love me tender・・・高嶺の花 6話まで


「高嶺の花」6話まで視聴。

 

 

華道の名門「月島流」の令嬢・月島ももは美しく才能豊かで、すべてに恵まれていたが、婚約者に裏切られ結婚が破談となり、深く傷つき立ち直れずにいた。そんなある日、ももは転んで自転車を大破させ、迷い込んだ商店街で自転車店を営む風間直人と出会う。ももは、直人が周りから“ぷーさん”というニックネームで呼ばれ、愛されていること知り、彼のことが気になりはじめ、行動を共にするように。ももは少しずつ心が癒やされていく。

 

「雨が降ると君は優しい」では、セックス依存症を題材に究極の愛を描こうとした野島伸司の新作「高嶺の花」
今作は格差恋愛がテーマらしいのですが。
どこかポップでキッチュでコミカルな突っ込みどころ満載な展開の端々から、野島イズムともいえる狂気がちらちらと見えていたのだが、6話後半になって狂気は突然花開く。
華道家になるためには罪悪感を抱かなくてはいけないという、意味不明の強迫観念を家元からすりこまれたもも。彼女は、「罪悪感」を抱くためにぷーさんとの結婚式から逃げ出す。
キャサリン・ロスとダスティン・ホフマンの「卒業」のように。

 

 



ぷーさんの絶望する顔を自分の中に刻み込んで、一生独りで芸の道を究めていくつもりで。
だが。
ぷーさんは笑って、ももを送り出す。
ももの幸せを願いながら。

 

この場面ぞわぞわした。

 

 

Love me tender
Love me sweet
Never let me go
You have made my life complete
And I love you so

Love me tender
Love me true
All my dreams fulfilled
For my darling I love you
And I always will

Love me tender
Love me long
Take me to your heart
For it’s there that I belong
And we’ll never part

 

「高嶺の花」のメインテーマはエルヴィス・プレスリーの ♪ love me tender ♪
男が女に向かって、自分の胸のうちをせつせつと歌い上げる歌詞。
ぷーさんは微笑むことでももの心に「罪悪感」よりも訳のわからない「疑問」を刻む。
どうして微笑んだの?
どうして追いかけてこないの?
どうして?
どうして?
私を・・・愛していないの?
一生、答えがみつからない「疑問」を刻むことで、ももにとってぷーさんは忘れられない男になった。

♪Take me to your heart
For it’s there that I belong
And we’ll never part♪ のようにね。

「君の心で受け止めて そこが僕の居場所さ 決して離れはしない」なんてね。ものすごいことだと思う。

 

 



ぷーさんは、能ある鷹はツメを隠している設定で、頭のいい人間が社会の競争からドロップアウトしてひっそりと世間の片隅で生きているかのように描写されている。
ぷーさんは、確かに頭がいいのかもしれない。
しかしあくまでそれは机上の論理であり。母からの恋愛指南であり。
自己犠牲に酔う男のナルシズムでもある。
ももの幸せのために、自分はどうなっても構わないという。
野島イズム全開のヒーロー。
「101回目のプロポーズ」や「この世の果て」「高校教師」から変わっていない、全てを捨てて女に献身する男のナルシズムを打ち破った、ぷーさんの激情が見てみたいなぁ。
ももよりぷーさんの方が狂気を感じます。
高嶺の花は実はももではなく、ぷーさんのことを示しているのは暗黙の了解ですよね。

 

 

 


一番の狂気の源は、ももの父の家元でしょう。
華道の家元になるための根源は、彼にとっては「罪悪感」ではなく「憎しみ」
妻を寝取った男への憎しみ、自分を裏切った妻への憎しみ、才能ある血がつながらない娘への憎しみ。
それが彼を家元たらしめているもの。
妻に浮気をするようにそそのかしたのは、家元でないのかと私は疑っていますが。
自分の「憎しみ」を絶やさないために。
後妻のルリ子と宇都宮龍一の不義も、実は市松が画策しているんじゃないの?

 

 

 


宇都宮龍一くん。
彼も何がしたいのかよく分からない。物語冒頭で突然倒れたのは、何の前フリなのでしょうかね。
狂気がちらちらと見え隠れしながらも、それが線となって浮かび上がってこないのが「高嶺の花」
視聴していて、なんだかもどかしい。
このもどかしさは、野島が地上波ドラマで自分の持てる技量を駆使することができないとあきらめているところからくるものなのかもしれないなぁ。

 

 


6話で1章が終わりとのこと。
このドラマ、後半で化けるか、尻すぼみに終わるのか。楽しみです。

 

 

 

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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