他の男のために泣くな・・・奇皇后 21話まで

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韓国ドラマ「奇皇后」21話まで視聴。

 

恋愛ファンタジー史劇でございますね。
時代劇で、よもや「他の男のために泣くな」(by タファン)や、「他の男のものになるのならば殺してしまおう」(by タンギセ)などというセリフを聞くなんて思ってもみませんでした。
「善徳女王」でピダムが語った「愛は惜しみなく奪う」なんてセリフよりも、もっと遥かに歪んだ愛のカタチが「奇皇后」で展開されてしまうのか。
同じ女性が主人公の史劇ということで、どうしても「善徳女王」と比較してしまうのです。
ミシルやピダムをはじめとした複雑で陰影に富んだキャラクターが活躍していた「善徳女王」と比べると、どうにも「奇皇后」の愛のカタチは底が浅い。
手に入らなければ壊してしまおう、という愛のカタチばかりでバリエーションがありません。
私、いびつな愛のカタチというのも嫌いではないので、タファンやタンギセがこういうセリフをスンニャンに対して吐くと、「きゃああ」と一瞬ときめくのですが、その後「なんだかなぁ・・・」という気持ちになるのですよね。
「奇皇后」の登場人物たちは、誰もが愛を手に入れようと死にものぐるいで。
愛が手に入らないのならば、壊してしまおうというくらいの独占欲に満ちた人々ばかりです。
それは育む愛ではないし、すべてを奪い尽くす愛で、その愛の行く末は決して安穏とした幸せは望めない気がします。
ピダムは「愛は惜しみなく奪う」と語っていたのですが、その反面「惜しみなく自分のすべて」をトンマンにささげた男でもあります。
「この世のすべてのものには名前はあるけれども、王にだけはない」
そんな世界で、「愛している」よりも「ごめんなさい」よりもはるかに深い、忘れられない言葉をトンマンにささげるために、その言葉を叫ぶためには反乱するしかない言葉を。
「ナエ トンマナ」を。
彼だけが自分のすべてをささげて、その名前を呼ぶ資格を得たのよね。

 

 

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そんな永遠に届かなかった10歩の愛を知っているので、比べると「奇皇后」のタファンの愛はまだまだ幼いんだなぁ、と思います。
今の彼は全身でスンニャンのことを「好き!」と語っていて、彼の心が魂が、彼女を欲しているけれども、彼の愛が報われないと思い知らされた時、どう変貌するのでしょうか。
おバカでへたれで、間抜けで、見栄っ張りでどんくさいタファンですが、その一途な気持ちが私にとって愛おしかったりします。
スンニャンと関わることで、彼は確実に変貌していくのでしょうけれども、それがどういう方向に向かうのか。
ちょっと末恐ろしかったりします。
ピダムのように変貌するのか。
それとも「あなたがこの世界に存在してくれるだけで、私は幸せだ」という包み込むような愛に変貌するのか。

 

 
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いつの間にか、懐妊していたタナシルリ。
あれ、いつの間にタファンとそーいうことになったのでしょうか(爆)
彼女も、タファンもタンギセも間違った相手を愛してしまう、という不幸を背負っているところが共通しています。
しかも相手を包み込むのではなく、自分を押しつける愛。
自分の愛が通じなければ壊してしまおうとする歪んだ愛。
「他の人のものになるくらいならば殺してしまおう」という愛のカタチは、日本のドラマではあまりお目にかからないような気がします。
このセリフ、つい最近聞いたような・・・と思っていたら「秘密」でも似たようなセリフが出ていましたね。
相手を壊してしまう、というのは幼少期の人間関係が希薄な人が言うセリフじゃないかな、とも分析したりして。
小説で言えば坂口安吾の「夜長姫と耳男」、阿部定事件、ときて昨今の日本でこのセリフを見かけるのはBL小説(マンガ)くらいではないかと思うわけです。
BLというのは関係性の情念を、仮想の恋愛関係に託しているのですものね。
同性同士という禁忌を超えてでも好きなのね、「殺してしまう」くらい私のことが好きなのね、という複雑怪奇に屈折した思考回路です。
とにかく、そこまで濃密な人間関係を求めている、という隠された本心を表すセリフじゃないかしら。

 

 

 

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タファンもタナシルリもタンギセも、あまり幸せな幼少期を送ってなさそうですものね。
元の人たちは、幸せそうじゃないものね・・・
タンギセ・・・もうちょっと見目麗しい俳優さんだったら(ごめんね~)、もっと私の心が揺さぶられていたのかもしれません。
が、外見が好みではないので、タンギセ押しにはならずに、やっぱり間抜けなタファン押しなのですよ、私。

