Hannibal: Season 1

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ハンニバル シーズン1 Hannibal: Season 1 全13話 (2013年 アメリカ)

■スタッフ:製作総指揮/脚本 ブライアン・フラー
■キャスト:
ヒュー・ダンシー(ウィル・グレアム)
マッツ・ミケルセン(ハンニバル・レクター)
ローレンス・フィッシュバーン(ジャック・クロフォード)
ジリアン・アンダーソン(ベデリア・デュ・モーリア)

【ストーリー】
ハンニバル・レクターの若き日を描いた映画『レッド・ドラゴン』の登場人物を引き継いだ、オリジナルストーリー。FBI捜査官ウィル・グレアムとの関係を描く。
『羊たちの沈黙』、『レッド・ドラゴン』に描かれる前のハンニバル・レクターは、FBIで働く優秀な精神科医だった。彼の仕事は、連続殺人犯の精神を見ることができるという天賦の才能を持ちながら、同時にそれに悩まされている特別調査官ウィル・グレアムを助けることであった。ウィルの精神状態を診る役目だったレクターだが、次第に犯行現場にも立ち会う様になる。殺人事件の捜査でウィルに協力しながら、本性を覗かせていくレクター。善と悪の狭間を彼は歩いていく。


 

ハンニバル・レクター博士の物語はクラリスが登場しないと面白くないと思っていた私の不明を恥じたい。
そして久しぶりに視聴したアメドラのあまりのクオリティの高さにノックアウト。
演出、脚本、映像、音楽、キャストどれも最高峰。それもそうだよね。
最近のアメドラは80~90年代に活躍したハリウッド関係者がどっと参入してきて、ある意味映画以上の作り込み、クオリティを追求してきているのだから。

「羊たちの沈黙」「レッド・ドラゴン」の前日譚になるのでFBIの犯罪分析もプロファイリング手法が確立されていく途上の時代。そうはいっても劇中インターネットやスマートフォン、科学分析は最新の技術なのでハンニバルの精神科医時代を現代に換骨奪胎したものとして受け入れればいいのよね。
プロファイリングが確立していない設定で、サイコパスを捕まえる最善の方法はウィル・グレアムが持つ本質的直感で事件の真実を見抜いていく。
この本質的直感がキモで、いわばサイコパスの心理に共感・シンクロし犯罪をリプレイし真相を見抜くというもの。
ウィルに見抜けない事件はないというぐらい、恐ろしいぐらいに犯罪者たちにシンクロしていく。

 

 

 

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純粋で無垢なウィルに与えられた才能。
自閉症スペクトラムの一種として、あらゆる犯人に共感し、その動機や犯行当時の感情を再現できる「純粋な共感」という能力。
この神様からウィルに与えられたギフトはもろ刃の剣で。
純粋だからこそ犯人を捕まえなければという責任感を感じ、同時に純粋だからこそサイコパスたちの闇に影響されていく。
いや、サイコパスというよりもハンニバル・レクターの闇に引きずられそうになっていく。
彼が後半に向けてどんどん精神の均衡を崩していさまは視聴している私も辛くなる。
またね、この「HANNIBAL」で扱われる事件があまりにも猟奇的で、そりゃあ普通の人でもこんな事件に遭遇したら精神状態は崩れていくでしょうって気になります。
ウィルよりむしろ平気な顔をして鑑識をしているFBIトリオ&ジャック・クロフォードの方がおかしいのじゃないかと思います(笑)
あまりにも猟奇的なのに、その殺され方の映像があまりにもアートでなぜか目が離せなくなる。
全事件をキャプチャーしたのはいいけれどもさすがにこのブログでいきなり目に入れてしまったらグロが苦手な方はドン引きするよなと思い悩んでいたところ、海外のサイトで素敵な(?)イラストを発見。

 

 

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https://society6.com/product/hannibal-season-1-bloodless-edition_print#1=45

シーズン1で扱われる全事件です。
なぜかむだにゆるくてカワユイイラストなので衝撃は少ないかと思いますが、よ~く考えてみてください。かなり衝撃的ですよ。
①鹿の角に刺されている全裸の女性
②人間きのこ
③同じく鹿の角に突きぬかれた女性のオブジェ
④腐敗が進んだ食卓
⑤人間天使(天使の羽がかなりグロ)
⑥負傷者の図
⑦バスタブで切り開かれた臓器(この殺され方が普通に思えてくるから不思議・・・)
⑧人間チェロ
⑨人間トーテムポール(圧巻!!)
⑩口裂き死体
⑪ネクタイ死体(ネクタイが怖い・・・)
⑫焼死
⑬飲み込まれた耳

