あなたを愛さない・・・ミスティ12話まで


韓国ドラマ「ミスティ」12話まで視聴。

 

 

♪ Misty ♪といえばエラ・フィッツジェラルドやサラ・ヴォーンの名曲を思い出しますが、あれは初めての恋で五里霧中をさまよう女ごころをうたった歌で。
♪I’m too misty and too much in love♪
「霧の中をさまよっているの、あなたを愛しすぎて」
これが高じてストーカーの話になるのが、クリント・イーストウッドの「恐怖のメロディ」(Play Misty for Me)
このドラマ「Misty」と名付けるからには、きっとそこらへんの過去の作品へのオマージュもあるのだろうなぁとみております。

 

 

ケビン・リー殺人事件が起こり、それまで順風満帆に思われていたヒロインのコ・ヘランのキャリアアップの人生ががらがらと崩れていく。
ヘランや登場人物たちの五里霧中の心理を表したタイトルでもあるし、あるいは事件の真相は霧の中(藪の中)とでもいうべきなのか。
それぞれの登場人物たちが、それぞれの真実を語るのだが、その真実が果たしてどこまですべてを語っているのか。
断片の真実しか語らないので、ますます混迷を極めていく事件。
五里霧中の中でヘランとテウクはお互いに否応なく向き合わざるを得なくなる。
互いのまなざしの中に、何を見出すのか。

 

 

 


子供を中絶したことですれ違い、もはや離婚寸前だった夫婦。
向き合うことでテウクはヘランを失っては生きていけない自分を見出す。ヘランが何をしようとも、彼女がテウクにとっては必要で。
「君を守る」という愛をささげるテウクは、水際立った男のダンディズムを見せてくれる。
どんなに苦境に陥ろうとも、妻を守る。
OSTの♪ someday ♪はテウクの気持ちを代弁した、いい曲ですよね。
実は「ミスティ」はコ・ヘランの物語ではなく、カン・テウクの物語でもあるよね。

 

穿った見方をすれば、ここでヘランを見捨てればテウクが自分の人生を否定することになるのでヘランにしがみついているとも見える。
そんなに、いい女には見えないですもの、ヘラン。面倒くさい女だよ。
ヘランと結婚したことも、検事をやめたことも、国選弁護士になったことも、自分の信念を曲げ有名弁護士事務所に所属したことも。
すべてヘランがいたからこそ。
そのヘランを否定することは、自分の人生の過ちを認めてしまうことともなり、テウクには耐えられないでしょう。
霧の中から妻への変わらぬ愛を見出すテウク。

♪I’m too misty and too much in love♪

 

 

 


「困難なことにはいつも正面突破をしてきた」と言うヘランですが、いつも本当の困難時には男に守られてきて。
友人の雑誌記者がかつて汚職事件をスクープした際に政権から不当逮捕され、政治記者生命が断たれたときに「私はその事件から逃げていた」と語るヘラン。
おいおい、いつも「公正な社会の実現」のために頑張ってきたんじゃないのかい、と思わずツッコミました。
そして今。
ケビン・リーの殺人事件の被疑者となり、全てを失いかけたときに振りかえると、テウクがそばにいます。
自分の7年間のつれなさをヘランに詫び、そして変わらず「愛している」と言ってくれるテウクが。
男と女が長年連れ添っていくと、愛や恋だけではなく、しがらみや生活や、喜びや悲しみ怒り憎しみ、金銭や欲やいろいろなものが2人にまとわりついて何が本当か見えなくなったりするものです。
ヘランはきっと初めて、本当に初めてテウクと向き合い、自分の心を見つめる。
今まで目を背けてきたものに、初めて目を向ける。

 

 

 


ヘランにとって「愛」とはイコール「身を滅ぼすもの」でしょう。
母がそうだったように。愛を信じて裏切られ、それでも男を待っていた母はヘランにとって反面教師。
ヘランの過去には、まるで東野圭吾の「白夜行」のような(もっとマイルドですけれども)事件が。
貧乏ゆえに男から金を借りようとし、そしてハ・ミョンウに助けられる。
ミョンウはまるで桐原亮司のようにね、ヘランを助け続ける。
人生をもヘランにささげるミョンウに対して、ヘランは感謝と罪悪感を抱きこそすれ、そこに「愛」は見当たらない。
誰も愛さない。
それはヘランにとって、信念のようなもので。
イ・ジェヨンに対して抱く気持ちは、あれも「愛」ではなく「肉欲」だったのでしょうね。
「愛」に向き合わないといけないシーンではヘランは、いつも真っ先に逃げていた。
ミョンウの時も。
ジェヨンの時も。
そして、今テウクへの愛と向き合い、逃げようとしている。

 

 

彼女にとって「愛」は理性を鈍くし、自分のいるべき場所を見失い、コントロールが効かない状況に陥らせるものであり、恐ろしいもの。
テウクのことを「愛さない自信」があったのに、「愛してしまった」自分に気付くヘラン。
彼女の遅かりし初めての恋の物語が「ミスティ」
♪I’m too misty and too much in love♪ なのです。

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 1 )

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  1. ナンか召し上がれ?と願う・FANです。

    やっと見終わりました、はぁあぁあ、疲れた。

    ヒロインさんの、息継ぎの無い演技。
    終始、生活感の無い職場、・・・・誰が登場しても。。。疲れる。

    ああ、そして・・・・旦那さん。
    法廷を自己満足の場にしちゃ、アキマへん。

    あの息が詰まる美女のご主人に、成れただけで満足したらよかったのにねぇ。。

    そして、このドラマの疲労をズバリ、仰るユカさん。
    やはり、好きです貴女様が。
    この告白で、このドラマ完走したといっても過言ではない。

    主軸のゴルファーに対して
    @申し訳ないですが死んでほっとしました・・

    之です、此処です。貴女様の真骨頂、申し訳ないと思われる奥床しさ。

    私なんぞ、最後まで。
    ゴルフ夫妻の二人揃って、色艶の無さが辛かった。
    奥さんの演技が上手すぎて、豪邸暮らしが痛々しい。。

    そして、亡夫。。。
    あれは、頑張ってもテコンドーかと存じます。
    せめて、アメフト(防具は似合いそうだ)設定ならねぇ・・・。
    ※何が言いたいの?FANさん

    彼をみたあとでの、高橋カツノリは物凄くオトコマエだ。