A Deeper・・・イニョプの道6話まで

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韓国ドラマ「イニョプの道」6話まで視聴。

 

原題「下女たち」が「イニョプの道」に変更されて、原題が持っている力強さや毒が薄れてきたようなタイトルになっちゃってますね。
「イニョプの道」なんて「細腕繁盛記」や「おしん」みたいな(比較が古ッ!)イメージを持っちゃいそうですけれども、もっともっと底抜けに暗い毒をはらんでいますけれどもねこのドラマ。
公式サイトでは「チャングム」や「トンイ」に続くヒロインと銘打たれていますが、あいにく私はこの2作は未視聴。
両班から奴婢の身分に転落してしまうヒロインなんて「ベン・ハー」(またもや比較が古ッ!)の女性版のような気もします。
「イニョプの道」はずっと視聴したかったドラマのひとつで、絶対面白いはずだと私の最近かなり感度が鈍くなっているセンサーでも反応していたくらいですから。

 

 

しかしですねカミングアウトするとですね、ヒロインのチョン・ユミは「ケ・セラ・セラ」や「恋愛の発見」のチョン・ユミだとず~っと思っていました。
2話まで視聴しても、いつチョン・ユミが登場してくるのだろうと思っていました。
タイトルロールの女優さんがチョン・ユミだと知った時の衝撃(笑)
もうひとりのチョン・ユミがヒロインなのね。
まだまだ韓国ドラマではあまちゃんな私です。
リトルプレスなど発行して中級者になったのかもと思ってみたけれども、ただの悪役スキーのちょっとマニアックな初心者だということが露呈しました。

 

 

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さてあらすじは。
【ストーリー】
両班から奴婢の身分に転落してしまうヒロイン、イニョプ(チョン・ユミ)、王の庶子であることを知らず奴婢として生きるムミョン(オ・ジホ)、 イニョプの婚約者だった名家の御曹司ウンギ(キム・ドンウク)、イニョプの親友でありながら、密かに嫉妬の炎を燃やすユノク(イ・シア)。この4人の恋愛模様を中心に、 厳しい身分制度を乗り越え力強く生きるヒロインの姿を描く。

 

 

 

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靴がなければ自分の駕籠まで絹の布を敷き詰めさせるというほどの高慢な両班の娘イニョプがヒロイン。
彼女が高慢であればある程、その後の転落が痛く胸に響きます。
彼女の高慢さや絢爛さは両班である父の後ろ盾があるからこそ。後ろ盾を失う(父が失脚してしまう)ことへの恐怖が、イニョプをさらなる高慢に走らせます。
彼女のアイデンティティは両班の娘である。高貴な身分であるということだけで。
父が陰謀により失脚させられると彼女には何も残っていないのです。プライドすら。
2話から4話にかけての彼女の転落ぶりは痛々しい。
死を選ぶのだって当然だというような、みじめな、プライドを踏みにじられて生きる希望すら失われて、それでも身体は生きているという絶望。
どれだけ悲嘆にくれても、お腹はすくのです。豚のえさの残飯をむさぼり食らう姿は、ただただ言葉が出ず「生きる」という事を見せてくれます。
彼女は絶望して池に身を投げるのですが、死ぬことは許されない。
深く、深く、池に沈みこんでいく彼女はムミョン(オ・ジホ)によって助けられてしまいます。
深く、深く、池に沈みこむことと比例するかのように彼女の身分も深く、深く、下層に堕ちていくのです。
人間とはみなされない奴婢という身分に。

 

 

 