すべての殺し方をウィルはトレースするんですもの、そりゃあおかしくなるよ。
毎回毎回、サイコパスの気持ちになるんだから。
しかし「羊たちの沈黙」の影響を受けて日本で放映された「沙粧妙子 – 最後の事件 -」でもヒロインはプロファイルをしていくうちに次第に闇と光の境界線がわからなくなっていく恐ろしさを描いていましたよね。
「悪意は伝染していくのか」
私たち人間の永遠のテーゼでもありますね。ウィルは悪意に伝染してしまうのか?

 

 

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「ハンニバル」では悪意は、カラスの羽根をまとった鹿の姿で表現されます。
ウィル・グレアムが事件を解決するたびに鹿の幻影に悩まされ、白昼夢を見るし、フラッシュバックに悩まされるわ、しまいには瞬間的な記憶喪失、乖離の症状まで出てきます。
実は各事件の影に隠れているハンニバル・レクターの影をウィルはその本質的直感で捕えているのですけれどもね。
鹿はハンニバルでもあるし、実は闇に共感してしまうウィル自身でもある。
後日譚でハンニバルを捕まえることができるのはウィル・グレアムなのだけれどもその時にハンニバルはその理由をウィルの言いましたものね。
「なぜ君は私を捕まえることができたと思うね?それは、君と私が同じ人間だからだよ」と。

 

 

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ハンニバル・レクター!
この複雑で歪んだ人物をマッツ・ミケルセンは優雅に貴族的に演じてみせます。
アンソニー・ホプキンスのようにどこか底しれぬ狂気が漂う怪演ではなく、あくまでスノッブ、ストイックにあくまでディレッタントに。
気品と優雅漂うその物腰と、虚無的なそのまなざしはまさにマッツニバル!
新たなハンニバル像を私たちに見せてくれます。
優雅なんだけれどもね、やっていることはカニバリズムだから・・・
平然と微笑みながら調理し、しかもそれを食べるウィルやジャック、アラーナ。
もうねめまいがするほど甘美なシーンが背筋が凍るほど恐ろしいの。
実は「ハンニバル」で一番恐ろしいのは猟奇殺人ではなく、この晩餐のシーンだと思いませんか?
嬉々として料理を振る舞うハンニバルを見ながら、彼のやっている行為は常軌を逸した狂気、悪意なのだけれども実は彼にとっては愛ではないのかと思います。
好きな人を喜ばすために料理を作り、好きな人を喜ばすために猟奇殺人の意匠をほどこし、好きな人に自分を見つめてほしいから洗脳をしていく。
人間の愛情ってそんなに正しいものや美しいものに向かっている訳じゃなくって、本当に正しいものや美しいものは悪意の中にも存在するのです。
圧倒的なハンニバルの愛を感じます。

 

 

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ハンニバルが精神科医として人間と向き合っていくのは、実は彼は誰よりも人と向き合いたかったからなのだと感じました。
向き合いたいからこそその人の血肉を食し、向き合いたいからこそ自分をその人の意識に刷り込んでいく。(ここら辺の発想は常人には分かりませんが・汗)
こんなサイコパスに愛され見込まれてしまったら大変!
シーズン1ではまだハンニバルはウィルの稀有な純粋さ、その特異性、自分にとって希少な存在であるということに気づくけれども彼にとってどんな意味があるかは分かっていないのよね。
ウィル・グレアムが他の猟奇殺人に夢中になると自分の存在を示してみたくって模倣殺人をしてみたり、自分だけにすがって欲しくて注意深くウィルの周囲の人を遠ざけようとする。
だってウィルだけが完璧にハンニバルに共感できシンクロできる人だから。
この世界で初めて見つけたハンニバルと「同じ人間」だから。
だからハンニバルがせっせとウィルに餌付けをする戦慄のシーンは恐ろしくて、なんだか悲しい。

 

 

 

