お昼12時のシンデレラ

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お昼12時のシンデレラ Boss & Me 全33話 (2014年中国)

 

■監督:リウ・ジュンジエ
■脚本:好故事工作坊
■原作:グーマン「杉杉来吃」
■キャスト:
チャン・ハン(フォン・トン)
チャオ・リーイン(シャンシャン)
ホアン・ミン(ジョン・チー)
リー・チョンユアン(リーシュー)

【あらすじ】
優しい夫婦のもとに生まれたシャンシャンは、風騰グループの就職試験に受かり、上海にやってくる。入社間もないある日、会社の人から呼び出されて病院に行くと、風騰グループのCEOのフォン・トンが待ち受けていた。なんとフォン・トンの妹のフォン・ユエが子供を産む際に輸血が必要になり、AB型RHマイナスという稀な血液型だったために、同じ血液型だったシャンシャンが呼び出されたのだった。その後、ユエの“命の恩人”となったシャンシャンのもとになぜか毎日、お弁当が届けられるようになった。
何があってもめげずに頑張り、いつも美味しそうに弁当を頬張るシャンシャンを見て、フォン・トンの心は次第に惹かれていく。
しかし、シャンシャンはフォン・トンの親友ジョン・チーに淡い憧れと恋心を抱いている。さらにフォン・トンの傍にも幼馴染みのリーシューが現れる。果たしてフォン・トンとシャンシャンの恋のゆくえは…

 


 

大陸ドラマのエポック・メイキングドラマになるのではないのでしょうか、「杉杉来了」
POPで賑やかでそして幼稚な台湾偶像劇に対して古臭く、垢抜けず、そして脚本はぐたぐたという大陸ドラマの印象をひっくり返してくれました。最後まで脚本はぶれることなく、シャンシャンの成長を、そしてシャンシャンに関わることになった人たちの成長を描いていきました。
甘くてカワユイ、少女マンガ的なデコレーションをはぎ取ると「杉杉来了」は女性の生き方を、新たなシンデレラの生き方を見せてくれたと思います。(褒めすぎ?)

 

 

 

fashion1
野暮ったい田舎から都会上海に出てきた女の子が、恋によって自分の自立を目指し、そして男性に頼ることなく自分で稼ぐ力を獲得しよう、キャリアを目指そうというテーマ。
シャンシャンのファッションもプチプラコーディネートではありますが、それなりに洗練されてきたわよね。実業家になるとシャネルを愛用していました。
個人的には序盤の野暮ったいシャンシャンが好きだったのだけれども。
洗練されるにつれ、シャンシャンの心の声、モノローグが少なくなったことも寂しい。
自分に自信がない時はモノローグでしか本心が語れなかったシャンシャンが、自信を持つにつれきちんと言葉で周囲の人に自分の気持ちを伝えれるようになったということでしょうけれども。

 

 

 

f2
ドレスアップファッションも変化してきましたよね。
中盤の思いっきり明後日の方向に迷走しているシャンシャンも好きでしたが。
とにかくシャンシャンは何をしてもカワユイ。フォン・トンがシャンシャンを好きになった気持ちがわかります。
どんなに人の悪意にさらされようと、自分の気持ちに素直になってフォン・トンにぶつかっていく勇気を持った女の子。
打算、計算がいっさいなく(仕事は経理なのにね・笑)、のびやかで率直な彼女を見ていると癒されます。
視聴者に愛されるヒロインって大切だよね。
劇中で経過した時間は2~3年だと思うのだけれども、入社 → 会計士 → 起業家 ってどんなスピード出世だとツッコミたくなります(爆)
あっという間に借金1千万元(≒2億円)も返済するし!(羨ましい・・・)
そうそう、ダンスも上手く踊れるようになったしね。
フォン・トンより実は多彩な才能を秘めているのです、シャンシャン。
「杉杉来了」におけるシンデレラの条件(玉の輿に乗る条件)とは美貌ではなく、お金を稼ぐ能力なんだという裏テーマがなんとも経済に勢いのある中国らしい。
フォン夫人になってもいざとなったら稼ぐ能力があるのよというのがシャンシャンのアイデンティティだし、家柄も美貌もないシャンシャンのステイタスになるのですね。
今の中国に求められている女性の資質が稼ぐ力なのです。

