愛は分かち合うものじゃないの・・・THE K2 14話まで

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韓国ドラマ「THE K2」14話まで視聴。

 

 

パク・クァンス狩りに成功した後、自分の権力を固めるために新しい計略を進めるユジン。ユジンのサポートとクラウドナインを介してパク・クァンスの弱点を探るジェハ。一方、オム・ヘリンの死について新たな情報提供者が現れる。母の無念の死を明らかにするとともに、ユジンへの復讐のカードを握るアンナ。そしてアンナを利用するヨンウォン。ジェハはアンナがヨンウォンに操られていくことに危惧を抱き、ユジンへの復讐にストップをかけようとする。アンナとヨンウォンは世論を操作し、ついにユジンは警察に召喚される。(12話)

オム・ヘリン他殺疑惑の中心に立つユジンは取調室で情報提供者に対面する。表れる真実に驚愕する世論。一方、韓国の政財界すべての不正が結集されたクマルゲートの資料を大統領の息子が所持しているとジェハは知る。大統領の息子の監視を始めるが、JSS、青瓦台、パク・クァンスの手先(警察)と三つ巴の闘いが始まる。(13話)

狙撃され重体になったジェハをかくまうJSS、警察・検察を総動員してJSSの家宅捜索を推し進めるパク・クァンス。ジェハの目覚めを待ちながら、パク・クァンスに反撃するユジン。両陣営の熾烈な知略闘争を見守る韓国のコンソーシアムの権力者たち。不正の証拠が集められたUSBをめぐって争奪戦に加わるソンウォン。さらに加速する混乱と危機。ユジンに脅迫されジェハのために韓国を出ていく決意をするアンナは、ジェハとの約束を思い出す。(14話)

 

これは、これは、確信犯的なドラマですね。「THE K2」の脚本家チャン・ヒョクリンの前作は「ヨンパリ」
「ヨンパリ」がSleeping Beautyのお話だったのならば「THE K2」はSnow Whiteの物語。「THE K2」は「ヨンパリ」の変奏曲なのね。
構成が驚くほど相似形。
財閥の兄妹の争いが「ヨンパリ」ならば「THE K2」は姉弟の闘い。財閥の空っぽな王座を求めての不毛な争奪戦。
ヒーローのエンプティーネストシンドロームを強烈に刺激するヒロイン。それに伴う共依存の関係。
「ヨンパリ」の時も感じましたが、脚本家チャン・ヒョクリンはロマンスが描きたいのではない。
この世界には愛してはいけない相手、愛しようがない相手を愛してしまった悲劇を描きたいのだし、愛だの恋だのに頼らない自分と世界との戦いを描きたい脚本家なのだ。
俳優が毎回美男美女がキャスティングされるので視聴者は甘いロマンスだと誤解するのだが、どうしてどうして。
自分を受け入れてくれない世界に真剣に戦いを挑んでいく女の物語を描きたいのだから。
「ヨンパリ」や「THE K2」のロマンス描写はおざなりで、物足りなさを感じるけれどもそれでいいのだ。
もっともっと狂おしいほどの生きる闘いが繰り広げられているのだから。
裏切りに次ぐ裏切りで、ずっと心はひりひりしっぱなし、しびれっぱなしで視聴にはかなりの体力と気力を要しますが、とにかく面白い。

 

 

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チャンウク君が「ヒーラー」の次に同じような設定の「THE K2」を選んだのはなぜだろうかとずっと考えていた。
「ヒーラー」では表現しきれなかったものが「THE K2」にあるということだよね。それが何なのか。
もちろん「ヒーラー」よりもアクション重視のドラマだということもあるのだろうけれども、その答えを14話ラストでようやく見つけたような気がする。

 

 

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「目を覚ましたのね。ソッカンからメモリを奪ったのよね? どこにあるの?」
「あんたに渡すために奪ったわけではない」
「・・・だったら私を討つためのものだったの? ・・・そう、どうして? あなたは私の友人でしょう?」
「可哀想で泣いたことはありますか?」
「私の人生はすべて涙でまみれているわ」
「自分に対する哀れみではなく、他人に対してです。ほとんどないでしょうね。
あんたは自分の痛みにはとても敏感だけれども、他人の痛みには無頓着な人だから。しかし他人も同じように痛いんです。掃除のお婆さんも、果樹園の老人も、おばさんもミランもソンギュも、そしてラーニャも。彼らもあんたと同じように幸せになりたいんです」
「誰だって幸せになりたいと思うわ。それぞれの立場で」
「あんたはその立場を守るためにオム・ヘリンを殺したように、他人も簡単に殺せる人間だ。・・・だから俺はあんたの友人にはなれません。
あんたは友人が必要なのではなく、キム秘書のようにあんたを崇拝してくれる人や、あるいはあんたが崇拝できるような人が必要なんでしょう。若いころのチャン・セジュンのように。
悪いが、俺はそのどちらも似合いません」
「・・・私はあなたの崇拝なんて・・・望んでないわ。ただ・・・」
「ただ所有したかったんでしょう。もう一人の奴隷として」