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オ・ジホって苦手なのですけれども。「ファンカ」は好きだったけれども。
このムミョンって役はいいですね。下男でありながら、ただの下男ではなくどうやら秘密結社の幹部らしい。
身分は低いけれども卑屈ではない。
おそらくこの時代の身分制度に憤りを感じ、彼なりの理想を抱えて画策しているのだろうけれども決して理想ばかり追うロマンチストでもなく非情なリアリストでもあります。
高慢な娘イニョプの転落をはたからつぶさに見ながら、他の人間のように彼女の転落を痛快には思っておらずむしろどこか痛ましく思っている。しかし余計な憐憫をかけない。
例え奴婢という身分にイニョプが落ちようとも、彼女に対する態度は両班の時と何ら変わりはありません。
媚もふらず、蔑みもせず、淡々と接している。
見せかけの身分などに惑わされずに、ただイニョプをひとりの人間として見ているのです。
だからこそ彼女がどんな境遇に堕ちても生きていて欲しい。
人間だから。人らしく生きてほしい。
ムミョンはこのドラマのテーマを体現しているようなヒーローです。
謎が多く、影も多いムミョンはその生き方の真摯さで私を惹きつける。

 

 

 

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もう一人のヒーローはウンギ。イニョプの婚約者であり、イニョプの父の失脚により彼女と仲を引き裂かれてしまう。
頭脳明晰、勇敢な良家の子息であるウンギの変貌していくさまも「イニョプの道」の見どころのひとつでしょうか。
下女になったイニョプを救おうともがくのに、空回りしてばかり。
キラキラと輝いていたウンギの瞳がいつしか空虚に満ちていくのを見ると胸が痛む。
両班という身分を持っていてさえも手に入らない、どうにもならないことがあるのだとウンギは気づいていきます。
むしろ両班だからこそ自分の感情だけで結婚はできない。家と家との結びつきに縛られていくのです。
結婚が主人によって決められる奴婢となんら変わりはないのよね。
自分の人生を選びとることができない両班と奴婢は、身分は天と地ほどの開きはありながら実は非常に人間の生き方として飼いならされた息苦しいものであることがウンギを通して分かってくる。

 

 

 

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6話まで視聴して実はイニョプはウンギのことをオラボニとして慕ってはいたけれども、男として好きだったのかと私は疑問に思っています。
決して間違ってはいけない瞬間というものが愛にはあって、そのタイミングを逃してしまうと愛は逃げ去ってしまうものなのね。
いつもそれは後になって分かるのだけれどもね。
ウンギはあの瞬間、イニョプを躊躇わずに選ばなければいけなかったのに。
愛と奴婢に自分もなることの両極の選択を示された時に彼は愛を捨てたのです。
いくら彼が後悔をしてイニョプに駆け落ちしようと掻き口説こうともイニョプはウンギが愛を捨てた瞬間を目撃しちゃったからね。
ましてや結婚できないと知るとウンギはイニョプに側女になれと提案します。
プライドの高いイニョプが応じるわけないのにね。
イニョプは、プライドまでずたずたにされた彼女が、今生きている唯一の理由は父親の敵を討つということでありウンギの愛は彼女にとっては終わったものなのじゃないかしら。

 

 

 

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イニョプのかつての友であり、そして今の主人であるユノク。
イニョプを自分の下女にするなんて悪趣味の極みだと思います。
いつも競争では負けていたイニョプに対する仄暗い復讐と悪意に満ちた彼女は、その気持ちが翻って自分の愛もこなごなにうち砕くことを知らないのでしょうか。
ウンギを手に入れたことをイニョプに見せつけたいのに、実は自分の気持ちも斬り裂いているのにね。
痛々しい人です。憎々しい人だけれどもね。

 

 

 

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登場人物は多いけれども、皆、きちんとキャラクターが立っていてそれぞれの喜びや悲しみを抱いている。
展開が早いジェットコースター時代劇の「イニョプの道」
誰が悪役で、誰が愛を得て、そして人間らしく生きるってどういうことなのかを教えてくれそうです。

 

 

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 11 )

