毒島ゆり子のせきらら日記

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毒島ゆり子のせきらら日記 全10話 (2016年 日本 TBS)

■演出:坪井敏雄、大内舞子、村尾嘉昭
■脚本:矢島弘一
■キャスト:
前田敦子(毒島 ゆり子)
新井浩文(小津 翔太)
渡辺大知(幅 美登里)
片岡鶴太郎(黒田 田助)

【あらすじ】
あけぼの新聞文化芸能部に勤める毒島ゆり子(前田淳子)は、ある朝彼氏から別れを告げられていた。 突然の話に落ち込むゆり子・・・と思いきやすぐに別の彼氏である幅美登里(渡辺大知)に連絡をとっていた。そう、ゆり子は常に複数の男と関係を持つことを厭わない超恋愛体質女だったのだ。そんなゆり子は念願だった政治部への異動を告げられる。しかも与党・誠心党の幹事長・黒田田助(片岡鶴太郎)の番記者という、異例の大抜擢だった。ゆり子は政治部への異動、そして他の彼氏に振られたことを美登里に報告する。美登里はゆり子の二股を容認しているのだ。しかもゆり子が二股をやめられない理由も理解しているようだが・・・。ゆり子の政治部記者としての初日、国会では黒田が番記者たちを引き連れて質問攻めにあっていた。それもそのはず、「黒田が部下を引き連れて誠心党から分党するのでは?」という噂が飛び交っていたからだ。
早速キャップの安斎(近藤芳正)に連れられて黒田番としての仕事を始めるゆり子だが、なかなか他の記者の様に上手くいかない。そんな中、黒田はではなく側近の上神田(山崎銀之丞)に近づく記者がいた。あけぼの新聞のライバル社、共和新聞の小津翔太(新井浩文)だ。ゆり子の先輩記者・夏目(今藤洋子)曰く、 圧倒的なスクープを連発して、他社のみならず政治家たちからも一目置かれる存在だ。既婚者だという小津のことが気になるゆり子だが、彼女には自分に課したルールがあった。二股、三股を掛ける時は必ず相手に伝える。そして不倫はしない。自分を戒めるゆり子だったが・・・。


 

深夜の昼ドラ「毒島ゆり子のせきらら日記」
韓国ドラマの純愛主義にちょっと食傷気味だった私が久しぶりに面白いと感じるドラマに出会えた。深夜のザッピングの最中に。こういうドラマとの出会いは運命を感じるんだよなぁ。前田敦子の鼻にかかった甘ったるい声が否応もなく私をドラマに引き込む。1話はたった15分かな。それだけでこんなにも濃密で息苦しい愛の世界を描き出すなんて、深夜の昼ドラ侮れない。

 

 

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ヒロインの毒島ゆり子。なんとも一途でおろかで、あざとくって可愛らしい魅力的な女の子。ドラマでのインテリアは毎回要チェックしていますが、ゆり子のインテリアはまさに彼女の内面を表している。キッチュで雑多で、ごちゃごちゃして落ち着かなくて、散乱していて、装飾過多で、統一性がなくどこか悲しい。すさんだ悲しさではなく、ひとつのものを愛せない悲しさが彼女の部屋に表れている。まるで彼女の愛し方そのもの。願い事が成就しただるまがごろごろ。どんだけ願い事を叶えたんだろうか(笑)
山のように願い事はあっても、本当にほしいものは手に入らない、そんな女の子に見えるんだけれどもね、ゆり子ちゃんは。
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いつも思うのです。だれかを愛してしまったら、その人のことだけを考えて何も手につかなくなることってありませんか?
仕事も、プライベートも、何もかも手につかなくなる。挙句の果てに息までできなくなってくる。
自分が自分でコントロールできなくなる恐怖。
その恐怖に打ち勝つために、ゆり子は二股、三股をするのです。ひとりの人にのめり込んでしまい、自分自身がコントロールできない状態に陥る前に、複数の男と付き合うことでバランスをとるのです。
ゆり子は恋愛依存症に見えて、実は誰よりも自分という人間を愛している女の子です。
自分の心地いい環境を作り出すために複数の男が必要。部屋の中に転がっているたくさんのだるまは彼女の愛の残骸かもしれない。

 

 

 

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政治記者のゆり子の恋愛模様と、「愛と裏切り」が繰り返される政治にシンクロさせていく脚本が圧巻。
日々恋愛を繰り広げていく私たちと、日本の未来を憂えている政治家たちと、実は根本はいっしょだよねという視点が痛快。
恋愛依存のゆり子は二股、三股でないと不安で不安で仕方がなくなる。それはどこかの政党に所属していないと、政治力を発揮できない政治家みたいに。ひとつの政党だけでは飽き足らずに、あっちの政党とくっついてみたり、別れてみたり。ほらシンクロしているでしょ。
裏切りは悲しい。
白いスーツに身を包み赤いバッグを持って、颯爽とゆり子は愛と裏切りの世界を闊歩していくのね。
その生き方はうらやましくもあり、やっぱり悲しくもあり。

 

 

 

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ドラマ史上最大のゲス男、小津さん!
私は彼にどれだけ心揺さぶられたことでしょうか。愛すべきゲス男っているんですね。
白馬の王子様だけがヒーローじゃないことを教えてくれただけでも、画期的なドラマです。
武骨で、繊細で、強引で、酸いも甘いも噛みしめて、さらにその上の境地に女を連れていってくれる男です。こんな男を愛してしまったら、出会ってしまったら、自分の不運を嘆きつつ、愛の余韻に浸るしかないかもね。
小津さんのゲス男っぷりは、詳しくは語りません。ぜひドラマをご覧あれ。度肝を抜かれます。
しかし彼はこのドラマに登場する様々な男たちの中でもひときわ煌き、私たちのハートを鷲掴みにすること間違いなし。
小津さんとの恋愛でゆり子が選んだ結末は爽快、痛快。
そうこなくっちゃね!

 

 

★★★★★

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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