驚くことに14話にいたっては冒頭のアクションシーンをのぞけばジェハはほとんど手術中で(回想シーンでは登場していたが)、ラストでようやく目を覚ましユジンとの対決シーン。
鳥肌がたつくらい緊迫したシーン。魔女と狼には愛だの恋だの一切そんな甘ったるい感情はない。だって喰うか喰われるかのふたりだから。所有するかされるかの息を飲むような闘い。
無残にもユジンの心をずたずたに切り裂きながらも、でも、でもジェハのまなざしは涙に濡れていて。
今にも涙がこぼれ落ちそうな、そんなまなざし。
愛でも恋でもないのに、どうしてジェハのまなざしは濡れているのか。
ユジンを切り裂きながらも、ジェハの心も引き裂かれそうで。
なぜならばユジンはもうひとりのアンナだから。
母親を失い、父親に見放され、愛した男に裏切られたもうひとりのアンナだから。

チ・チャンウクはこのまなざしを演じたかったのかもしれない。そう思う。
愛や恋よりも、もっと深い、もっと暗い、執着と断絶の、ジェハが生きていくために守りたいもの、切り捨てたいもの、そんな闘争の中でしかつながることができない複雑な関係をチャンウクは演じたかったのだ。

 

 

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アンナには悪いけれども、ユジンとジェハの濃密な関係と比較するとロマンスが色あせて見えるのは仕方がないことかもしれない。
そのくらい終盤にかけてアンナの存在が色あせてきてみえる。(下手をすればジェハだってユジンの前では色あせるかも・・・)
「愛は分かち合うものじゃない」と言っている魔女のその所有欲は決して満たされず、最後は天使が勝つのは分かっているのだけれどもね。
ロマンスだけで比較すれば「ヒーラー」のほうがトキメキ度は高いけれども、「THE K2」のロマンスをコーティングしながら生きていくための闘いの描き方のほうが胸につきささるなぁ。救いようのないユジンの生き方が胸に突き刺さる。
綺麗な女性なんだからにっこりとほほ笑んでくれれば、誰だって彼女を好きにならずにはいられないのに。
他人との関わりを恐怖で支配する術しか知らない可哀想なユジン。
簡単に人を殺す魔女という恐怖でしか、人と関わり合いになれないなんてユジンは誰よりも可哀想な人だと思うけれどもね。

 

 

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チェ・ユジンとチャン・セジュン。
私はチャン・セジュンが本当にチェ・ユジンから逃れたいと思っているのか、疑問だったりします。
お互いに口を開けば相手の尊厳をずたずたにする言葉しかでないふたりだけれども、それでも共に歩いていこうとしているのではないかと思うのよね。
甘いかしら?
チャン・セジュンの数々の浮気は恐怖で自分を縛ろうとするユジンへのあてつけ(あるいは復讐)でしょう。でなければ大統領選に出馬する候補が致命傷となる浮気を、あそこまで繰り返さないでしょうに。大統領への野心よりもユジンへの復讐が勝っているチャン・セジュンの愛のカタチも興味深い。
結局、オム・ヘリンの死の原因は何でしょうか?
誰があの場にいたのか。魔女が語る言葉はどこまで真実なのか。

 

 

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ごめん、ジェハに関してはあまり語っていない感想だわね。
そのくらいドラマ終盤にかけてユジンの存在感が増しているドラマなのです。12話のアンナのファッションショーの意味がよく分かりませんでした。
あれはユナとチャンウク君ファンへのサービスシーン?(笑)

 

 

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 9 )

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  1. メロメロ沼の同志

    yuca様

    『旋風少女2』そして『The K2』と7月20日から続いたJCW祭が終わって、腑抜けの私です……..