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  1. 守百香廃人

    yucaさん こんばんは。
    またまた登場してゴメンナサイ。
    いつもながら明快な文章 視聴していない私でも何となく場面が想像できそうな位です。
    >ただの悪役スキーのちょっとマニアックな初心者  そんなことを言われたら私なんか分かる俳優さんなんて数えるほど。イニョプのチョン・ユミは結構史劇に出演しているのでわかりますが、yucaさんご存知のチョンユミはわかりませんもの。
    視聴していない私のアンテナはムミョンという名に反応。ファンジニの用心棒(彼女は妓生という身分なのでこの表現に)がムミョン(多分 無名 と書いたような)。本当は高官の息子でありながら、父が親友であるチョガンジョを追い詰めたことに憤り、家を出てさすらい人の様に生きていて今はファンジニの傍に仕えている。その彼を思い出しました。オ・ジホのムミョンが楽しみになりました。
    チャングム,トンイ どちらもスタートは白丁?という賤民の出で上昇志向的ドラマ。ただ、チャングムは母の敵を討つし、トンイは父や兄の無実を晴らす(ちょっと乱暴な切り方でスミマセン)点は共通かもしれませんね。イニョプの高慢さはなく、明るく健気なヒロイン(イビョンフン監督の好みかなぁ)。イニョプの方が現実的かもしれません。
    続きを楽しみにしています。

  2. 守百香廃人

    yucaさん こんばんは。
    コメントを読ませて頂いて期待は高まるばかりですがBSでの放送を待ちます。
    私の見どころは
    アン・ネサンが演じる太宗 李芳遠です。
    過去に龍の涙ではユ・ドングン 大王世宗ではキム・ヨンチョルが演じたのですが、どんな芳遠を見せてくれるのか。太陽を抱く月の王様がお気に入り。もう一度アンネサンの王様を見てみたいと思っていたので期待は高まります。ドラマではちょっと頼りなく、成均館スキャンダルの学者はまじめだし、やはり王様が一番(ちょっと斜めで皮肉があって)。
    次はムミョン 同じ名前の役がファン・ジニにも登場します。どちらも本当の身分を隠していて翳があって魅かれるキャラクター 比較しながら見るのも楽しそうです。
    イニョプの父上はソルォン公だったのですね。登場話数は少なそうですけど出演されていてうれしいです。
    次のイニョプのコメントを楽しみにしています。

  3. 酷暑お見舞いの・FANです。

    また、濃そうなドラマを・・・猛暑の最中、ご覧になっておられますのね・・。(私は勿論、未視聴です)熱中症に、お気を付け下さいませ。

    順調(純情)に惚れる、あちらのお部屋も、無事に締結なさったご様子。(これも、未視聴)
    こちらのご新居開設と共に、重ねてお祝い申し上げます。

    うわぁ、原題「下女たち」・・ですか・・。情け容赦なくドロドロ度数が伺えます。が、俄然、見たい・・だって、貴女様のお墨付きの文言が。

    @もっともっと底抜けに暗い毒をはらんでいます・・
    更に、上記の比較に、細腕、おしん・・。そして、転落していく比較の対照がベン・ハー・・。

    どんな覚悟で以て、視聴したらいいんだろうか・・。

    ※ベン・ハーあの映画を見ると約一週間、メッサラという名前を思い出すだけで、腹が立ちます。← つまり、大好物なのね?ハイ。

    このドラマはユカさんのスベクヒャン・K点を越えるだろうか・・あ、違う、ミセンかな?ま、いいや。

    少なくとも、NHKが輸入する韓ドラ時代劇よりは、面白いかと存じます。

    ※チンム公のお姉さま、お疲れ様でした。最終回も年齢不詳でお元気でした。60年近い歳月を感じさせる台本の割には・・。

    あのドラマは、何処をターゲットに輸入したのだろう?江戸を斬る?まさかの水戸様のお銀?狙いなのだろうか・・。

  4. ひめか

    4話までですが、観ていますよ~~
    面白いですね!

    そうそう、チョン・ユミさんは二人いるんですよ。私はこの方のドラマも見たことがあったので、こっちのチョン・ユミさんだ、って感じでした。(笑)

    確かにタイトルによってイメージが全然違いますね。ただ下女たちは、さすがにドラマタイトルとして、観たいと思うかどうかという。(笑)でも「イニョプの道」というタイトルは、うん、なんだかイ・ビョンフン監督のドラマのようですね。(笑)

  5. yuca

    守百香廃人さん、コメントありがとうございます♪

    す、すみません遅レスで!

