ゲーム・オブ・スローンズ S3 戦乱の嵐-前編-


ゲーム・オブ・スローンズ S3 Game of Thrones 全10話 (2013年 アメリカ HBO)

■原作:ジョージ・R・R・マーティン
■製作総指揮:
デヴィッド・ベニオフ
D・B・ワイス

乱の嵐が吹き荒れる七王国では、ラニスター家が王都での支配力を強めていた。裏切りや陰謀が横行する中、自らの使命に気づき、運命を受け入れた者たちが決死の覚悟でその道を歩み始める!
“ブラックウォーターの戦い”はラニスター家の勝利で終わった。ジョフリーの祖父タイウィンは<王の手>としてキングズランティングに留まり、戦いを勝利に導いたティリオンは蔵相に格下げされてしまう。ジョフリーはタイウィン家のマージェリーと婚約し、ティリオンはサンサとの結婚を命じられる。
そんな中、サンサとアリアの身を心配するキャトリンの命を受け、女戦士ブライエニーは人質だったラニスター家のジェイミーを王都まで送ることに。戦で快進撃を続けていたロブだったが、フレイ家との結婚の約束を違えたことから思わぬ運命が待ち受けていた。
逃避行を続けるアリアは、旅の途中で宿敵の相手、ジョフリーの護衛を務めていたサンダーとめぐり会い、ウィンターフェル城から抜け出したブランは、<三つ目の鴉>に導かれ北へ向かう。
北の地では、野人の中に入り込み、イグリットと愛し合うようになったジョン・スノウが、究極の選択を迫られていた。
狭い海の向こうでは、兵を求めるデナーリスが奴隷商人湾で<穢れなき軍団>を手に入れ、さらに奴隷の解放を求めて奴隷都市ユンカイへ進軍する。

 

正直に書きますと、S1ではロブとジョンの区別がつきにくかった私。
ジョンが壁に向かってからは背景が雪一色になったので、それでようやく見分けられるようになりました。ごめんよ、ロブ。
そしてS3のクライマックスは血の結婚式でしょうね、やっぱり。すべてが吹っ飛びました。
9話のエンディングがこのドラマ始まって以来の無音ということにも、強く衝撃を受けたわ。
GOTでは愛と野望は両立しないということが、これでもかという具合に冷徹に描き切ってくれます。
何かを得るためには、何かを捨てなければいけない。
ロブが愛を選んだ瞬間から、勝利を得ることがないとは想像していましたが、ここまで徹底的に描かれると、正直へこみますね。
英雄が決して英雄的な死に方をしないというのが、GOTの鉄則でもあるのか。
あまりにも簡単に登場人物たちが死んでいくのが、かえってこの世界の理を現実のものとして私たちに知らしめているのかもしれない。
死は突然やってくる。

 

カール・ドロゴしかり。破傷風。
ヴィセーリス・ターガリエンしかり。ゴールデン・マスク。
ネッド・スタークしかり。斬首。
レンリー・バラシオンしかり。魔術による暗殺。

 

英雄的な死は訪れない、誰もが志半ばであっけなく死んでいくのがリアルでね。
ロブ・スタークもしかり。
犬死です。しかも文字通りグレイウインドの頭を縫い合わせられるなんて、私は衝撃すぎて倒れました。

 

 


スターク家の面々の人生の崩壊ぶりがとにかくすごいのですが、中でもアリア・スタークは父、兄、母の惨殺の瞬間に居合わすという悲運。
しかしまなざしをそらすことなく、人生に立ち向かおうとするさまに感動します。
スターク家の中では、今のところ一番好きなキャラクター。
彼女は失うことを知る、己の手を血で汚すことを知る、それでも生き続けないといけないと覚悟する。
誰かに頼るでもなく、自分の足で立ち続けようとする。
だからこそ、彼女の周囲はアリーをほっとけずに、助けていくのでしょうね。
シリオ・フォレル、ヨーレンやジェンドリー、ジャクェン、そしてハウンド(サンダー)。
あのタイウィン・ラニスターですら、彼女のことを可愛がっていましたもの。
彼女のこれからにも目が離せない。

 

 

一方、目を離したくなるのはシオンの転落ぶりで。S2でダメンズぶりに心を痛めておりましたが、S3はずっと拷問されていたのではないかな。
あまりにも不憫で、不憫で。
人生振り返ってみて、あの瞬間、あちらを選択しておけばと考えることはしばしばありますが、彼も選択の瞬間はいろいろあったはず。
なのにとうとう名前すら奪われてしまう。不憫すぎる。名前だけが彼の生きる全てだったのに。
ジョフリーのゲスっぷりに毎回、反吐が吐きそうでしたが、それを上回るサイコパスのラムジー登場。
ジョフリーがかわいく見えてきました。

 

 

 


S1登場時には、GOTのトリックスターかと思っていたティリオン・ラニスター。
意外にも登場人物の中で、一番良識的な苦労人な人物ではないのでしょうか。
愛おしすぎる。私がサンサだったら彼と結婚できたことに感謝するのに、14歳のサンサでは彼の良さには気づけないでしょうね。
GOTを見ていると、本当にマズローの欲求5段階説が、しみじみとわかります。

1・生理的欲求 → デナーリスが解放していく奴隷たち
2・安全欲求 → GOTの市民、野人たち
3・社会的欲求 → 兵士たち
4・尊厳欲求
5・自己実現欲求

GOTの登場人物たちはほとんどが尊厳欲求で苦しんでいる。他者から認められたい、尊敬されたいと。王でありたいや、この世界を支配したい欲求。
ジョフリーは社会的欲求をすっ飛ばして、むしろ出自の疑惑から自分がどこにも所属していないかもしれないという焦燥感からいきなり王としての尊厳欲求を満たそうとするから、あんなおかしなことになるのかも。
ティリオンも実は名誉や金銭欲などないけれども、ただ認められたいのよね。家族から。
自分が自分らしくありたいという。虐げらている人生を自虐的に笑ってやり過ごそうとするティリオンが好きだな。

 

 

 


GOTは成長物語ですが、そういう意味ではデナーリスは健やかに成長しているよね。
自己実現欲求を果たそうとしているようにも見える。何も持っていなかった少女が、人々とのつながりの中で自己実現を目指そうとしている。
女王としての貫禄もついていきました。仲間も増えてきました。
しかし面白いのは、デナーリスの成長こそが物語の王道であろうけれども、GOTは彼女に重きをおくのではなく、むしろ欠けている人たちがさらに何かを失い、何かを得ていく物語の方に比重を置いているような気がする。

 

 

 


右手を失い、傲慢さを失い、自分とは何かという苦しみに立ち向かおうとするジェイミー・ラニスター。
彼は愛のためにすべてを手放すことを覚悟している男で、だから好きなの。
そんなジェイミーがブライエニーとの出会いで、ゆるやかに変化していくさまが好きです。
愛が全てではないと知ってほしい。
GOTの面白いところは、恋愛至上主義の私ですら、愛よりも大切なものがこの世界にあると考えるところかも。
愛ですら自己実現のためのひとつの手段でしかない、とでも言おうか。
ロブ・スタークの愛の行きつく先を見て、やさぐれていますね、今。

 

 


あ、もちろん父ちゃんもお気に入りのキャラクター。しぶくで、一筋縄ではいかなくて、家に雁字搦めになっていて。
したたかな感じが好き。

 

 

★★★★

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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