─。怒涛のスピードで加速していく、一触即発のスリリングな奪い合いに釘付け!“この世で最も美しく、最も残酷な三角関係”という原作のキャッチコピーそのままに、愛とは儚く不確かなものと知りながら、それでも求めずにはいられない葛藤に満ちた展開が心を離さない。そしてヒロインのシンデレラ・ストーリーや出生の秘密に隠された過去が巧みに絡み合い、ラストは誰も予想しなかった驚愕の結末を迎える!

 

 

「泡沫の夏」フリークである私は、どうしてもこの2018年度版を見ずにやり過ごすことなんかできない。
「泡沫の夏」(2010年)については、旧ブログで熱く熱く語っていて、DVDはもちろん、写真集、CD、本まで持っています(えっへん!)
このドラマの何がそこまで私を夢中にさせるのか。
あらすじは「究極のトライアングル・ラブ」と銘打たれているように、本当にべたな、懐かしの少女漫画のような、昭和の大映ドラマのような展開。
それでも、今回2018年度版を視聴していて、やっぱりこの物語は好きだなと再認識。
泥臭い物語なんだけれども、この物語に秘められている「毒」が好きなんです。

 

 

 


尹夏沫


歐辰


洛熙

 

 

前作のあまりにも濃ゆ~いキャストを一新して大陸版「泡沫の夏」はさわやか、フレッシュなメンバーで。
あまり非の打ちどころのない美男美女なんですが、視聴していくうちになんだか飽きちゃってね。
フレッシュすぎて、いとけなくって、痛々しくって、青春って感じでね。
私の好きな「毒」がないのです。
私の知っている尹夏沫っていう女は、若くて美人なくせに「愛」なんて不確かなものに幸せを見出さない女なんです。
そのドライさが醸し出す「毒」が、少女漫画のような展開にみせかけて、この物語に触れると実はなんともビターな後味を感じさせるのよね。
「愛」なんて信じない女に「愛」を求めてしまう男のミスマッチさが、この物語の面白いところ。
英題が「Summer’s Desire」 Summerとは夏沫にかけてあり、そんな夏沫の欲望の物語でもあります。
「愛」ではなく「家族」が欲しいという欲望。
2018年度版はね、歐辰にしろ洛熙にしろ、健全でね、「毒」に侵されていないのよ。
まるで子犬のようにひたむきに、夏沫を見つめ、子犬のように傷つき、健やかに立ち直っていく。
こうやって考えていくと、「毒」にあふれた2010年度版は、なんとも豪華なキャストであり、確かな演技力があり、記憶に残るドラマだった。
今から10年前のドラマだから古臭いけれども、今でも私の心に残っているくらいだから。

 

 



「泡沫の夏」は3度映像化されていて、これは2016年度版。
こてこての少女漫画じゃん(笑) これは「泡沫の夏」とは名ばかりのとても変な映画でした。

 


も、もしかして歐辰? ありえない!こんなふやけた笑顔を歐辰は見せない。
夏沫に対しては、いつも彼女の本心が分からず、キリキリして苦しくって切なくって、執着してしまうのが歐辰よ!

 


洛熙? なんていうかチープな感じが醸し出されて・・・ 近所のお兄ちゃんじゃん。

 

なんともヘンテコな2016年版より、2018年度版は「青春」って感じのドラマに仕上がっていました。
尹夏沫にしろ、歐辰にしろ、洛熙にしろ柔らかな心がぐさぐさと傷ついていくのは、青春なんだろうなぁ。
あまり「究極のトライアングル」という感じはしなくて、青春の1ページとでもいうべき爽やかな後味の「泡沫の夏」でした。
お子様や、ライトユーザー向けかな。
毒々しさに浸りたい私にとっては、面白いけれども、物足りない味わいでした。

 

★★★

 

 


やっぱり「泡沫の夏」は2010年版が一番、パワーがあると思います。キャストも豪華だしね。

 