    で、『The K2』もう後半になるほど、痛くて痛くて、心がひりひりしてね……ぐったりです。
    そしてアクションでぼろぼろになって、死にかけの演技をしてる彼を見て、パソ前で『もうやめてーーーー』と叫ぶ私
    本当に痛いファンで恥ずかしいです。

    この脚本家さん、ユジンの部分しかきちんと脚本書いてないと思います。
    今日のドラマ後のJCW君のインタビューで分かりました。
    ジェハについては脚本家からディテールがなく、自分でほとんど作り上げたと言われていました。
    『The K2』なのに、ジェハの物語に広がりがない&台詞が少ないことから途中で分かりましたけどね。
    あのブランケットのキスシーンも、現場でリハーサルをしてアドリブで撮影したそうです。
    ジェハはカメラには愛されていましたけれど、脚本家には愛されていなかったかもです…….。

    yuca様が言われるように、脚本家が描きたかったのは
    >財閥の空っぽな王座を求めての不毛な争奪戦
    後半になるほど、それが顕著になりましたね。 

    >愛や恋よりも、もっと深い、もっと暗い、執着と断絶の、ジェハが生きていくために守りたいもの、切り捨てたいもの、そんな闘争の中でしかつながることができない複雑な関係をチャンウクは演じたかったのだ
    そうだと思います。もっとそういう部分を脚本で広げて欲しかったんですけれどね。
    結局はアクションだけになったと彼も言われています。

    私は、最初にクラウド9でジェハと会話をしたようなはかっこいいユジンが大好きなので、
    クラウド9内でのジェハとユジンの遣り取りは、痺れる位に素敵です。
    だから、最後まで敬意を表して彼女には同情しません。
    >『愛は分かち合うものじゃないの』
    これは少女の気持ちのまま大人になってしまった女の言葉ですね。
    大人の女は、独占欲が自分の身を滅ぼすことを知っていますから、ユジンの不幸はそこにあるのでしょう。

    >結局、オム・ヘリンの死の原因は何でしょうか? 誰があの場にいたのか。魔女が語る言葉はどこまで真実なのか。
    あっ!病院での某との遣り取りでそうかな?と思っていたので……
    この物語はユジンとアンナ、それぞれの父娘の関係もベースになっているのでしょうね。
    だから最終話のアンナの言葉に納得です!

    感想じゃなく、愚痴になっちゃいましたが、
    でも『Healer』ではまだ男の子の香りが残っていましたが、『The K2』ですっかり男の匂いを纏った彼に
    ますますメロメロです。
    タイムリミットまで、ロコをしたいと言われていましたが……..さて
    実現すれば、ファンは嬉しいのですけれどね!

  2. メロメロ沼の同志

    yuca様

    >12話のアンナのファッションショーの意味がよく分かりませんでした。あれはユナとチャンウク君ファンへのサービスシーン?(笑)
    あれは、後々携帯でアンナとユジンがドレスアップジェハを携帯で眺めるためだけのシーンです。(爆)

    まあ、重量級のユジンの演技ばかり見ていると疲れるんですよ。ちょっとした箸休めかもです。
    ドラマはライトな視聴者もいますしね。視聴率はこのライトな視聴者に左右されることが多いですから……..

    あと、ユジン弟の卑劣さを視聴者に明らかにするため? まあ、ユジン弟は登場シーンから臭かったですけれどね!

  3. yuca

    同志さま、コメントありがとうございます♪

    終わっちゃったよう・・・9月から本当に楽しかった!
    >『The K2』もう後半になるほど、痛くて痛くて、心がひりひりしてね……ぐったりです。
    ぐったりです。頭がぐるぐるしすぎちゃって。
    このドラマはね、マニアックですね。「ヒーラー」は一般受けするけれども「THE K2」はちょっと竜頭蛇尾なところがあります。
    何よりも主役が途中から交代していたという、オソロシイドラマ。
    チャンウク君の使い方としてはもったいないなぁとも思います。彼の魅力を生かしきれていない。そういう意味では少しばかり憤りを感じます。
    アクションだけさせとけばいいだろう、みたいな使い方ね。

    でも、でも、このドラマ、そういう欠点も含めて、好きなのはユジンの哀しさだろうなぁ。
    アクションだけではなくもっとジェハとユジンのシーンを見たかった。アンナのシーンを削ってでも(ファンに怒られるかな?)
    愛ではない、だけれども真剣に互いのことを想っているユジンとジェハにノックアウト。
    ラスト、ジェハがあそこまで走り抜けたのはアンナを助けるということもあったのだろうけれども
    ユジンを深い森から救い出したかったのでしょうね。

