アルハンブラ宮殿の思い出


アルハンブラ宮殿の思い出 Memories of the Alhambra 全16話 (2018-2019年 韓国 tvN)

■脚本:ソン・ジェジョン
■演出:アン・ギルホ
■キャスト:
ヒョンビン(ユ・ジヌ)
パク・シネ(チョン・ヒジュ)
パク・フン(チャ・ヒョンソク)
イ・スンジュン(パク・ソンホ)
ミン・ジヌン(ソ・ジョンフン)

投資会社の代表ユ・ジヌ(ヒョンビン)がビジネスのためスペインのグラナダに行き、元ギタリストのチョン・ヒジュ(パク・シネ)が運営するホステルに泊まり、奇妙な事件に巻き込まれるサスペンスロマンスドラマ。

 

壮大な駄作。映像、音楽、キャストは素晴らしいのに脚本が意味不明。
繰り返されるカットバックの演出には、あまりにもそのもったいをつけた演出として感じてしまいイライラ。
最終話ではヒョンビンがほとんど出演していないというテイタラク。
ある意味「悪い男」の最終話をも思い出しましたよ。キム・ナムギルがドラマの収録中に入隊してしまったがために、影武者で撮影したという悪夢。
「悪い男」は不条理な結末でしたので、ナムギル不在も不条理感に拍車をかける効果がありましたが。
「アルハンブラ宮殿の思い出」の最終話では何が起こったのか?

 

 


何度も書いてきましたが、ロマンスを期待して視聴すると肩透かし。
恋より愛より描きたいものは何だったのか、このドラマで。そんなことをずっと考えてみる。
最終話、ユ・ジヌはゲーム中のバグとして削除されてしまう。
壮大な世界観を描くのに、その世界観の整合性がとれずに意味不明になってしまうのは脚本家ソン・ジェジョンの悪い癖でしょう。
あの伏線、この伏線も回収されずにほったらかしにされ、その放置具合に唖然とするしかない。
ヒョンビンとパク・シネだったらロマンスを期待するなと言う方が無理でしょう。
このドラマで描きたかったテーマには、全然共感ができないなぁ。
観ていた方、テーマってわかりましたか?

 

 

 


「信頼という魔法が世界を変える」
これから加速度的に第4次産業革命が起こり世界は激変していく。
様々な仕事がAIにとって代わられ、私たちがいる日常の風景が失われてしまうことは簡単に想像できる。
バーチャルな娯楽や、デジタルなシステムに飲み込まれていく中、私たちが生きている唯一の証は生々しい感情だけ。
根拠もなく誰かを信じるということは、前にも書いたけれども、愛しているという意味。
愛だけがAIと私たちを区別できる唯一の手段になるかもしれない。
そういうテーマかなとも感じますが。
そもそものジヌとヒジュの愛の描かれ方が、なんとも中途半端で説得力がないのよね。
説得力がない愛に共感しろと言われても、私には無理だわ。

 

 


ジヌはエンマの方に心惹かれていたのではないか。
最期に会いに行ったのはエンマだし。
ヒジュに心を動かされるよりも前に、エンマの虜になっていたよねジヌ。
ヒジュを通してエンマを見つめていたのではないかしら。
ジヌはエンマと同じ世界に消えていく。
電脳の世界に消えていった「攻殻機動隊」の草薙素子のように。
GHOST IN THE GAME。

 

 

あ、でもゲームをしているときにジヌのGHOSTが私に囁いてくれるのならば。
至福の瞬間。

 

 


「アルハンブラ宮殿の思い出」のそもそもの元凶は、ヒョンソクのジヌへの妄執でしょう。
愛なんか欲しくない。
共に歩いていけないのならば。
彼の心をめちゃくちゃに破壊して、血を流し、憎まれたい。
憎まれて、探されて、捜されて。
憎しみや恐怖で気が狂うほど自分のことを思い出してほしい。
誰かを愛するなんて許さない。何かに心を奪われるなんて許さない。
まして自分を忘れるなんて許さない。
ヒョンソクのその思いは。その行動は。
まるで求愛。
その執着愛に追い詰められていくジヌ。

 

ゲーム中にバグとなってしまう原因は、誰かに執着してしまったからではないかと。
ヒョンソクも、マルコも、ジョンフンも教授も。
ARの思惑を超えて、相手に対して抱く強い執着がバグとなってゲームに現れるのかもしれない。
人間の執着する愛をゲームのプログラムは理解できずに、バグってしまう。

 

 

 


泣く女は嫌い。
闘わない女は嫌い。
ヒジュの愛の物語はここからスタートでしょう。
ゲームのゴーストとなったジヌを探しに行く物語。
雪の女王にに囚われたカイを探しに行くゲルダのように。
エンマに囚われたジヌを探しに行く。

 