徐熙媛 as Yin Xia Mo 尹夏沫

■■■■■

When Old Bubble Bursts, New One Will Fly
That’s How Life Continues

15歳までは歐辰の綺麗なお人形だった。
家族のため、澄のため、歐辰のそばにいれば、守られていた自分。
歐辰を好きだったのかもしれない。
傲慢で、すぐ束縛する、それでいて哀しい瞳を持つ大人びた少年のそばにいれば
家族も自分も守ってくれる、それが「幸せ」だった。

でも人から与えられる「幸せ」はまるでシャボン玉のよう。
唐突に、一番、美しい瞬間にはじけてしまう。
綺麗なお人形でいても、家族は守れなかった。
「愛」や「恋」など自分をコントロールできなくなる感情は、切り捨てる。母親のようになりたくないから。
15歳までのお人形の記憶は、すべて忘れる。
自分で家族を守らなければいけないから。
だから歐辰に抱いていた自分の気持ちも切り捨てる。「好きだったことはなかった・・・」と。

「愛」に何も期待していないのに、男に抱かれるときは顔だけは花がほころぶように微笑っていて、だけど目だけは決して微笑っていない・・・
そんな甘い毒薬のような夏沫。
優しさと残酷さが、紙一重のところで重なりあっている、そんな匂いを持つ女。

「愛」を忘れた人魚姫が、「他人の愛しかた」を思い出すまでのお話。
彼女が何よりも大切だと思う「家族」は、
他人を愛するという、一瞬一瞬のシャボン玉のような「幸せ」のきらめきからしか
作り出せないから。そうやって人生は続いていくのだから。

そしていつの日にか、愛から涙を知るだろう。

 

 


黃曉明 as Luo Xi 洛熙

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派手、大胆、自信家、高慢、ナルシスト、クール、気まぐれ、さびしがり、自由奔放、情熱的、意外と純情。

洛熙は孤独だが、幸せも恐れている。
幸せはいつもその絶頂で、奪われるものだから。
だから幸せになる前に、自分から幸せを手放したら、奪われることはない。
期待しなかったら、失望することはない。

洛熙の妖艶に微笑むその微笑の裏に、いつも不安で怯えている少年の姿が見える。
誰にも心を動かさない、「愛」だの「幸せ」など移ろいやすい物に決して自分の心を明け渡してはいけない。
そう思いながらも、夏沫に惹かれていく自分がいて・・・
自分を愛してくれと叫んでいる、傷ついた少年の姿が見えるから。

愛や幸せはやっぱり、うつろい易くて、壊れやすくて、シャボン玉のようだ。
壊れる寸前が、一番美しく、はかなく、輝いている。
でも、誰かを愛したという記憶は自分の心に残り、誰にも奪われることはなく、優しく自分を包み込む。

そんな記憶の積み重ねを人は「幸せ」と呼ぶのかもしれない。
自分が生きてきた証だから。
愛することも、喜ぶことも、誰かを大切にすることも、愛にもがき苦しむことも、ひざまずいて泣いてすがることも、歓喜の絶頂も、悲嘆の涙も、全部、生きているってことだから。

そんな洛熙だからこそ、私は、切なくて、愛おしくって、哀しくって、涙する。

 

 


何潤東 as Ou Chen 歐辰

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傲慢、独善、孤高、一途、几帳面、凝り性、秘密主義、嫉妬深い、甘えん坊、短気、神秘的。

孤独な少年時代、ひとりの少女と出逢う。
世界でたったひとりの少女。自分が射たボウガンの先から逃げなかった少女。
少女の瞳は、少年の心を射抜いた。
初めて誰かを守ってやりたいと思った。
シャボン玉を壊さないように、大切に、大切に、彼の手の中で守ってやりたかった。
それなのに、彼は、その手でシャボン玉をつぶしてしまった、17歳の春。

失ってしまった幸せを忘れて生きてきた彼は、欠落した存在だった。
いつも無意識に、欠けた片割れを探して。

It was missing a piece.
And it was not happy.
So it set off in search
of its missing piece.