    この物語を語るとユジンの感想になってしまいますね、オソロシイドラマだわ。
    チャンウク君が演技負けしたということではなく、確信犯的にユジンが真のヒロインだったということですから。プロットを見ても、OSTタイトルを見てもわかる。
    ソン・ユナと演技ができて、チャンウク君はまた一皮むけたのじゃないでしょうか。
    アクションはキレキレで素晴らしかった。ジェハは言葉よりも、闘うことで気持ちを語るキャラクターですから。

    2月にはという記事を読みました。
    ロコもいいけれども、ユジンみたいな悲しい役も見てみたいなぁ。

  4. yuca

    同志さま、どもども~♪

    >後々携帯でアンナとユジンがドレスアップジェハを携帯で眺めるためだけのシーンです。(爆)
    やっぱり!(爆)
    チャンウク君が前髪をあげたのでドキドキしましたが。
    しかしあのスマホの写真、もっと格好いい写真あるだろうに・・・と思いました。

    ユジン弟! あの卑劣さ。しびれますね!
    ユジンが高潔に見える~

    サブウェイとかの無理くり広告もしらけます。せっかくいいドラマ(私基準・笑)なのに・・・
    ライトな演出はいりません。
    ずっとクラウドナインでユジンとジェハが語り合ってくれればいいのに・・・

  5. yuca

    鍵コメさま、コメントありがとうございます。

    竜頭蛇尾と思われた方がやっぱりいらしゃったのね。1話のクオリティと最終話は明らかに違いますもの。
    クラウドナインという箱を設定してしまったから、世界が広がらなくなりましたね。
    誰もが欲しがる鏡ならば、世界中どこにいても使えるのじゃないかしらと思うのです。ネットワークを使ってね。
    あえてクラウドナインにこだわらずとも。

    回を重ねるごとに設定がしょぼく感じてきました。JSSもジェハ以外は弱っちいし。
    突っ込みどころにいちいち文句を言っていてもきりがないのですが、世界観が張りぼてなのが致命傷です。

    それでもこのドラマの不思議なところは、張りぼての世界観に役者の演技で魅力を吹き込んでいるというところ。
    ユジンとジェハは圧巻。ソンウォンとセジュンもいい。
    評価をつけるのが難しいドラマです。

  6. メロメロ沼の同志

    yuca様

    イラクのクマールゲートの全貌を何一つ開かすことなく
    大統領を含めた政財界の関わりをまで示唆したのにね……..
    USB一つで済ますのかい!!(怒)いやまあ、隣国、そんな感じですけれどね…….

    だけど、俳優陣の熱演がそれを凌駕しちゃうドラマ…….
    >ユジンとジェハは圧巻。ソンウォンとセジュンもいい
    最後のソンウォンのいかれっぷりとセジョンの男前っぷり よかったですよね。
    それまで作品を引っ張ってきたジェハとユジンは勿論です。
    うふふふっ、私は密かにジェハとアンナの組み合わせ、嫌いじゃなかったですよ。
    だって、綺麗なんだもん!若いていいな。瑞々しいて素晴らしいと思えました。

  7. メロメロ沼の同志

    yuca様

    何だかんだと脚本に文句はつけましたが、
    映像はとても私好みだし、童話をモチーフにした台詞回しも好きですし
    ユジンのひりひりと痛い愛も決して嫌いじゃないです。
    JCW君のアクションは文句のつけようがなかったし、俳優陣のガチンコ演技対決も素晴らしかった。
    あらっ、もしかして『The K2』私的評価高いかも?(笑)

  8. yuca

    同志さま、コメントありがとうございます♪

    「THE K2」突っ込みどころは満載だけれども、考察すればするほど味わい深いドラマです。

    >いやまあ、隣国、そんな感じですけれどね…….
    うん、連日の報道を見ているとあり得るかもと思わせてくれるかの国です。

    >私は密かにジェハとアンナの組み合わせ、嫌いじゃなかったですよ。
    私も嫌いじゃないんです。
    しかしまあ、あのユジンの前では影が薄れるよね~ 年季が違います。
    ビジュアル的にはよかったのにね。
    アンナとユジンは合わせ鏡でしたものね。そこら辺をもう少し語るとよかったのにね。

  9. yuca

    同志さま、どもども~♪

    大好きですよ!16話はおいおい泣いていましたし。
    評価も高いドラマです!かなりマニアック受けするドラマかもしれませんね。

    しかしチャンウク君、ヌナとの共演のほうが悲壮感が漂って壮絶カッコいいと思うのは、年上の私の願望が入っている?
    同世代の女優さんとの絡みは、何気に気弱な感じが漂いませんか?
    最後、アンナに振り回されているし・・・パク・ドンス君を思い出しました(笑)