あるいは。
消えてしまったティーダを世界から見つけ出した「ファイナルファンタジーX2」のユウナのように。

 

「アルハンブラ宮殿の思い出」はロマンスのはじまりを、延々16話かけて説明しただけかもしれない。
ヒジュ、自分の足でもがいて、その手でつかみ取って、愛を。
涙なんか、あなたには似合わない。

 

 


色々な意味で中途半端な「アルハンブラ宮殿の思い出」
16話まで視聴完了できたのだから、面白くなかったわけでではないが、視聴したことを記憶から抹殺したい気もする。
深く考察しようと思えば、面白いかもしれないが、設定のグダグダ具合に、その気も失せる。
「アルハンブラ宮殿の思い出」の最大の謎は。
ヒョンビンがどうしてこのドラマの出演にOKしたのかだわ。

 

 

★★★

 

 


その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 2 )

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  1. ゆま

    こんにちは!
    私の思いのたけを見事に言葉にしてくださって、本当にありがとうございます!!
    このもやもやどうしてくれようか、という最終回でしたので、同じように感じてらっしゃる視聴者の多いこと、ホッとしましたが。
    なので感想はyucaさんの文章の引用ばかりになりました…

    >観ていた方、テーマってわかりましたか?
    どんなにガチャガチャしたドラマでも、そこに軸があれば楽しめるし納得できたりするのですが、今回だけは一体何が描きたかったのやらさっぱりで、どこに共感すればよいのやら、というのが一番このドラマで払拭できなかった部分なのです。

    >壮大な世界観を描くのに、その世界観の整合性がとれずに意味不明になってしまうのは脚本家ソン・ジェジョンの悪い癖でしょう
    「W」で経験してるのだから、そのあたり納得して観るべきだったのかもしれませんが、視聴者を納得させない脚本っていい脚本なのかな~自己満足だとドラマとしての存在意義に?をつけてしまうのは間違いでしょうか?(映画だとアリだと思います)

    >ジヌはエンマの方に心惹かれていたのではないか
    私もそう思いました。ヒジュのキャラクターも魅力的ではなかったし、エンマは存在自体が女神のようでしたから。
    シネちゃんのとことん抑えた演技だけはさすがだなぁと思いましたが。

    >人間の執着する愛をゲームのプログラムは理解できずに、バグってしまう
    前回の記事で、ヒョンソクの存在の重さが愛だったのかと、yucaさんの分析に感動したんです(大げさですが本当に)。
    あぁ、ここにメインテーマの一片が見いだせるのかと。そうすると少しこのドラマに納得して最終回を待ったわけで^_^;

    >「アルハンブラ宮殿の思い出」の最大の謎は。ヒョンビンがどうしてこのドラマの出演にOKしたのかだわ。
    そうなんです!話題性は抜群でしたけど、「ジキ&ハイ」の失敗で映画に逃避行していたヒョンビンは何に惹かれて出演したんでしょうか。ほとんど剣を振り回し銃を撃ってただけなのに… 女を見る目もないようだし、財力はあるけど魅力のある男ではなかったですよね、ジヌって。ヒョンビンじゃなければ(*^。^*)

    >壮大な駄作。映像、音楽、キャストは素晴らしいのに脚本が意味不明。
    主役二人の美しさ(ヒョンビンの魅力は半減していたような気もしますが)とスペインの風景、そして名曲(でも私のとって「アルハンブラの想い出」は下校音楽であり、ケツばんをされたイヤな思い出がよみがえる名曲なので複雑な気持ち(+_+))、無駄遣いでしたねぇ(>_<)

  2. yuca

    ゆまさま

    コメントありがとうございます!

    わあい、このドラマに関しては結構評判がいい(!)ので私が感じたもやもや感は、もしかして異端?
    なんて思っておりましたので勇気づけられました。

    >一体何が描きたかったのやらさっぱりで、どこに共感すればよいのやら、
    おそらく描きたかったのは「世界」でしょうね。人物はその世界を彩る要素でしかなかったので、共感できない人物像になっちゃたのではないかと。

    >「W」で経験してるのだから、そのあたり納得して観るべきだったのかもしれませんが
    うんうん。しかしこの作家の「イニョン王妃」があまりにもスイートだったので、どうしても期待しちゃうのよね。
    その後の作品はスイートというよりも、結構過酷なのですけれどもね(笑)

    >ヒョンビンは何に惹かれて出演したんでしょうか
    アクションシーンがやりたかったとか?
    怯えて逃げ回る表情はtoo much。
    そして女の見る目がない!!笑った~
    バツ2の彼がいくら愛を語ってもね~ お手軽感がぬぐえませんでした。

    あ、このドラマの悪口はどんどん出てきます。
    しかし最終話まで視聴できたので魅力はあるとは思うのですよ。
    しかしその魅力がだんだん裏切られ怒りだけになってくるという・・・
    はい。