自分の心を揺さぶる女に再び巡り合うことができた歐辰。
だけど物語はここでハッピーエンドになるわけではない。
「至高の幸福」を手に入れた瞬間、彼の心には今度はそれを失うのではないかという疑いがきざす。
ことに「幸福」に慣れていない人間にとっては。
幼いころ愛されないで育った人間ほど、成長してからの愛を切実に求めるのだ。
だから、夏沫を求め過ぎて、彼女を手に入れるためには、何だってする。
そう・・・少年だったあの頃のように、束縛して、がんじがらめにして、逃げ出せないように。
夏沫がいないと息もできないから。そんな圧倒的な熱狂的な執着愛。
そんな歐辰の愛が、どんな風に変化していくのか。

洛熙と歐辰って、実はよく似ているような気がする。
愛を失うことで自分が傷つくのを恐れた洛熙は愛を手放す。
夏沫を自分の手で握りつぶすことを恐れた歐辰は夏沫を手放す。
どちらも愛を知らずに育ったから、相手を愛することを知らなくて。
ただ、自分が傷つくことを恐れた洛熙と、夏沫を壊すことを恐れた歐辰の差があの結末なのだろうな。

そして夏沫がいなければ、自分が生きていけないことをしりつつも、夏沫を手放した歐辰の、その愛に、その不器用な愛し方に、切なくって、哀しくって、涙する。

 

 

再見、泡沫之夏

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

  • コメント ( 6 )

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  1. choco

    yuca様
    お久しぶりです。「泡沫の夏」〜なんか乗れませんでした〜残念。
    韓ドラも飽き、今は中国時代劇にハマってます。(ファンタジーものは苦手ですが)今1番楽しみなのは「エイラク」です! その衣装が素晴らしくきっとyucaさん好みだと、勝手に思ってますが〜(笑)その衣装を映す映像のトーンがまた、本当に上品で、TVドラマであのクオリティは流石お金かけてるな〜と。俳優さん達は勿論素敵だしストーリーも引きつけます。もうご覧になっていたら是非またお時間ある時、記事にあげてください。「月に咲く花のように」も面白かったです。

  2. うたかたのCOVID-19を願う・FANです。

    拝啓 梅雨のみぎりと言いたいところですが
    コビデじゅうきゅうは、季節なんてお構いなしです。

    ユカさんのご身辺は、如何ですか?
    賢明な人ほど緊張感を維持しているので、
    自粛解放とウイルス消滅を誤解しているかのような人に疲れさせられます。

    泡沫の夏、懐かしいなぁ・・
    深夜ドラマを録画しまくりの頃、中ドラにも手を出しました。
    結果、内容よりも
    演出と俳優さんの声の違和感がぬぐい切れず

    泡沫の夢になってしまった・・・
    今年は泡沫にならずに済むだろうか・・

    あ。
    泡沫でないマスク。

    先週届きました、きっちり2枚。
    給付金はまだですが・・
    ああ、ポスター貼るだけで●●マン貰えるなら、何度でも
    アンリ杏里 安理 杏莉 安保理って書くのに、住民ではないけど。

    泡沫の夢のまた夢だ。 かしこ
     

  3. yuca

    chocoさま、コメントありがとうございます。ごぶさたしております!

    >今は中国時代劇にハマってます。
    「エイラク」は評判いいですよね。気になっています。
    最近の中国ドラマは舞台・衣装にお金をかけていて、クオリティが高いですよね。

    実は今日から、「東宮」にチャレンジする予定です!
    どうかな?はまるかな?

  4. yuca

    FANさん、コメントありがとうございます!

    なんだかな、自粛疲れしているんでしょうね、「泡沫の夏」に手を出したなんて(笑)

    まだまだ不透明な状況が続き、私の仕事も泡沫にならないように、ブログの更新が泡沫にならないように祈りつつ。

  5. 泡沫の浮気性の・FAN

    おっと!ユカさん!!
    ご存知かもしれませんが、ときめきます。

    https://news.livedoor.com/

    そして、泡沫の夏の感想は何処へ行ったんだ・・

  6. yuca

    FABちゃん、どもども~

    すごい雨ですね。大丈夫でしたか?

    そして、なにない?
    ときめきがわからない~