ああ、私の幽霊さま

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ああ、私の幽霊さま Oh My Ghostess 全16話 (2015年 韓国tvN)

■演出:ユ・ジェウォン
■脚本:ヤン・ヒスン、ヤン・ソユン
■キャスト:
チョ・ジョンソク(カン・ソヌ)
パク・ボヨン(ナ・ボンソン)
キム・スルギ(シン・スネ)
イム・ジュファン(チェ・ソンジェ)

【あらすじ】
幽霊が見えるという秘密を持ったボンソン(パク・ボヨン)は、人気レストランのキッチンで調理補助として働く女の子。内気で自分に自信が持てず、片思い中のカリスマシェフのソヌ(チョ・ジョンソク)にも想いを伝えられずにいた。一方、恋もできずに幽霊となったスネ(キム・スルギ)は、セクシーな女性に憑依しながら現世をさまよい続けている。3年以内に男性と一夜を過ごさなければ、悪鬼になるという運命に焦るスネ。しかし、スネとキスをした男性たちは全員、低体温症で病院に運ばれてしまう。
ある日、自分を追う巫女から逃げていたスネは、あわてて憑依したボンソンの体から出られなくなる。レストランの同僚たちは、急に活発で明るい性格に変わったボンソンにビックリ!そんな中、ソヌはスネが憑依したボンソンにうっかりキスをしてしまう。ソヌが低体温症にかからなかったことに気づいたスネは、探し求めていた男性に出会えたことに大喜び。ソヌは積極的なボンソンに戸惑いつつも惹かれ始めるが、間の悪いことにスネはボンソンの体から抜け出てしまう。引っ込み思案な性格に戻ったボンソンは、恋を成就させるため、スネに協力を求めるが…!?


 

2015年度の韓国ロマコメドラマでは高評価のドラマ「ああ、私の幽霊さま」
なんともかあいらしいドラマのデコレーションを剥ぐとなんともビターな肌触りも感じたりしています。
「オオカミ少年」でノスタルジックで優しく、柔らかな少女を演じたパク・ボヨンちゃんがやっぱりこのドラマでもかあいらしい。
内気で自分にこれっぽちも自信がないナ・ボンソン、スネに取りつかれた陽気でコケティッシュなナ・ボンソン、そして自分に自信を持つことで、ありのままの自分を受け入れ自分の進路を決めていくナ・ボンソンと3種類のナ・ボンソンを見事に演じ切りました。
うまいなぁ~。このドラマはナ・ボンソンの成長物語でしたものね。
いえ、シン・スネと知り合うことで登場人物たちが自分の心を取り戻していく物語とでも言うのかしら。
幽霊に心を教えてもらうという、本当の自分の姿、自分のあり方を教えてもらうという、一ひねりしたドラマでもあります。
人気があるドラマなのがわかります。

 

 

 

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ボンとスネの友情がよくってね。この世界で初めて自分の理解者を得た少女たちの喜び。
この友情が根底に流れていたので、終盤陰鬱な展開になっても、決してダークにはならない希望が感じられる展開で、視聴していながら私も救われたのだと思います。
幽霊を見てしまう自分、幽霊である自分、互いの立場を受け入れ認めてくれる友情があるからこそ彼女たちは救われたのでしょうね。そして自分の進むべき道を見つけるわけです。

 

 

 

 

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10話くらいまでは奇妙な三角関係が進んでいきます。
序盤はボン/スネに振り回されるツンデレシェフのオロオロさを愛おしく思いながら視聴しておりましたが、ふと立ち止まって考えてみる。
シェフはボンとスネのどちらが好きなのだろうかと。
この設定は「49日」のカン・ミノ(ペ・スビン)が好きなのは、ソン・イギョン(イ・ヨウォン)なのか憑依したシン・ジヒョンなのかという構成と全く同じです。
「ああ、私の幽霊さま」はロマコメなのでその展開をユーモラスにキュートに展開していくのですが、問いかけていることは同じ。
いったい彼は誰を好きになったのだろうか、と。
「49日」というドラマを非常に私は愛しているのですが、ひとつにはカン・ミノという悪役を愛したからです。カン・ミノが恋に落ちたのは、「つまらない」とバカにしていたジヒョンの魂なのよね。
「単純」だからこそカン・ミノの裏の顔を知ったイギョン(ジヒョンに憑依されている)はずけずけと彼にモノを言う。
そんな彼女に、カン・ミノは惹かれる。報われないのですよ、自分が足蹴にした女性ジヒョンに恋をするなんて。
もうカン・ミノは複雑で屈折していて、そんなところが私は彼がとっても不憫なのです。彼のいびつな「初恋」の終着点がどこなのかを楽しんだドラマです。