 

 

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タファンも皇帝となってからは「陛下」としてしか呼ばれなくて、可哀そう。
彼の一途な恋心が、どれだけ醜悪なものに、執着欲や独占欲に変貌していこうとも、なんだかいじましくって嫌いにはなれないだろうなぁ。

 

 

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で、ま~ったくこの二人のラブラインには興味を持てずにいます。
ハ・ジウォンって寡黙な役が多いですよね。
あまり多くを語らずに、じっと相手の顔を見つめる。
だからこそ、男たちは勝手に勘違いをするのかもしれません。その感情のあふれる瞳に飲み込まれそうになるのかな。
スンニャンも、あまり多くを語らない。彼女が王さまLOVEなのは分かるけれども、どうかほんの少しでもタファンのことをいじましく思って欲しいなぁ。
でないと、タファンとスンニャンの行きつく先は悲劇しか思いつきません。

 

 

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ヒロインのスンニャンより饒舌なヨンチョル(笑)
ワン・ユの怪文書がきっかけで怒ったクーデターにもしぶとく生き残り。
このドラマでの悪役を引き受けている彼ですが、しかしよく考えるとこのクーデターでは皆転身をはかった二枚舌野郎ばかりです。
「奇皇后」での権力闘争が後味が悪いのは、こういうところかな。

 

 

 

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とにかく、がんばれタファン!

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 4 )

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  1. FANです。

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    ええ、ええ、・・・・がんばって居られます、タファン陛下。
    麗しい皇太后様が、小鼻を膨らませて叱咤されても。
    皇后さまの勘違いな焼きもち作戦にも、何らメゲルことなく。
    国事なんて、そっちのけで、ヤン嬢に振り向いてもらうために、頑張っておられます。

    後ろ楯も無いまま、国王に据えられたら、そりゃまあ。
    ああ、なるでしょうなあ、しかも、文盲って、ありえない
    。ま、気の毒さに流されないヒロインは、ご立派です。
    が、もうちょっと、心温めて差し上げなさい、と言いたくなります。

    視聴者にも、頑張ることを強いるこのドラマ・・。
    ジジィと側近の悶絶セリフも、コントの如く心地よく。
    皇后さまの、浮気妄想と、その兄のヒロインへの執着は、
    更に痛々しくて、何故かウケるのですが。

    はい。王様・・・。
    どうやったら、こんなに魅力を削ぎ落とせるのでしょうか?役者さんが無骨すぎるのかな・・。

    週一回のドラマだけに、ヒロインが王様を慕う根拠が、
    もう、思い出せません・・。と、この先の展開をユカさんの記事で、先読みしたいのを我慢しつつ、約25分で早送り視聴して、消去しております。

    がんばれ、わたし。

  2. moonlight-yuca

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    ♪FANさん、だいぶん進んでいますね♪

    「奇皇后」が週1放送と言うこと自体、無理な設定ですよねNHK。
    このドラマはご指摘の通りかなり忍耐を必要とするドラマなので、勢いに任してばばば~と視聴すべきだと思います。

    >ヒロインが王様を慕う根拠
    最後まで分かりませんでした。
    実はこのヒロイン恋愛不感症なのではないかと思っています。
    愛を踏み台にしてのし上がって行った、ある意味昨今世間を騒がしている青酸カリのオバサマをもほうふつとします。
    あ、こんなこと書いたら怒られるわね、ファンの人に。

    こういう女に惚れたら不幸だぜと言うドラマだと総括しましょう。

  3. FANです。

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    ちょっと、待って・・・
    ・・・・・はあ、ウケル、お腹痛い・・・ユカさん!!

    あのヒロインの例えに、向日市のオバハンって、それは、アカン、爆笑!!!!いや、確かに、そうなんですけど。
    (決して、どっちも、そんなに魅力が?・・とは、言ってません)

    確かに、あのヒロイン。時代も国も越えて、
    警察や自衛隊に居るから、光ってるだけよね、と、
    言いたくなるお嬢さんであります。でも男は惚れるんだろうなあ・・、いいなあ・・。

  4. moonlight-yuca

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    ♪FANさん、どもども~♪

    >警察や自衛隊に居るから、光ってるだけよね
    確かに!
    ハ・ジウォンって固い役が多いよね。
    固いから周囲の男たちは彼女に振り回されるのか?

    しかし「奇皇后」のヒロインって、愛よりも大切なものがあるということを貫いたので、ある意味韓ドラマにしては異色のヒロインなのかしら。

    結局愛を手に入れることができなかった女性なのかもしれません。
    あ、あまり書くとネタバレになっちゃう?