2号棟を閉房します・・・刑務所のルールブック


刑務所のルールブック Prison Playbook 全16話 (2017-2018年 韓国tvN)

前半の感想はこちら。

さあ、お次は刑務官たちの感想ですね。
囚人たちだけではなく刑務官たちのエピソードも濃い。
イ・ジュノがいみじくも1話で語った「心配するな。ここも人が暮らしている空間だよ」というのが、思い返してみるとドラマの根底を流れていたのね。
極上の胸熱ドラマです。
だって人が描かれているのだから。人生が描かれているのだから。

 

 

イ・ジュノ


チョン・ギョンホ、やっぱり好きだわ。
彼を初めて知ったのは「ごめん、愛している」でも「犬とオオカミの時間」でもなく「幻の王女チャミョンゴ」
このドラマは不思議なドラマで13話までがいつ挫折してもおかしくないくらいのつまらなさと、後半の怒涛のロマンティックな展開。
その中でチョン・ギョンホはどうしようもなく悪く、どうしようもないくらい愛おしい男をさらりと演じていました。
「あなた、笑って」「ハートレスシティ」「純情に惚れる」そして「刑務所のルールブック」
彼が出演するドラマはどれも面白い。
どんなに難しい役も、さらりと淡々と演じるチョン・ギョンホはごひいきの役者さんなのですよね。
そして「刑務所のルールブック」でもイ・ジュノという、ジェヒョクと並ぶもう一人の主役をさらりと、愛おしく演じてくれました。

 

 


イ・ジュノも十分複雑な人間で。
なんでもそつなくこなし、才能豊かで何でもできて、だからこそ器用貧乏になっている自分をどこか冷静に見放している。
野球の才能もジェヒョクより優れていたし、IT長者にだってなれていたし、彼が望めばなんだってなれる。
でも、だからこそ、何者にもなれない自分を誰よりもよく知っている。
そのことに軽く絶望しながらも、しかしジェヒョクのすごさも誰よりも理解している。
諦めない男がジェヒョクならば、イ・ジュノは諦めてしまう男。
でもジュノのすごいところは決してひがまない、嫉妬で苦しまない、きちんと俯瞰して見ることができるから。
ジュノを親友といつでもどんな時でも受け入れてくれるスーパースターのジェヒョク(このエピソードも泣ける)、昔の友情を決して忘れないジェヒョクという稀有な人間を守ろうというそのジュノの熱い思いがジェヒョクを支えてきた。
決して貸し借りではなく、ジェヒョクがジェヒョクでいてくれたらジュノもまた、嬉しい。
打算が一切ない友情に私たちは胸を熱くする。

 

しかし・・・
ジェヒョクや。
なぜ最後の謝辞で肝心なジュノの名前を忘れる(爆)
真面目な胸熱なシーンで、またまた笑わせてもらいました。
このドラマ、笑わせるシーンは絶妙なタイミングで「ピ~ヒョロロ」みたいな鳥?の声が入るのも面白い。
「応答せよ」シリーズは羊の声だったよね。

 

 


イ・ジュノ表の顔(左)と裏の顔(右)
とにかく徹頭徹尾ジェヒョクに寄り添って、彼を支えていくことでジュノも変わっていきました。
きっとそれまではなんでもソツなくこなすからこそ、面倒なことを全部避けて、自分の気持ちは置いといて冷静に人ごとのように対応してきた彼が。
あんなにも不合理と嫌っていたペン部長のような、人と向き合うことを恐れない、傷つくことを恐れない男になりました。

 

 


恋愛もスマートで。
ジェヒとの関係を築いていく過程も素敵でした。
ジェヒョクラブの同居人の弟に毎回蔑ろにされるジュノにも爆笑。
ああ、いい役を演じてくれたよね、チョン・ギョンホ。

 

 

ペン部長


第一印象に騙されるなというのは「刑務所のルールブック」のお約束ですが。
ペン部長にチョン・ウンインを配役するのは明らかにミスリード狙いでしょう(笑)
数々のドラマでサイコパスを演じたチョン・ウンインが出演したとたん身構えたのですが。
すでに偏見に凝り固まっている私。
裏切られた~
ペン部長がいるからこそ西部刑務所は「人」の住む場所になっているのです。
恐ろしいほどの口の悪さ、恐ろしいほどの手の早さ、とっつきにくさ。
そんな第一印象を軽やかに剥いで、ペン部長の不器用な優しさを見せてくれます。
ペン部長と囚人たちのやり取りは涙、涙です。
かつて囚人を助けられなかった過去を背負いながら。
16話かけて寄り添い、築き上げてきた人と人の関係性を見せてくれる。