 

一方、「ああ、私の幽霊さま」もこの問題にシェフは突き当ります。
僕はいったい誰を好きになったのだろうか、と。

 

 

 

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シェフの中では自信喪失していたボンソンがかつて少年時代の弱気な自分に重なり、だからこそ気になって目が離せなかったという風に結論づけたみたいですが。
本当にそうなのか。
コケティッシュなボン/スネにたじたじになりながらも、振り回されオロオロしているシェフは、それはそれは幸せそうでした。
ボン/スネに恋をしていたのだと思うのだけれどもね。
そこら辺がもやもやしながらも、物語は終盤急展開を迎えるわけです。
そこからの構成も上手い。
本当にどちらが好きだったのかということを突き詰めずに、二股疑惑(笑)よりさらに深刻な出来事を持ってくることで、シェフもボンも、そして視聴者たちですらこの奇妙な三角関係をとりあえず忘れてしまうのですから。
上手いなぁ。

 

 

 

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単なるロマコメではなく、1話からずっとこのドラマの奥底には人間の悪意が流れていました。
だからこそどんなにベタ甘なメロメロ展開になろうとも、どこかにしんとした恐怖感があったのだと思います。
そういう意味では確かに、幽霊モノは怖い物語なのです。夏の怪談なのですものね。
本当に怖いのは幽霊ではなく、生きている人間だという。
ソンジェがこのドラマのすべての闇を引き受けて、そして自分の中に閉じ込めて、全てを忘れてさりました。
悪霊が憑依したサイコパスだったのですが全ては悪霊のせいではなく、ソンジェがもともと持っている資質であるということも切ない。
彼の生い立ちを考えるとね。彼がそうなる理由も分かってしまって、切ない。
ソンジェはソンジェなりに愛を求めていたのです、例え悪霊に憑依されていたとしても。
だからこそ養父母を殺せなかったし、ウニの自殺を止めさせて、そして自分の中に悪霊を閉じ込めて忘れ去ったのです、すべてを。
ソンジェのことを考えると、奇妙な三角関係など吹っ飛んでしまいます。
シェフが最初好きになったのはボンなのかとか、ボン/スネに恋をしたのかとか、躁鬱状態のボンソンのアップダウンにメロメロになったとか。
細かいことなどどうでもよくって、ただただ、ナ・ボンソンという存在を愛しているんだ。
そんなシンプルな事実に、胸がそっと癒されるのです。
君がここにいるだけで、僕は幸せなんだという事実に、誰かを愛することで救われていくことに、なんだかほっとします。

 

 

 

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サンの仲間たちも大好き~
でもやっぱりシェフが好き。ツンデレでメロメロでオロオロで泣き虫なシェフ。
男の涙はにはやっぱり、弱いのです私たちは。
「キング~Two Hearts」で大好きになったチョ・ジョンソク。
シギョン役以降、少し伸び悩んでいた(←上から目線な私・笑)チョ・ジョンソクですが、「ああ、私の幽霊さま」のヒーロー役は久しぶりの当たり役ではないでしょうか。
彼の新しい魅力がいかんなく発揮されていました。何よりも、パク・ボヨンちゃんとのケミがよい。
「ボン、こんなに小さくてかわいい」と言っているシェフのまなざしが本当に愛おしそうで、大切そうで、胸キュン。

 

 

★★★★

 

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

  • コメント ( 6 )

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  1. momo

    かわえ~でしたね。

    シェフのTシャツも、一ひねりしていたのでしょうか。
    16話で、ストーカーの子どもに愚痴っているときは「KID」で笑ってしまいました。

    チョ・ジョンソクの御曹司は想像できませんが、映画「僕の愛・僕の花嫁」で、174センチっていってるけど170センチだと新妻に言われているシーンがあり、映画館内でさざ波のように笑いが生じました。

