愛の不時着
愛の不時着 Crash Landing on You 全16話 (2019-2020年 韓国 tvN)
■演出:イ・ジョンヒョ
■脚本:パク・ジウン
■キャスト:
ヒョンビン(リ・ジョンヒョク)
ソ・イェジン(ユン・セリ)
ソ・ジヘ(ソ・ダン)
キム・ジョンヒョン(ク・スンジュン)
オ・マンソク(チョ・チョルガン)
韓国最高財閥クイーンズグループの末娘であり、自ら築いたファッションビューティー事業で勢いに乗っているユン・セリ(ソン・イェジン扮)。新製品を直接テストしようとパラグライダーのフライトスーツを着用し、山頂に登るが…。
こういうドラマに出会えるから、ドラマ視聴やめられないんだよね。
私にとって「愛の不時着」とは「愛」とは何かを、正面切って問いかけるドラマでした。
このドラマを視聴した方の感想は、おおむね「よかった」「面白かった」「胸キュン」「ハッピーエンド」みたいな感想にくくられるんだけれども、あえて問いかけたい。
本当にハッピーエンドって手放しで喜んでいいのか、って。
私にとってはたまらなくビターエンドでした。愛の絶頂で断ち切られたジョンヒョクとセリがたまらなく切なくて号泣。
脚本家のパク・ジウンは「星から来たあなた」でもそうでしたが、決して「2人は末永く幸せに暮らしましたとさ」というファンタジーラブロマンスの最終回に帰結しないところがすごい。
「愛の不時着」の着地点に、私は号泣しました。
1年でたった2週間しか暮らせないなんて。
こんなに愛し合っている2人が。
ラストシーン、この美しい風景、愛し合う2人。
気づいた? たった2枚しか2人で映る写真がないことに。
38度線で別れたのちには、彼らはこの2枚の写真にまつわる思い出しか作れない、その現実に打ちのめされそうになる。
愛とは何だろうかと考えてみる。
私があなたに会いたいと願っているように
あなたにも願ってほしいと思ったなら・・・
それが愛だろうか
あるいは私に会いたいなんて、気持ちがわかないほど
幸せでいて欲しいと願ったなら・・・
それが愛だろうか。
それともあなたに会うためなら
あの出来事を最初からもう一度繰り返しても構わないと思えたら
それが愛だろうか
ユン・セリの劇中の独白。もちろん様々な愛のカタチがあるとは思うけれども私にとって愛とは「あなたがここにいて欲しい」と願う気持ち。
「幸せでいて欲しい」と願う気持ちは、肉親のおだやかな愛ではないだろうか。
365日の中のたった14日のためにセリとジョンヒョクは互いの不在を常に感じながら願い続けるのだろう。
願い続けないと生きていけない、そんな愛のカタチはなんだかたまらなく苦くて、たまらなく甘美で、泣けてくる。
この2人の着地点はここにしかなかったのかもしれないけれども、手放しでハッピーエンドと喜べないのはその根底に寸断された2つの国があるから。
号泣。
誰かとの別れで、どうして涙が出るのか知っていますか?
別れは、どうしてあんなに悲しいのか知っていますか?
それは、二度と今のこの人とは逢えないという、未来を予測し、恐れで悲しくなるのだ。
距離と時間が離れていればいるほど、相手も変わり自分も変わる。
今のこの人とは、似ているようで違う人になる。
今には永遠に戻れないと感じて、哀しくなるのだろうな。
圧倒的な不可逆性に、私たちは押しつぶされそうになり、たまらなく、強烈に悲しくなる。
どんなに愛していても、今のジョンヒョクや今のセリとは2度と会えない。
人間は変わっていく存在だから、忘れてしまう存在だから。
そんなことを考えているとジョンヒョクとセリに泣けて、泣けて仕方がない。
北朝鮮に戻ったリ・ジョンヒョクが静かに泣くのは、彼も2度と戻れないあの頃には・・・を知っているから。
それでもいつか出会うことを信じて、願って、それだけが生きる糧になる。
生きていく理由になる。
平壌道中の焚火を囲んでのダイアローグは、最終回を終えて振り返ると、なんともほろ苦い味わいがある。
YSR:リ・ジョンヒョクssiはいい人よ。
RJH:急になんだ。
YSR:急にそんなことが思い浮かんだの。将来はいい夫や、いい父親になるということがね。
RJH:どうだろう・・・将来のことは考えない。
YSR:なぜ?
RJH:考えていた未来と違ったら悲しくなるから。
YSR:経験があるの?
RJH:ある。
YSR:それで、悲しくなったのね。
RJH:・・・・・・
YSR:インドではこう言うの。“間違った電車が時には目的地に運ぶ” 私もそうだった。
私の人生は・・・乗り間違いの連続。だから一度途中ですべてを投げ出して、どこにも行きたくなくて・・・飛び降りようとした。
でも今の私を見て。とんでもない乗り間違いで、なんと38度線を超えちゃった!
