俺は愛を知っている・・・その冬、風が吹く10話まで

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韓国ドラマ「その冬、風が吹く」10話まで視聴。

 
なまじ原作を知っており、どうしても比較して観ていたので、文句ばかり書いていましたが。
9話までは、ほとんど脱落寸前で、原作「愛なんていらねえよ、夏」への義理(?)だけで、意地になって視聴していましたが。
10話は、面白かった。
原作と比較することなく、初めて、そう初めて、「その冬、風が吹く」が面白いと思った。
映像はあまりにも綺麗で、ソン・ヘギョもチョ・インソンも美しくうっとりさせる。
その、ほのかににじんで見えるような映像美の向こうに、初めてノ・ヒギョン脚本家の世界が見えた。
このドラマは「生きたがる男と死にたがる女の物語」と紹介されていたが、違う。
「死ねなかった男と生きるのが怖い女の物語」なのだ。
そう、1話では生きる意味を見失い、自暴自棄でただ息をしているだけのオ・スが、ただ死ねなかったというだけのオ・スが10話で、自分の生きる意味を見出す。

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自分の生きる意味、それはヨンへの愛のために、なりふり構わず走る。人生を走る。
愛を知らなかった男が、「俺は愛を知っている」と声を震わせて言う。
その姿の、なんて美しいことか。
1話から、「愛なんて信じない」と言っていながら、実はその潤んだ瞳で誰よりも愛を欲していた男が、愛を見つけたその瞬間は、美しかった。
映像美ばかりが先行した感のある、この作品のテーマが、浮き彫りになった瞬間だ。
そう、この瞬間が美しいんだよな、この物語は。

 

 

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いやあ、ソン・ヘギョちゃんはどのシーンでも美しくて、眼福。
ヨンは生きるのが怖い女。人に拒絶されること、苦しむこと、裏切られることが怖くて、前に進めない女。
彼女が、兄オ・スをあっさりと信じたのは、血は裏切らないと思っているから。
彼女はまだ知らない。
血よりも、もっと濃い、強い、想いがあることを。
その想いが、愛であるということを。
彼女はしっかりと自分の中に渦巻く感情を見つめ、そのオ・スへの感情が何なのかを、言葉にしなくては前に進めない。生きたいと思わないんだろうな。今はまだ、生きるのが怖い女だ。
これから変化していくのだろうな。

 

 
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執着を純愛と勘違いしている女。
私は、チン・ソラが嫌いではないのよね。例え間違っても、相手を滅ぼすような執着でも、確かにそれは愛の一種かもしれない。
それは、絶望的な片思い。

 

 
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愛に囚われている女たちに比べて、ジンソンの立ち位置が表層的で面白みにかける。
もっと彼は、いや彼こそ、オ・スにもっと執着しなければいけないのに。
原作にはないオ・スに執着するチン・ソラという役を作ったために、ジンソンが分裂したみたい。ジンソンこそがもっと、オ・スに執着しなければ、結末のあの瞬間の意味も変わってしまう。

 

 
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何よりも、ノ・ヒギョン脚本家の世界観を表しているのがワン・ヘジャなのでしょう。演じるペ・ジョンオクはノ・ヒギョンのミューズであるという記事を読んだけれども、彼女がいるからこそ、「その冬、風が吹く」は単なるロマンスには終わっていないの。
今までこのドラマに関して、散々文句を言っていた私が、手のひらを返すように面白いと言いだしたのは、ワン秘書の立ち位置が見えてきたから。彼女を通して、ノ・ヒギョン脚本家の世界が見えたような気がするから。
原作「愛なんていらねえよ、夏」でも十分複雑だったこの役。
「その冬、風が吹く」ではさらに複雑に、重層的に、人間というものの訳のわからなさの象徴のような役に変わっている。
愛しているのか憎んでいるのか、愛おしいのか嫌いなのか、殺したいのか生かしたいのか。
すべてをひっくるめた、この混沌としたワン秘書の激情に鳥肌が立つ。
物語が進むにつれ、ワン秘書の存在が大きくなり、視聴者は悩むのだ。
この人は一体何なんだろう、と。
オ・スもオ・ヨンも、ある意味、分かりやすいキャラクターである。愛に飢えている、家族のつながりを誰よりも欲している存在という。
しかし、ワン秘書はそれだけではない。彼女は愛と同時に憎しみも欲している女なのだから。
なんて複雑なんでしょうか。その複雑さに、鳥肌。
ノ・ヒギョンの作品になりつつあるなぁ、と思うわけです。

 

 
◆原作の「愛なんていらねえよ、夏」の考察はコチラ。
◆映画「愛なんていらない」の考察はコチラ。

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 2 )

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  1. パレアナ姉

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    おお~そうなのですか!
    このドラマ、原作が好きすぎて、観ようか止めようか思案していたのですが、今日のこの記事で俄然、視聴意欲が湧いてきました~。
    観れる環境が整ったら、さっそく見てみます♪
    教えてくださってありがとうございます~。

    それから、さっそくブログのリンク貼ってくださってありがとうございます。
    yuca師匠のブログ、私のブログにリンクさせていたいていいですか?・・なんて、実は既に貼っているのですが(^^ゞ 貼り方が分かって嬉しくて一番に貼っちゃいました。
    もし不都合があればお知らせくださいね。

  2. moonlight-yuca

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    ♪パレアナ姉さん、コメントありがとうございます♪

    いやぁ、原作の方がはるかにいいですよ!(キッパリ)
    しかしけなしてばかりだと、いけないのでちょっと褒めてみました(苦笑)
    映像は本当に綺麗で、美男美女のカップルで素敵なのですがね、何かが足りないと思います。
    なんたってナルの役割が中途半端なんですよ~
    全体的に、甘い仕上がりなので、ベタアマ展開が好きな方には評判いいですよね、このドラマ。
    しかし私は、ドラマの苦さも好きなので、物足りないのかな。

    「面白い」というのは「その冬、風が吹く」ではサキの枠割がずっと深く複雑になってきていて、そっちが目が離せない・・・
    これだけ美男美女の登場人物出演の中、注目しているのがなんともサキ役の人だなんて、我ながら苦笑です。

    リンク!ありがとうございます。
    光栄だわ~
    これからもよろしくお願いします♪