    「彼女はきれいだった」の一話で、カーペンターズはやっぱり流れませんでした。有料チャンネルのやる気がみたかったです。

  2. yuca

    momoさん、コメントありがとうございます♪

    カワユイよね~

    >映画館内でさざ波のように笑いが生じました。
    相手役のボヨンちゃんが小柄だったのでシェフが大きく見える(笑)
    小柄なヒロインが本当にかわゆくって、シェフが「ちっちゃくってカワユイな」というのがまたまた愛らしかった。
    カワユサを堪能出来たドラマです。

    >「彼女はきれいだった」の一話で、カーペンターズはやっぱり流れませんでした。
    むむむ。ドラマのきもなのにね。
    著作権と言う名を出せば、本気を出さなくていいと思っている有料チャンネル、DVD制作元め。
    今視聴している「応答せよ1988」もものすごく画像や曲、韓国の懐メロだけではなく「フットルース」や「トップガン」のヒット曲なども使用しているので改変されるのではないかと心配です。

  3. ゆま

    「黄金の帝国」と似たような感想になりますが…

    結局、生きていくってことはシルヴァスタインの「僕を探しに」なんだなと。

    過去の自分をボンソンに重ねていたシェフ、人生に悔いがあったスネ、幽霊が見えることで人との距離を持っていたボンソン…

    >本当に怖いのは幽霊ではなく、生きている人間
    ソンジェ(の悪鬼)は確かに怖かったけど、実はこのことを体現していたのは他ならぬ主役3人なのでは。

    だからこその
    >君がここにいるだけで、僕は幸せなんだ
    シェフとボンソン、スネとボンソン、スネとシェフのみならず、厨房のF4がいるシェフとボンソン、とりとめない話をする時間が大切な霊媒師オンニとシェフ母、ご飯の心配をしてくれる(韓ドラでは大事ですよね)霊媒師オンニがいるスネ、そして最後の砦(だと思っていたので終盤は驚きましたが)であるウニがそばにいるソンジェ…

    このドラマの主役はスネなんだと思います。なんたって純愛ですもの。私欲なんてものを取り去ったシンプルなただただ相手を思う愛。

    そのスネが序盤に「やれば成仏できる」と男性を追い回していたこと、そしてこのドラマのベストシーンだと思うスネとボンソンが手をつないだ後姿、ここに私欲がいっぱいだったことが、またこのドラマとしての面白さだったと思います^m^

    一度書き直したのにやっぱり長文になってしまいました。スミマセン。

    あ~幽霊物としては、後半のソンジェの悪鬼本当に怖かったです^_^;

  4. yuca

    ゆまさん、コメントありがとうございます♪

    >結局、生きていくってことはシルヴァスタインの「僕を探しに」なんだなと。
    そうなんですよね、ゆまさんの意見に激しく同意!
    私たちは独りでは生きていけないから、自分の中の空洞にぴったりの人がどこかにいるかもしれないと思っていたり、いつしか空洞があっても同じように空洞がある人と一緒に走っていったりする。
    それが生きているってことですものね。
    不器用に、それでも明日に向かって転がっていく生き物です。

    なんてことない会話が大切だなって思いますよね。
    私たちは独りだけれども、決して一人ではないことを教えてくれるドラマです。
    >スネとボンソンが手をつないだ後姿
    うん、このシーンは泣けて、泣けて仕方がないです。

    >後半のソンジェの悪鬼本当に怖かったです^_^;
    ソンジェが不憫。家族の愛が欲しかっただけなのにね。

  5. yumi

    wowowで見始めたのですが続きが知りたくてずるをしてyoutubeで最後まで見ちゃいました。

    楽しかった~。

    登場人物がどの人も愛すべき人なのがよかったです。

    もちろん、いろいろ事件があるわけなんですけど
    結局、犯人さえも憎めないというか
    観た後がさわやかなのかとてもよかったです。

  6. yuca

    yumiさま

    ごぶさたしすぎてります。

    ドラマを見てかわゆいとか、楽しいとか必要ですよね。

    とにかく主役ふたりがかわゆいドラマですよね。