 

 

 

25-2
愛すべきフォン・トン!
私にとって彼は官能と理性の人なのです。
シャンシャンに一目ぼれをする熱情と、シャンシャンが自分を好きになってくれるまで、シャンシャンが自分の意志で彼との結婚を決意してくれるまで待つ冷静な忍耐力がある。
僕が君を好きなのだから君は何も考えなくてもいい、というようなよくある御曹司タイプではないことが異色。
常に彼は迷うシャンシャンに問いかけるのです。
「僕とつきあいたいのか?」「僕と結婚したいのか?」と。
フォン・トンの気持ちは最初から少しもぶれない。シャンシャンに対する愛はぶれない。だからこそシャンシャンの自分への感情の変化を静かに待つのです。
シャンシャンの成長はフォン・トンの緻密な導きがあってからこそ。
彼はゆっくりとシャンシャンを育て、彼女との関係性を築いていくのです。
シャンシャンって斜め45度の発想の飛躍をする子なので、ずいぶんフォン・トンは内心慌てたことでしょうけれども彼のポーカーフェイスは最後まで揺るぎなかった(笑)
誰よりもシャンシャンを信じていたから、シャンシャンに自分を信じてもらいたかった。
官能と理性がハイブリッドされた魅力的な、そしてちょっと不器用なヒーロー。

 

 

 

26-1
シャンシャンと関わることで彼自身も成長しました。
父母がなくなり、そして祖父がなくなり、彼は若くして風騰グループのCEOにならざるを得なかった。
彼が持っていた柔らかな心を自分の中にそっと閉じ込めて、冷静沈着にその背中に全ての責任を背負ってきて。
自分の中の想いを秘めていくうちにいつしか、言葉にしない気持ちが増えていくうちに、いつしか相手に対して何かを期待する、何かを想うという熱情も欠いてきて。
自分を否定されるのが怖くて、傷つくことや傷つけることを恐れて、やがて語りかける言葉を失くしていく。
そんな彼が思いっきり笑って、思いっきり泣いて、感情表現の豊かなシャンシャンに惹かれていくことは必然。
自分が閉じ込めてしまったあふれんばかりの感情を彼女は持っているから。
シャンシャンと向き合うことで、フォン・トンもまた、自分の感情を閉じ込めるのではなく素直にシャンシャンに語れるようになってくる。
彼の中に秘めていた愛情をシャンシャンに向けることで、フォン・トン自身も柔らかく、のびやかに、そしてさらに自由に変わっていく。
フォン・トンがドラマ終盤になるにつれて、表情が豊かになり、頬笑み、泣き、怒り、そして周囲の人たちを温かく包み込む。
そんな彼が視聴していると、愛おしくってね。私の中に彼への愛おしさが広がり、そっと癒されるのです。

 

 

 

 

もうこれからフォン・トンとシャンシャンに逢えないのは寂しいなぁ。
寂しいからフォン・トンのちょっと頑張りすぎちゃって、ちょっとイっちゃっているファッションチェック記事を次回書きます!

