キングダム S2


キングダム S2 Kingdom 全6話 (2020年 韓国 Netflix)

 

■原作・制作:キム・ウニ、キム・ソンフン、パク・インジェ
■キャスト:
チュ・ジフン(イ・チャン)
リュ・スンリョン(チョ・ハクチュ)
ペ・ドゥナ(ソビ)
キム・サンホ(ムヨン)
キム・ソンギュ(ヨンシン)
チョン・ソクホ(ポムパル)
キム・ヘジュン(継妃チョ氏)

 

[ep1]尚州で予想を裏切る事実に直面したチャン世子は、他の大勢の民とともに苦境に立たされる。ソビとチョ・ポムパルは、チョ・ハクチュの庇護を求める。
[ep2]中央軍の陣地に侵入したチャン世子を、恐ろしい悪夢が待ち受ける。王妃に疑いを持つ御営庁の役人たちは、証拠を見つけるために王妃の私邸を調査する。
[ep3]捕らえたはずのチョ・ハクチュが連れ去られたことを知り、必死で後を追うチョン世子。疫病の治療法を模索するソビ。赤ん坊の誕生を待ちわびる王妃。
[ep4]病に関する重要な発見をゾビから帰化されたチャン世子は、ソビにある頼みごとをする。王妃と面会し真実を告げるように迫るチョ・ハクチュ。
[ep5]罪なきものたちの命を救うために漢陽に乗り込んだチャン世子は「王座は誰にも渡しはしない」という王妃の言葉の意味を、身を持って知ることになる。
[ep6]王宮が瞬く間に血の海に変わる中、危険な作戦にすべてをかけるチャン世子。王子を連れて逃げ回るソビは、ある場所に姿を隠す。

 

 

 

反転に次ぐ反転、絶体絶命が何度世子を襲うのか。
どれだけの民の血が流れ、どれだけの裏切りがあり、どれだけの仲間が失われ、それでも世子様は走り続ける。
膝を屈しそうになりながら、もう駄目だと何度もあきらめながら、それでも走り続ける。
S2はS1のクリフハンガーの続きで、いきなり展開がフルスロットル。息をつく暇もなく(ほぼ徹夜状態で)S2全6話、視聴した。
登場人物たちの絶望に私も共鳴し、それでも明日を望むそのくじけない心に感動し、疫病の原因となった人間の愚かしさ、弱さに身震いしながら。
「生き残るのは誰だ」というのはS2のキャッチコピーでもあるが、予測不可能なくらい次々と登場人物が、あっけなく死んでいく。
志半ばだったり、野望半ばだったり、己の信念に準じながら。

 

 


世子はこのドラマで何度でも問いかける。
「進むべき道は死と怨念で渦巻いている。それでも私に付いてきてくれるか?」と。

 


人は国についていくのではなく、世子が語る未来に、彼が夢見る国に理想を重ね、己の命を顧みず死地に飛び込んでいくのだ。

 

 


善と悪の境界があいまいだったヨンシル。S1からお気に入りの複雑なキャラクター。
ソビと共に権力に押しつぶされそうな民衆の代表であり、カニバリズムのきっかけの人物。
しかし世子と行動を共にすることにより、彼のまなざしに輝きが戻ってくる。
未来を夢見たいと願ってくる。
ちょっとね、ピダム@「善徳女王」を思い出して、彼を見ているとなんだか胸が痛いのです。

 

 


S2圧巻の絶体絶命。王宮の中で迫りくるゾンビ。八方ふさがり、凍てつく氷の池。
まさに「ゲーム・オブ・スローンズ」シーズン7ep6の氷の湖の上でホワイトウォーカーが迫りくるジョン・スノウである。というか絶対影響受けているよね。「GOT」に。
同じく「GOT」の影響を多大に受けている「アスダル年代記」と比較すると「キングダム」の方が、はるかにドラマの質は優れている。
これでもかと徹底的に描く絶望と不条理の前になすすべもない人間たち。
国の荒廃と天候の不順、食物がないゆえに起こったカニバリズム。
襲ってくるゾンビとは、すなわち圧倒的な飢餓感の象徴であり、愚かな人間のあさましい富と権力への欲望が起因だったりする。
権力を握ってしまった人間はどうして己の足るを知らずに、より多くの欲望を抱いてしまうのだろうか。
チョ・ハクチュしかり、王妃しかり。

 

 


S2のカギを握るのは王妃でしょう。
ずるがしこく、あさましく、愚かしい欲望の象徴。
悪役として描かれているのだが、王妃がチョ・ハクチュにつぶやいた言葉が私は忘れられない。
「ずっと女だと思い馬鹿にしていた・・・」と。
彼女がモンスターに、悪鬼に変貌した要因はきっと誰も彼女を認めなかったからだろう。
あくまで王子を生む器としてしか、周囲に求められなかった。認められなかった。
股を広げ、年老いた王にまさぐられ、父には馬鹿にされ。彼女の怒りと恨みが結晶したのがS2のゾンビたち。
今にも闇に溶けていきそうな王妃が「キングダム」の不条理や絶望を描き出していた。

 

 


光と闇の中に消えていく世子がまとうのは無辜の民の血で赤く染められた衣。まるで袞龍袍のごとく。
たとえ王ではなくても、世子がいる限りこの国は何度でも立ち上がる。
どんなに人間の悪意が結晶化した疫病や飢餓がこの国を襲おうとも。
王という存在は、王宮の中にいるのではない。
民を思い続けるその尊い信念こそが、王という証なのだ。信念に人はついてくるのだ。
世子の戦いはまだまだ続く。
深い闇に落ちていきながら、誰も傷つけたくないという理想が実現できないことに自身を深く傷つけながら。数少ない仲間を失いながら。
深い闇の場面でS2は終わる。
すべては次のシーズンに。
明けない夜はない。

 

 


to be continued!

 

★★★★★

 


RIP

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 2 )

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  1. hobbit

    yucaさま
    コメントごぶさたしております。

    世子の後ろ姿、赤く染まった服、そして王妃のS2での思い・存在など的確に語られていて
    yucaさまの文章に胸を鷲づかみにされてこうして出てまいりました。

    勝手ながら、拙宅の「キングダムS2」記事にこの記事のリンクを貼らせていただきました。
    もし不都合などありましたらお教えください。

    いや、それにしてもジョン・スノウ!わかりみが深いです

  2. yuca

    hobbitさま

    こちらこそごぶさたしております!
    「キングダム」よかったよね~
    ここ最近のNetflixの韓国ドラマの充実ぶりにわくわくしています。

    >わかりみが深いです
    でしょ!
    ドラゴン飛んでこないかと思いましたもの(笑)

    こちらこそリンクありがとうございます!