でもね、思い通りにいかなくても・・・将来を考えてみて。
私は・・・私が去ったあともあなたには幸せでいて欲しい。
どんな電車に乗っても・・・必ず目的地に着いて欲しい。
まだ目的地には到着していないんだ、ジョンヒョクとセリは。
離れ離れになりながら、時には再会し、そしてまた別れ、でもいつか共に暮らせる時代が、ともに年老いていける未来の目的のために、まだ旅を続けるのだろう。
美しい脚本、美しい着地点でもある、このドラマの。
まさに I have a crash on YOU!なドラマでした。
すっかり夢中になったドラマでした。
すっかり私たちが夢中になった理由はジョンヒョクとセリのカップルのチャーミングさもさることながら、登場人物すべてが愛おしいということがあげられる。
それぞれがそれぞれの人生の悲哀を抱えながらも、今生きることを精一杯やりとげようという愛があふれていた。エピローグも号泣だったよね。
かつての韓国ドラマのヒステリックな母親に象徴される「家制度」が恋愛の大きな障壁の一つであったのだけれども、このドラマにおいては親はむしろ子供たちの応援者でありたいという描き方に変化してきている。
親の情愛や、仲間への友愛、共感などがエピソード豊かに語られていて、それがドラマの奥行きを醸し出しているのね。
パク・ジウンのドラマで必ず登場するサイコパスな狂言回しだが、「愛の不時着」においてはその描かれ方も変化してきていた。
私たちの理解不能なサイコパスが「星から来たあなた」「青い海の伝説」でも見受けられていたのだが、チョ・チョルガンの悲しいまでの悪役ぶりは私は好きだったな。
孤児からのし上がってきた経歴に甘んじることなく、上へ上へと目指そうとしたチョルガンにとって、ジョンヒョク兄弟はあまりにも眩しすぎた。
眩しすぎて、憧れすぎて、羨ましくなって、妬ましくなって、殺意を抱く。
あまりにも人間的な葛藤がチョルガンを破滅に追いやる。
インスタントコーヒーを楽しむことで特権階級を享受していると思っていたが、ジョンヒョクは豆をすり入れたてを楽しむコーヒーの本質を知っている。
そのどうしようもない育ちの差に対して、チョルガンが絶望し、憤る気持ちは、もしかすると北朝鮮の人々が抱えるルサンチマン的な感情であり、北朝鮮を代表するキャラクターだったのだ。
チョルガンは北朝鮮の闇を表しているキャラクターで、なんだか彼を見ているといつも切なかった。
パク・ジウンの描いてきた悪役の中では、一番悲しい人間だった。
リ・ジョンヒョクにはね、皆メロメロになっていると思うけれども。
肌触りがいい男だと思うけれども。
彼が時折垣間見せる、自分の未来に夢を抱けないことから生じる、他人への切り捨て方もこっそり好きでした。
婚約者ダンに対する、あの仕打ちが、実はジョンヒョクの基本姿勢。
誰にでも優しい男というのは、実は一番優しくない男なんだから。
彼の基本姿勢を変えるには、彼の前に不時着して、家に押しかけて守らせるユン・セリぐらいのパワーと図々しさがなければ、彼の壁を打ち破ることはできなかったでしょうね。
ユン・セリを守るために、ジョンヒョクの中では優先順位が生まれ、だからこそセリに果てしなく優しくなっていく。その優先順位に私たちはメロメロになったのだ。
最後のスイスでのシーンは、これはきっと前撮りでしょうね。
ヒョンビンは文句なしに恰好いいけれども、あのラストのジョンヒョクはセリのために走り、命をかけ、静かに泣いていたジョンヒョクではなかった。
唯一のこのドラマの欠点。(ロケなので前撮りは仕方がないのでしょうけれども、時系列の撮影だったらあのラストシーンはきっともっと違う演技をしたのではないかとこっそり思っています)
★★★★★
yucaさま
何故だかLINEのおともだちに、突然yucaさんの名前が!
かつては奇皇后のタファンについて、熱い想いをコメントさせていだいていた私です。
…で、yucaさんは最近どんなドラマを見てらっしゃるのかしら?と覗いてみました。
あら、「愛の不時着」あるじゃない、と気になって〜〜
私にとって2020年最高傑作のこのドラマ。
巷での評価もすごく高いので、yucaさんはどんな感想を書いてらっしゃるのかしら?