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ハンニバルに見込まれたウィルの受難は続きます。
いや最終的にはハンニバルに襲われ人工肛門になったり、殺人鬼ダラハイドと対決し「ピカソの絵のような顔になって、アル中で失意の日々を送っている」んだよね。
彼の行く末があまりにも不憫です。
しかし、彼は純真無垢だからこそハンニバルの悪意に対抗できるのですよね。
ハンニバルとウィルの闘いの1幕(シーズン1)はハンニバルの圧勝でしたが、これからウィルがどう反撃していくのか。
このドラマの美しさ、ストイックさについてまだまだ語っていきます。

 

 

★★★★★

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 12 )

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  1. 花音

    yucaさん、こんにちは。
    リトルプレスではお世話になりました。

    アメドラはCSI:マイアミのシリーズが好きでDVDを借りて視聴してたくらいで、とんとご無沙汰状態でしたわ(>_<)

    ハンニバル シーズン1 全13話ですか、
    映画は観たことありますが、ドラマは知らなくて、でも、興味は湧きますね!

    サイコパスって、日本のアニメとは違う捉え方なんでしょうね?

    鹿だと、日本の諏訪大社の御頭祭とか思い浮かんできますよね^^;

  2. yuca

    花音さん、コメントありがとうございます♪

    いえいえこちらこそ。リトルプレスのお遊びに付き合ってくださってありがとうございます。

    >アメドラはCSI:マイアミのシリーズ
    CSIがお好きならば「hannibal」はちゃぶ台をひっくり返したくなるかも。
    犯人推理などないですから。
    主役が直観的共感で犯人を見つけ出す物語なんです(笑)

    推理するというよりも、追い詰められていく主人公の崩壊を楽しむドラマかもしれません。
    あと知らずにカニバリズムしている登場人物たちを見るホラーな感じとか。

    私は大好きですけれども、好ききらいがはっきり分れると思います(爆)

  3. yuca

    鍵コメさま、コメントありがとうございます♪

    エグイです。
    えぐいけれども死体はアートなのよ(笑)でもグロい。

    この事件を描いたイラストで楽しんで(?)もらえたらいいと思います。
    このドラマを好きな人って少ないですから(爆)

  4. yuca

    鍵コメさま、コメントありがとうございます♪

    >正当性が有るかのように、描いているのが、そう!ハンニバル。
    そうそう、うっかりハンニバルのほだされてしまった私。

    このドラマホラー風味でもあり、推理もの風味でもあり、でも実はそんなことはどうでもよくってウィルとハンニバルの関係性だけを描きたいのでしょうね。
    「hannibal」の制作者は皆さま性愛に偏見がない方ばかりだと聞いております。
    ええ、はっきり言いましょう。このドラマある種のアンテナ、やおいアンテナを持つ女子男子には受けがいいけれども、それ以外の人には訳のわからないドラマなんだと思います。
    だって推理するわけじゃなく、直観的共感で犯人がわかるなんてね。
    ミステリーとしてあるまじき設定(笑)

    鍵コメさまがイライラされたのも分かります。
    そういう人たちをひきつけるドラマだと思いませんか?

  5. イライラしつつも・FANです。

    ええ、ええ、仰る通りです。
    @だって推理するわけじゃなく、直観的共感で犯人がわかるなんてね。

    そうなんです、そこなんです。
    地道な捜査じゃ、だめですか?彼らに共感する必需性って、有りますか?
    むしろ、再犯防止に、もっと努めましょうよ。と、言いたいくなります。

    が、博士がアビゲイルに涙するくだりなんて、ヒソっとぐらっと来ました。
    ウィルに見えている博士の幻想の姿なんて、魔笛の悪魔のようでカッコいいわ・・と、ウットリとハマっていたのですが。

    ハンニバル博士の俳優さんが、ロシアのプーチンさんに見えてしまい。
    このコアなドラマを、何故か笑ってしまうという、不遜な視聴者なので在りました。
    ※プーチンさんに見えるから、笑ってしまう謎を、プロファイリングして欲しいわ・・。

  6. 意味なし・コメントのFANです。

    連日の猛暑、いかがおすごしでしょうか?
    ユカさんが、夏休みを奪取なさいますことを、念じております。(多分、4,5日でしょうなあ・・)

    私は、ほぼ毎日、永遠の能天気です。
    と、ご挨拶はさておき。

    今回もまた、どうーでもいい、ご報告です。
    @海外のサイトで素敵な(?)イラストを発見。
    このサイケなイラストを、爆笑しつつ拝見した上で。かつて視聴した恐怖を緩和された気分で・・。

    昨晩、食べてしまった・・。
    沖縄料理屋さんで、・・・(もう、お分かりですね?)