 

 


もう絶対にミス・リード狙いの表の顔(左)と裏の顔(右)だから。
囚人たちが口々にペン部長への感謝の言葉を述べて去っていきます。
そしてジェヒョクの感謝の言葉に、びっくりして涙ぐむペン部長。
そしてそのことで娘の前でちょっぴり誇らしげなペン部長。
親娘の関係と、彼の仕事が認められているという幸せをドラマの最後で見せてくれました。
上手いよなぁ、このエピソード。
ありがとう、ペン部長。

 

 

ソン刑務官


意外にシビアな過去を持つソン刑務官。
マシンガントークの男だと思っていましたが、彼も囚人たちに寄り添っていました。
ペン部長の良さも知っているし、ユ大尉のことを何かと気を配ってくれているし。
友人がいないソン刑務官は、西部刑務所の中で大切な関係を築いていくのです。

 

 

所長


刑務官たちは表の顔と裏の顔の落差が激しい(爆)
なんていうか所長は世俗的な方でね。打算的な方ともいうのですが、何とも憎めない。
西部刑務所をどう宣伝していこうかという自分の成績にしか興味がないのです。
そしてジェヒョクを広告等にあざとく使うのですが、憎めないのは「ヒョン」「トンセン」という疑似関係にいちいち喜んでいるところ。
あざといのか天真爛漫なのかわからなかったのですが。
ペン部長の更迭をナ課長に詰め寄られたときの所長の決断がしびれさせました。
決してお花畑な人ではない、所長の底力を見せてくれる。
喰わせモノですが、ジェヒョクを応援する気持ちには嘘偽りはないのです。
だってジェヒョクが復活したら、それは自分の功績になるからね(笑)

 

 

ナ課長


ナ課長!!
表の顔も裏の顔も一緒の唯一の刑務官かも。
ナ課長はどこまでいってもナ課長です。
友人がひとりしかいないのも笑えるし、誰に対しても合理的なナ課長でいてほしい。
ナ課長の魅力はドラマが終わったあとにじわじわと来るなぁ。

 

 

愛すべき登場人物たち


「応答せよ」シリーズのがさつな心温まる父親像を演じていたソン・ドンイルがここではミスリードな役柄に。
上手く視聴者の意表をついてきます。

 

 


ジュノの弟で、熱狂的なジェヒョクファン。
本当に登場人物たちの表の顔と裏の顔の落差が激しくて、激しくて。
笑えます。
いい味出しています、この弟。

 


ジェヒョクが収監されることで苦しむけれども、やがて緩やかに癒されていくジェヒョクの妹ジェヒ。
仏頂面が子供の時からなのが笑えます。
彼女が癒されていくエピソードは、ドラマの人々が癒されていく過程ともシンクロしていました。

 

 

ジホ


男ばかりのむさくるしいこのドラマに華やぎをもたらしてくれたジホ。
ジェヒョクとのもどかしい友情以上、恋愛未満の過去を披露して楽しませてくれました。
誰よりもジェヒョクのことを知っているジホ。
ジホとジェヒョクの馴れ初めを知ると、ジェヒョクの一途さ・不器用さが一段とわかる。
自分の人生に野球しかなかったように、ジホしかいなかったのでしょうね。
この一途さが成功する秘訣かも。
2人の思い出の歌が動物園の♪ 君を愛するよ ♪なのも、すごく素敵。この歌大好きなのです、私。

 

 

「僕の熱い唇を君の柔らかい唇に重ねられたらいいな
僕の愛が君の胸に伝わるように
今まで僕の心に気付かなかったんだね
この世界でどんな人よりも君を愛してゆくよ」

 

「応答せよ」シリーズもそうですが、「刑務所のルールブック」も懐メロの使い方が秀逸。
キム・ミンチョルの過去を描くときなんか、画面サイズも変わり古臭い映像にわざとするのも笑えてきます。
細やかなところに心を配り、丁寧に作っているのがわかるのよね。

 

 


ドラマの最後ジェヒョクコールが沸き起こったのを私は忘れない。
いつももジェヒョクが中心にいた。
不器用で、馬鹿で、一途で、頑固で、実直で、前しか見ていないジェヒョクが周囲の人間を変えていった。
どうしようもない自分だけれども、変われるかもしれないという夢を刑務所の人々に見せてくれた。
人生は不合理で、不条理で、打ちのめされたりもするけれども、それでも生きていかなくてはいけない。
そうだよね、ジェヒョク。
ありがとう、このドラマに出会えて。そう思っています。

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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