世界の中心で愛を叫ぶ獣
こんなに美しい獣を見たことがない。
返り血を浴びた獣が好き。血だまりの中、平気で高笑いするあなたは、どこかぶっ壊れた人間で、自分のどこが壊れいているのかわからない。どうしても手に入れたい人がいて。これがお金とか地位とか、わかりやすいものだったらよかったのにね。人の心なんて、この世で一番不確かであいまいなものに恋い焦がれてしまう、その矛盾がいいの。
人の心なんて手に入れたかどうか誰にもわからないもの。例え相手があなたを「愛している」と言ってくれたところで、あなたと同じ愛の強さで愛してくれるかはわからない。ただ目の前にいる人間を切り捨てて進んでいけばよかった単純な世界が、手に入れたい人ができた瞬間に複雑な世界になる。初めて世界が複雑だったことを知り、あなたはこの世界にとって自分がとてつもなく異質だと知る。
その時のあなたの帰り血を浴びながら呆然とするその表情が、泣きたくなるくらい好き。
この70歩、獣がどんな思いで、駆け抜けたか。
この30歩、獣がどれだけ王を抱きしめたいと思ったか。
この10歩、あとたった10歩なのに、永遠に届かない10歩。
「ナエ トンマナ」の一言を伝えるために。
名前のない王に名前をつけるために獣は駆け抜けていった。獣だけが命と引き換えに名前を、愛を叫ぶことができたのだ。
世界の中心で。
2015年6月17日 ブログ開設5周年記念としてリトルプレス「NOT LOVE, but affection」を制作・配布いたしました。
今年はブログ開設10年目。アーカイブとして当時のリトルプレスの記事をアップしていきます。
「善徳女王」は私が韓国ドラマを観るきっかけになったドラマ。今の私が、ハッピーエンドよりもビターエンドなドラマが好きなのは「善徳女王」でインプリンティングされちゃったのだと思います。
今でも時々、永遠に届かなかった10歩のことを考える。
NOT LOVE, but affection 4P
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