    ミミガー。・・・・・・・・・、あの、イラストを思い出しながら。
    ユカさん、流石に、これは無理だろうなと、思いを馳せつつ。美味しく頂戴しました・・。

    あの、イラストに端的に表された、荒唐無稽な犯罪描写の中。最も、恐怖を蘇らせる、⑬の、パーツの絵・・・。

    牛タンを召しあがったユカさんに、爆笑したことを、大いに反省しました・・。

    さ、お盆を前に、もう今日から精進料理の毎日を過ごそう・・。(本当ね?FANさん・・)  え?
    うなぎは、良しとして頂けませんか?ダメ?じゃ、アナゴにしとこうかな。。。
    ※そういう問題じゃないって、気付こうよ、わたし・・。はい。

  7. momo

    お米が主食でないエリアのドラマです。

    ハンニバルは頂点捕食者でしょうか。
    yuca様がご指摘された晩餐のシーンが一番怖いです。

  8. 花音

    yucaさん、
    暑い日が続くなか、「ハンニバル」視聴してみました。

    CSI:観てたので死体が出て来ることはあまり抵抗感がないですね。

    >主役が直観的共感で犯人を見つけ出す物語なんです(笑)
    >プロファイリングが確立していない設定

    そうなんですね!
    私が知っている日本の漫画やアニメはサイコパスと言うと近未来的な作品が多かったので^^;

    やはり、一番恐ろしいのは晩餐シーンですよね!
    レクター博士の美味しいと言う料理を信頼して食べているワケですね。

    カニバリズムで思い浮かぶ
    「ブドウ酒とパン」イエスの血肉

    まずは、シーズン1を観終えなくては(>_<)

  9. yuca

    FANさん、コメントありがとうございます♪

    「ハンニバル」のドラマはやばいですよね~
    確信犯的ですよ。このいびつさを好きな人ってBL好きな人とかなりの割合でシンクロするのでしょうね。
    BLとはもともと、ちょっと自閉症的な物語ですからね。
    作家さんたちが、自家中毒になって、延々と自分の売れる設定だけをループのように書き続ける姿を何度も見ました。
    そして寡作になっていくのですものね。

    ハンニバルの異常、異質さも実は凡人は理解できないのでそこに「愛」をカテゴライズして分かったような気になるのでしょう。
    BLとは異質なものを(自分に理解できないことを)、「愛」にひとくくりして理解しようとする弱者にとっての最強の武器なのかもね。

    お、なんかBL論が書けそうな気がしてきた。

  10. yuca

    FANさん、どもども~♪

    「ハンニバル」以降、肉食女子な自分が怖い。
    牛たん、ホルモンときましたがミミガーは食べてないや(笑)

    食べるって実はエロスなのですけれども、あまりカニバリズムのエロスについては考察したくないなぁ(爆)
    最近肉食率が上がった自分の精神状態もあまり分析したくない(爆)

  11. yuca

    momoさん、コメントありがとうございます~♪

    いまだにオフ会の余韻から抜けきれない私(爆)
    あれから1カ月だなんてあっという間のような、遠いう昔のような。

    >ハンニバルは頂点捕食者でしょうか。
    私の見立てでは(笑)このあとハンニバルは愛に囚われるはずです!(きっぱり)

    そうそう「ミセン」いよいよ今週最終回ですね!
    私もじっくり見なおして感想を書く予定です。

  12. yuca

    花音さん、コメントありがとうございます♪

    「ハンニバル」視聴されているのですね(笑)
    死体は出てくるのですが、妙に芸術的なので怖くはない。
    晩餐シーンが一番怖いですけれども。

    このドラマ、ハマる人はハマるけれども、スカッとした推理ものを好まれる方は評価が厳しくなるような気がします。
    マニアックなドラマですよね。
    とうとうシーズン3で打ち切りになっちゃったし。

    >私が知っている日本の漫画やアニメはサイコパスと言うと近未来的な作品が多かったので^^;
    あ、私も「サイコパス」大好きです!
    填島氏に夢中。氏のいないS2はちょっと物足りなかったなぁ。