雨が降ると君は優しい


雨が降ると君は優しい 全8話 (2017年 日本hulu)

■脚本:野島伸司
■主題歌:We’re All Alone ボズ・スキャッグス
■演出:大塚恭司、岩﨑マリエ、松原浩
■キャスト:
立木信夫(玉山鉄二)
立木彩(佐々木希)
倉田和馬(陣内孝則)
小早川志保(木村多江)
小野田史郎(古谷一行) ほか

 

出版社に勤める立木信夫(玉山鉄二)は、上司の倉田和馬(陣内孝則)から創刊を控えた月刊文芸誌『ストーリーファイル』の副編集長に任じられる。多忙を極め郊外に買った家にはなかなか帰れないが、妻の彩(佐々木希)とは深く愛し合い、仲睦まじい夫婦生活を送っていた。だが、彩には信夫には想像もつかない“秘密”があった。彼女はなんと、性嗜好障害の一つである“セックス依存症”に陥っていたのだ! 眩しく晴れた暑い日には抗えない衝動を覚え、不特定多数の男と肉体関係を持ってしまう彩…。信夫を心から愛するがゆえに、そんな自分に激しい嫌悪感を覚え苦しむ彼女は、意を決して著名なカウンセラー・小早川志保(木村多江)のもとを訪れる。彩は信夫には内緒で、なんとか障害を克服しようとするのだが…。

 

久しぶりに野島作品が視聴したくなりました。「この世の果て」「高校教師」は当時の私にものすごい衝撃を与えた作品。
その彼が新たに描く「究極の愛」のカタチが見たかった。

 

『雨が降ると君は優しい』は、野島が「本当に描きたいドラマ」を形にするべく、3年もの歳月をかけて丁寧に紡ぎ出した作品だ。この渾身の最新作の題材として野島が選んだのは、“男女の間に横たわる究極のカセ”…地上波作品では描くことが極めて困難な「セックス依存症」!その呼称と症状から好奇の目で見られがちだが、実は「性嗜好障害」という病気の一つで、患者ひとりの力では到底抗えない深刻な心のエラーである。本作で野島は、心から愛し合いながらも“妻のセックス依存症”という究極の試練を与えられた新婚夫婦を中心に、“心の闇を抱えた男女らの愛と憎しみが交錯する群像劇”を描写した。心のひだをすくい取る繊細さ、胸をえぐる鋭さを、すべてを包み込むような詩的で優しい描写と巧みに共鳴させながら、観る者を、狂おしくも切ない愛の世界へといざなう――。

 

野島にとって究極の愛の障害は性嗜好障害なのですね。
しかし申訳ないが「雨が降ると君は優しい」は究極の愛のドラマには思えず。
ドラマを見ながら信夫と彩の2人に、同じく性に開放的なヒロインが登場するかつて読んだ小池真理子の「恋」を思い出していた。
「恋」は衝撃だった。官能と純粋と、妄執。あの狂気の瞬間、あの情愛の瞬間、あの憎悪の瞬間。
「恋」の方がはるかに絶望的で、究極の愛。

 

性嗜好障害がテーマというとかなりショッキングなのだが、「雨が降ると君は優しい」での佐々木希の演じ方があっさりしているというのか。
あまりにも綺麗すぎて滴るエロスに狂わされる女の性を感じさせないことが要因かも。
対して玉鉄は、妄執と絶望と諦観に満ちた情けない、しかし誰よりも強い男を演じていて一見の価値あり。
信夫の愛は自己肯定の裏返しなんだろうなぁ。ここまで愛するから、自分を愛して、自分を認めてという。
彩の愛は相手を試す愛なのかしら。
地上波では放映できないからということで、かなりおどろおどろしい作品を期待したが、野島のかつての作品の衝撃に比べると肩透かし。
ドラマの構成はかなり凝っているので、ドラマの語り手が誰なのか、小野田史郎をめぐる歪な愛のカタチには見ごたえあり。

 

牧歌的な時代には野島の作品は衝撃だったが、闇が広まり拡散されていく今の時代では現実に起こっている事件があまりにも悲惨だということなのかもしれない。

 

しかし相変わらず野島のテーマ曲のセレクトは秀逸。
ボズ・スキャッグスの♪We’re All Alone♪には酔いしれた。

 

まさにこの歌詞通りのドラマ。
ぼくらは本当に一人ぼっち、孤独なんだ。
けれども雨の降りしきる中、傘の下では君とふたりきりで世界から隔絶され、愛を見つめることができるんだね。
美しく歪な「雨が降ると君は優しい」、文句を言いながらも堪能しました。

 

★★★

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。