悲しくて泣いているんじゃない、風だよ・・・会いたい4話まで
人は、誰しも胸のどこかにぽっかり穴が開いていて、そこに風が吹くと涙が出るのかもしれない。
自分では埋められない大きな欠落を持っていて、同じように欠落を持った人と、ただ寄りそって、背中を預けて過ごすしか、風をしのげないのかもしれない。
その穴の名前は、孤独というのかもしれない。
このドラマは、いたるところで風が吹きすさび、視聴している私を苦しくさせる。
その風は、私の心の中にまで嵐を呼び起こし、視聴していると息が詰まる。
「あなた、笑って」「私の心が聞こえる?」の脚本家ムン・ヒジョンの新作「会いたい」
前2作がハートウォーミングだったので、「会いたい」もそういうドラマだと思っていた私は、1話冒頭から衝撃を受けた。
虐待、いじめ、村八分・・・ヒロインのスヨンを襲う過酷な現実。
ただそれは彼女が、犯罪者の娘というだけで、課せられた境遇。15歳の女の子が背負うには、あまりにも理不尽で不条理な現実。
冒頭から、あまりにもヘビーで息がつまりそう。
ここに描かれているのは、人間の「悪意」という本質なのか。
ムン・ヒジョンだからハートウォーミングという、私の考えは打ち砕かれたのだが、いや、果たして、本当に「ハートウォーミング」な作風だったのか。
思い返してみると「あなた、笑って」の人を人と思わない上流階級の登場人物たち。「私の心」では、弱者にカテゴライズされるであろう人々が主人公であった。
どの作品も、決して光に包まれていたわけではなく、その語り口がマイルドなために、見落としがちだけれども、階級のひずみを、人間の欲望を、闇を描いていたことに気付く。
「会いたい」では、真っ向からその深い闇を描いていくのだ。
その闇は、あまりにも深くて、血にまみれていて、思わずたじろいでしまうのだけれども。
この作品は、3話の時点で、かなり視聴者を絞るような気がする。
耐えれない人は耐えれない、なぜ、ヒロインがこんな目にあうのか、理解できないから。
初めて名前を呼ばれたスヨンはジョンウに心を開く。一途に真っ直ぐと。
少女の初恋は、深い闇によって打ち砕かれるのだが、彼女が癒されることはあるのだろうか。
そして、ジョンウはすでに、2回逃げてしまった、彼女を取り巻く闇から。
1度目は「殺人者の娘」と知った時。
2度目は・・・
彼もまた、逃げたことに罪悪感を負いながら、見失ってしまった初恋の少女スヨンを探して、生きていくしかないのだ。
15歳の少年少女に課せられた運命の、非情さにびっくりする。ドラマでここまで描いていいのかしら、と。
しかし、出てくる大人たちが、そろいもそろって、自己中心的。彼らこそ、己の罪をただして生きていかないといけないのに、その贖罪を子供たちに押しつけている。
「色欲」、「強欲」、「憂鬱」、「憤怒」、「怠惰」、「虚飾」、「傲慢」・・・全ての罪のしわ寄せが、子供たちに課せられて、あまりにも不条理で涙する。もう一人大人の登場人物がいたら、七つの大罪になるくらいだよ。
いやあ、本当にヘビーな展開です。
未来のカットが突然入ってくるのが、こんなヘビーな展開でも、先に希望がありそうで、視聴を続ける動機づけになるのかも。
もう、この時点で、私はスンホくんに、メロメロになりそうな、そんな予感を感じる。複雑屈折しているであろう孤独なヒョンジュンに。
子役の熱演が圧巻で、胸が苦しいのだけれども。
スヨンやジョンウ、ヒョンジュンの胸にぽっかりと開いた穴を、どうか癒してください。
彼らの周りに風が吹かないように。
そう願いながら、私は悲しくて、泣いてしまう。
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