だってyucaさんは、どちらかというと世間の評価とは違う目線で書かれてるから〜
でもでも私と同じで「久しぶりにどハマり」されたんだ〜〜♪
私が言葉に出来ない想いを明確に文字化されていて、読み進むと濃密な感情が心の中にいっぱいになりました。
「ビターなハッピーエンド」
そうそう、それが私の大好物❗️
「トッケビ」にしても、一応ハッピーエンドではあるけれど、ウンタクが4度目の生を終えたら、シンはまたひとりきりで生き続けなければならなくて…
しかもその時にはもう待つ相手もいなくて。
その時には神が死ぬことを許してくれるかもしれないという僅かな希望だけを抱いてのハッピーエンド。
ジョンヒョクとセリは、いつかは南北統一の日が来るかもしれないという僅かな希望を抱いて、1年に14日だけ逢えるというハッピーエンド。
まるっきり逢えないよりはハッピー。
2人が上流階級だから成り立つハッピーね。
心の奥がシクシク泣きながらのハッピーエンドが好きです
よく最終話で、幸せになった主人公たちがイチャイチャする、あまあま生活が描かれてるドラマがありますが、
それが出てくると私のドラマに対する評価はワンランクダウンします。
1話手前で終わって欲しかったと悔しくなります。
2人の恋愛だけがテーマのドラマは、2人の気持ちが通じ合った時点で興味がなくなる。
私もyucaさんとまったく同じ人種です!
でも恋愛以外の一本の太いテーマがあると、その後も見続けられますね。
そのテーマをいかにうまく設定するかが、作家の腕の見せ所なのでしょうか?
それと私的には女主人公より、男主人公の気持ちの方が切ないのが好みです♪
ヒョンビン、「共助」での北朝鮮人も良かったです。
多くを語らない男が似合いますね!
「トッケビ」以降韓ドラ熱が低下していたんですが、このドラマで「あぁやっぱりいいなぁ」と盛り返しました!
長々とすみません
にゃんころりんさま、ご無沙汰してます!
>何故だかLINEのおともだちに、突然yucaさんの名前が!
そうそう、LINEの設定、なんだかよくわからないうちにそうなったみたいです(苦)
番号交換して、あれから何年というか5年もたつんだよね・・・
>「ビターなハッピーエンド」
「愛の不時着」はドハマリしました。
1日中、リ・ジョンヒョクのことばかり考えていましたよ。
うふふ、ここまではまったのも5年ぶりぐらい?
こういうドラマがあるから、韓国ドラマ視聴はやめられないよね!
>2人の恋愛だけがテーマのドラマは、2人の気持ちが通じ合った時点で興味がなくなる。
「愛の不時着」はそこらへんのバランスも秀逸。
もうね、雨の中傘をさしていたリ・ジョンヒョクの肩を何度、リピしたことか。
「サランヘヨ」って言いあうよりも、こういう細やかなエピソードの積み重ねで視聴者の心をつかんだドラマだと思います。
ヒョンビン!
好きすぎて、「シークレット・ガーデン」まで再視聴しましたもん。「愛の不時着」ロスで3月は過ごしました。
寡黙な役もいいけれども、「ザ・ネゴシエーション」のいかれたテロリストも素敵でしたよ。
「ジギルとハイド」「アルハンブラ」と駄作続きだったのですが、「愛の不時着」でヒョンビンの魅力が全開でしたよね。
そろそろチャンウク君の新作ドラマも放映かな?
yucaさん
あら?
もともとヒョンビン好きだったんですか?
「シークレットガーデン」、私もチラッと見たくなりましたよ。
実はシガは、私が韓ドラの沼に嵌ったドラマです。
それまで韓ドラをバカにしていたのに、180度意識転換させられた記念すべき作品。
もちろんすっかりヒョンビンに♡♡でしたが、兵役終了後の彼は作品に恵まれなくて、すっかり熱が冷めていました。
アルハンブラは1話だけ見て放置。
そこへ来て「愛の不時着」です!
別れた恋人と再会して、心の奥の残り火が燃え上がった感じ⁈
>細かいエピソードの積み重ね
まさにそれにやられました!
いいドラマってそうなんですよね。
言葉より、シチュエーション、表情、仕草がグイグイと私を引きずり込みます!
このドラマでは、ジョンヒョクがセリを黙って見つめるシーンがすごく多いです。
何か言うの?言うの?と思って見ていても結局無言で、焦ったくなるぐらい(笑)
視線が多くを語るってことはよくありますが、ジョンヒョクの視線には逆に何も語られてないと感じます。
言ってみれば空っぽ!
ただ愛する人を見ていたいという子供っぽいシンプルな想いだけが見えた気がします。
私も「シークレットガーデン」見てみようかなぁ?
ジュウォンは多くを語る男でしたねぇ。
チャンウクくんの新ドラマ、6月放送開始予定ですね。
でも実は私はこのドラマにあまり期待してません。
情報を見ていると、なんとなくユジョンちゃん中心っぽくて、しかもドタバタコメディっぽい
なかなか良い脚本に巡り合うのは難しいようですねぇ。
はじめまして!
