百年の孤独
「この街を手に入れよう」と甘く優しく囁きながら、そのことに何の意味も見出していない男。
優しさと残酷さが紙一重のところで重なり合っている、そんな男。
そんな男に出逢ってしまったなら、恋に堕ちるしかない。
裏切りと憎しみが交差する無情都市を駆け抜けながら、愛に飢えた柔らかい心から血をどくどくと流しながら生きてきた孤独なシヒョンのことを思う。
彼のさびしい人生を思うとたまらなくなる。
無情都市で生き急ぎながら、深淵に飲み込まれそうになりながら、決して自分の中の愛を捨てなかった男のノワール。
社会からはみだしてしまった者たちの物語なのだ。
自由の代償にやすらぎや憩いを捨て、自分の足元に絶望と孤独の深淵が口を開けているの十分に知っている男たちの物語なのだ。
どこまでも闇に堕ちていきそうになりながらも、踏みとどまっている男たちの物語なのだ。
なんてストイックな官能に満ちているのだろうか。
時折シヒョンのその顔に光がさす映像は、果てしなく闇に沈みながら、それでもその心は光を求めている彼の心情を表しているのか。
彼の行きつく先は光なのか闇なのか、どこまでもシヒョンと共に墜ちていきたいと、心が叫ぶ。
2015年6月17日 ブログ開設5周年記念としてリトルプレス「NOT LOVE, but affection」を制作・配布いたしました。
今年はブログ開設10年目。アーカイブとして当時のリトルプレスの原稿をアップしていきます。
このころの私の文章って、ものすごくポエティックだわ。
相変わらず「もし無人島に持って行くならどのドラマを選ぶか」の1作でもあります。
無人島で自分の孤独を噛みしめながら、シヒョンの孤独に共鳴したいから。
NOT LOVE, but affection 6P
この記事へのコメントはありません。