    >ムミョン(多分 無名 と書いたような)
    「イニョプの道」のムミョンもまさに書かれたような境遇です!さすが先見の明をお持ちで!
    ムミョンという名前自体が、実は何も持っていない人間を意味しながら(名前を持っていない人間)、裏を返せばこの世界でのオールマイティな役割をふられているのかもしれませんね。
    イニョプは明るくけなげなヒロインというよりも、高慢な娘が最下層な生活に陥れられます。
    彼女が持つプライドはなんとも下層の生活では目障りで、では「人間らしく生きていく」とはどういうことなのか?
    それを視聴者にも問いかけているそんなドラマかな。

    プライドなんか通用しないと知ったイニョプは静謐になり、まるで台風の目のような存在になっていきます。
    彼女のその静けさこそが、周囲の磁場を狂わしていく感じ。
    上手く言えないですけれども。
    面白いですよ。

  6. yuca

    鍵コメさま、コメントありがとうございます♪

    「イニョプの道」面白いですよね~
    トキメキは皆無なのですけれども、ジェットコースター的な展開に目が釘付け。
    9話~10話なんか種付けって露骨に言うのもびっくり。
    これでトキメキがあれば最高なのにね。
    ムミョンがもう少し私好みだったら、言うことないのに。

    イニョプがトンイと違って明るくけなげではないところも気にいっています。
    下女になっても自分勝手に男子たちを振り回している(笑)

    しかし、「ヒーラー」2話続けて放送なんて大盤振る舞いをしている衛星劇場がよくわかりません。
    「高校世渡王」や「Mr.Back」なんて週1話放送なのに・・・
    「ヒーラー」の方が面白いのにね。

  7. yuca

    守百香廃人さん、どもども~♪

    「スベクヒャン」にはかないませんが、「イニョプ」面白く視聴しています。
    >どちらも本当の身分を隠していて翳があって魅かれるキャラクター 比較しながら見るのも楽しそうです。
    いやあ、本当に鋭い。
    「イニョプ」のムミョンも出生の秘密があるみたいです。

    「スベクヒャン」は清らかなイメージなのですが、「イニョプ」は下女という身分が性の奴隷でもあるみたいな描かれ方が斬新に思えます。
    ドラマではなかなかそういう点に触れたことがない気がします。

    そうそう、チョ・ヒョンジェが「ヨンパリ」という最新のドラマで悪役を演じています。
    ミョンノンの妙に酷薄な時の表情で演じているので、ちょっとトキメキ。
    スベクヒャンの時よりも顔の疲れがとれて、シャープな印象でいい感じですよ。

  8. yuca

    FANさん、どもども~♪

    祝★奇皇后完走ですよね!1年もよく付き合われたと思います。私は短期集中で見ましたのでねあのドラマは。
    チンム公の姉は最新ドラマ「君を愛した時間」で超ぶりっ子な役を演じています。
    吐くかと思ったくらいにぶりぶりのかまとと。
    どうしてそういうドラマを選ぶのかよく分かりません。それを想うとまだ「奇皇后」の方が似合っていた。

    「下女たち」、面白いです。
    下女という身分が性の奴隷でもあることを匂わせていて、そういうドラマはなかなか見ないのでどきどきしています。
    結局ヒロインは毎回貞操の危機は救われるのだけれどもね。

  9. yuca

    ひめかさん、どもども~♪

    >チョン・ユミさんは二人いるんですよ
    話には聞いていたのですが私はこちらのチョン・ユミさんは初めてでしたので、分らなかった(爆)

    「下女たち」はどろどろ感があるタイトルですものね。
    何気に気になっているのが、「史実に基づいたドラマです」とキャプションがあること。
    イニョプが実在の人物だったということなのかしら?

  10. 匿名

    久々に 韓ドラ見たくなり 大河ドラマ借りたけど 私には 面白いけど ウンギとの結末が 残念でならないドラマでした

  11. yuca

    匿名さま、コメントありがとうございます♪

    「イニョプ」はしりすぼみのドラマでしたよね。出だしはいい感じだったのに。

    大河ドラマの怒涛の展開に酔いしれたいのに、なかなかそんなドラマに巡り合えないよね。