★★★★★


感想+考察

 

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 6 )

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  1. さあや

    yucaさま こんばんは。

    >洗練されるにつれ、シャンシャンの心の声、モノローグが少なくなったことも寂しい。

    そうそう!
    フォントンの言動の意図がわからずパニクってたシャンシャンかわいかったですよね~
    フォントンの感情が読めるようになり、
    分からないことは聞けるようになり、
    最後の方はフォントンの方がシャンシャンの意図を読めなくて焦ってましたよね。
    そういう変化が自然でいいなと思います。
    元カノをやり込めるしたたかさも
    あくまでも肯定的に描かれているんですよね。

  2. さあや

    途中で送信されちゃった!
    すみません。続きです。

    >シンデレラの条件(玉の輿に乗る条件)とは美貌ではなく、お金を稼ぐ能力なんだという

    これ!
    目からうろこです。
    結局仕事やめてユエと遊んで暮らすの?と
    ちょっともったいない気がしてたのですが
    能力を示すことができたから自信がついて
    引け目も感じなくてすむようになって
    堂々とフォン夫人として生きていけるのですね。
    う~む。なるほど。
    ものすごく納得です。

    フォントンも「下心がある方が…」とか
    「目先の利益より大物を狙え」とか
    下心でいいの?
    財産目当てでもかまわないのね?!と
    違和感を感じるセリフがありましたが
    お金持ちということは有能ということで、
    純粋に長所として評価されるべきことなんでしょうね。
    ちょっと日本人の感覚と違うのかも。

    ファッションチェックも楽しみにしてます。

  3. yuca

    さあやさま、コメントありがとうございます♪

    フォン・トンの意図は分かりにくいから(笑)
    どうやらヒトメボレしたらしいことはわかるのですが、どこまで本気なのかがわからない。
    いや序盤から彼は本気でしたよね~

    若いのに(30才くらいの設定だよね)妙に落ち着いているかと思いきや、子供っぽかったり。
    シャンシャンの魅力もありますが、フォン・トンの魅力が絶大な物語です。

  4. yuca

    さあやさま、どもどもです~♪

    >途中で送信されちゃった!
    私もよくやります(笑)

    >堂々とフォン夫人として生きていけるのですね。
    そうなのだと思いますよ。
    かつての中国でしたら女性もバリバリ働いてねという風潮だったのでしょうけれども、
    経済状況が良くなるにつれ、専業主婦が増えているのでしょうね。
    それだけ国力があるということです。
    今の日本でしたら、少子高齢化の世情にヒロインはキャリアウーマン(「あさが来た」のように)というのがトレンド。
    ドラマの中の女性の立ち位置も時代によって変わるのでしょうね。

    >ファッションチェックも楽しみにしてます。
    はあい、ぼちぼちとリサーチ中です。

  5. YUMIKO

    yucaさまへ

    お薦め通り「お昼12時のシンデレラ」は私のハートのど真ん中!!(笑)。

    そしてyucaさまの繊細な洞察と感性にここで触れて感動が何倍にもなってトリ肌が立つんです。

    韓国ドラマを見る前は中国映画のファンでしたが、台湾ドラマも中国ドラマもしっくりこなくて、余り見なかった→ yucaさまご指摘の欠点に納得(笑)。

    寡黙で完璧主義で前髪と上質のダークコート(ただし、なんでいつも襟を立てていたのかは不明(笑)室内でも)の似合う、外見青年・中じいさん。ト・ミンジュ氏といい、yucaさまのお好みに賛同致します。

    今度はゆっくり時間をかけてもう一度見直してはyucaさまの感想を話し相手に楽しみたいと思いました。

    素敵な素敵な作品を紹介して下さって有難うございます。

  6. yuca

    YUMIKOさま、お返事遅くなっています~
    ごめんなさいね。

    そして「昼デレラ」!!!
    いいでしょう。ハートのど真ん中ということで、私も嬉しいです。

    >台湾ドラマも中国ドラマもしっくりこなくて
    too muchな演出になっちゃうのですよね、国民性でしょうか。すべてが過剰になってくる。引き算の演出も大切だと思うのです。

    >外見青年・中じいさん。
    笑った~
    私たちの好みはそこらへんにあるのかも!
    YUMIKOさまのご指摘で新たな萌えに気づきそうな私です。

    こちらこそ喜んでいただけて何よりです!