いつもブログ読ませて頂いてます。
一つきになることがあります。
15話の最初にチョルガンが
リジョンヒョクに、ムヒョクが死んだ時、
深く掘り下げたらお前の父親がいるからだ。
これは、どういう意味だったのでしょうか?
ここだけ分からなくて意味が知りたいです。
もしわかりましたら教えてください。
いきなりのコメント失礼しました。
文末、なるほどな解説でした。
時系列を追ってから撮影したジョンヒョクとセリの演技を見てみたかった。
たなかさま
コメントありがとうございます!
本当に時系列撮影だったら、ラストシーンの余韻も違ってたでしょうね。
tomatoさま
初めまして、コメントありがとうございます!
「深く掘り下げたら・・・」
これはジョンヒョク父も決して清廉潔白ではないという意味だと私は考えましたけれども。
リ・ジョンヒョクは高潔な軍人だけれども、要職にある父はかなりアクドイ政権闘争も経験してるでしょうね。
その結果、長男が亡くなってしまったと。
そういう風に考えています。
にゃんころりんさま、コメントありがとうございます!
>実はシガは、私が韓ドラの沼に嵌ったドラマです。
同じくです!あの頃の韓ドラはちょっと神がかっているかのように、面白いものが連続でした。
>何か言うの?言うの?と思って見ていても結局無言で、焦ったくなるぐらい(笑)
うんうん、視聴者は勝手に想像して盛り上がるのよね、きっと。
自分が欲しい感情をジョンヒョクのまなざしの中に勝手に見出して、メロメロになるという・・・
チャンウク君・・・コメディなんだね。
メロドラマがお似合いなのになぁ。
涙ふり絞られるくらいのがっつりシリアスなラブロマンスに出演してほしい。
はじめまして。おくちょんと申します。
先日「愛の不時着」を見終えたばかりで、いろいろな方のブログを拝見していたんですがyucaさんのブログが1番気持ちにしっくり来たので思わずコメントさせていただきました。
最終回まさにビターエンドでした。
主人公のカップルの愛の行方にもちろんヤキモキしていたんですが、私の涙腺崩壊ポイントは”お母さん”でした。
ソ・ダンのお母さん最初は「結婚して子供を産むことこそが女の幸せ!」とばかりに圧をかけまくりでしたが、「娘にはどうも別の思い人がいるらしい」と気づいてからの方向転換。自分の娘は婚約してても別の男性とデートするのは「まだ独身ですもの」でも、村のおばちゃんたちから「南から来たツバメ」の話を聞いていきりたっちゃう見事なまでのダブルスタンダード(笑)
そして、スンジュンを失ったダンに「あなたと一緒に泣いてあげられる、話もきいてあげられるし、一緒に乗り越えてあげられる」この言葉が言える母でありたいと強く共感しました。ダンのおじさんもマヌケな発言ばかりだけど、ダンへの愛情を感じられますよね~。
(しかし、あんなに失言が多い人が軍で出世できちゃうのが不思議)
セリのお母さんが危篤になったセリのために駆けつけてきたジョンヒョクをみて「娘がまだどうなるかわからないし、意識が戻ったら会いたいはずだから(彼を連れ戻さないでくれ)」国家情報院の職員に伝えるシーンで号泣でした。
個人的にはセリとお母さんの心の距離感がドラマの中でつかみきれなかったです。愛人の娘を引き取って愛せなかったから海に置き去りにしてしまって、ここまでは非道ですが理解できます。
そこから何があって「娘」として受け入れられたのかなって…
nothing hurtって前にも見たことあるブログだなと思ってたんですが、密かに「我可能不會愛你」や「奇皇后」「宮廷女官若曦」の時も感想を拝見していたブログでした。yucaさんの他とはちょっと違う視点とても面白いです。
また遊びにこさせてください。
長文失礼いたしました。
おくちょんさま、コメントありがとうございます。
お返事遅くなってごめんなさい。
「愛の不時着」大人気ですよね、「冬ソナ」以来かしら、ここまで話題になるドラマは。
>個人的にはセリとお母さんの心の距離感がドラマの中でつかみきれなかったです。
確かに!ここは深堀されなかったですよね。セリが自立するきっかけになったエピソードでもあり、誰かに捨てられることに恐怖を抱くあまり誰かに心を開くことがなくなったエピソードでもあり。
北朝鮮の奥様達とのエピソード、ダンと母親のエピソードが温かい反面、セリの家族関係はクールです。
>「宮廷女官若曦」
おお!なんとそんな古くから遊びに来てくださっていらっしゃたなんて感激。
昔のように、記事を書く勢いはなくなりましたが、のんびりと更新していきます。
また何かのドラマで私たちの軌跡が交差したらうれしいですね。
「愛の不時着」はここ数年の中でも、とびぬけていいドラマです。