南柯之夢・・・帝王の娘スベクヒャン 76話まで

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韓国ドラマ「帝王の娘スベクヒャン」72話から76話まで視聴。

 

 

物語はいよいよ起承転結の「転」の部分に入ってきました。
私ね、なんだか泣けて泣けて仕方がないです、このドラマを視聴していると。
とにかく主題歌の ♪ 井邑詞 ♪ を聞くだけで、目が潤んできます。
この物語は「待つ」物語かもしれないとかつて考察しました。
ただ恋しい人と共に暮らせる時代がやってくるのを希うのに、そんなささやかな幸せを待っているのに、いつもその幸せはその手からすり落ちていく。
まるで夢物語のように。

そして、この物語の根底を流れているのは「父」への渇望であるとも思います。
武寧王とクチョンという、生まれも境遇も違う2人の男を対比して描きながらも、彼らに共通しているのは一人の女を愛し、そして彼女と家庭を築きたいと願っただけなのに。
彼らの子供たちは、ソルランにしろソルヒにしろ、ミョンノン、チンム公も父親の愛を求める子供たちなのです。
そしてそもそも、舞台となった百済が漢水を失ってしまった国なんです。
漢水とは百済にとって「母」のイメージでしょうね、やっぱり。
「母」を失ってしまった国百済はそのまま、武寧王のイメージです。
失われた漢水を求める国、失われた女チェファを忘れられない父親の愛を求める子供たちの話が「スベクヒャン」です。

ソルランは本当の父を求め、ソルヒは実の父親を捨て、ミョンノンは父だと思っている王に対してどこか遠慮し、チンム公は亡き父の敵であるはずの王に父の面影を求める。
「帝王の娘スベクヒャン」がこんなに面白いのに、韓国では低視聴率で打ち切りになったという理由が何だかわかる気がしてきました。
時代劇とはかの国では強力なプロパガンダがないと受け入れられない気がしています。
この偉大な王がいる朝鮮。素晴らしい王が統べた国といった感じの血沸き肉躍る感じ。それが時代劇。
同時期に放映されていた「奇皇后」と比較すると、「スベクヒャン」との違いがよく分かる。
「奇皇后」は奴隷から皇后へと知恵と策略で成り上がる物語。
「スベクヒャン」は父を、母を恋しいと思う物語。
「待つ」物語なので、どこかセンチメンタルで女々しいかもしれませんが、そのセンチメンタリズムを私はこよなく愛しているのですけれどもね。
「奇皇后」よりはるかに面白い物語です。

 

 
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とうとうソルランが、ソルヒの秘密を、真実を知ります。自分がスベクヒャンだということを知る。
鳥肌が立つシーン。
マックムとソルランが出逢うまでが結構引き延ばされていたけれども、あっさりとソルランは真実を知ります。
自分がスベクヒャンだと。
ソルランが真実を知った場所が加林だということにも非常に意味がある。
加林には、いたるところに幸せだったチェファの残影が漂っています。
美しくて切なくて、哀しい。
チェファの愛の果たされなかったささやかな夢の残骸が残っている。
この物語の「母」はチェファでしょうね。彼女は序盤で死んでしまったのですが、登場人物たちの心の中にずっとその面影が漂っている。
チェファの善良さをソルランが、美貌を(演じるミョン・セビンが美人かどうかは別にして)ソルヒが引き継いでいます。
いよいよこの二人が本格的に対立をするところから、物語は「転」へと入っていくのです。

 

 

 

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いよいよソウの本領発揮です。いやあ、ぞくぞくする。
美しい顔を一枚めくると、なんとも言えない醜悪さがのぞいてくるソルヒ。
チンム公も言っていましたが「毒にまみれている」女性なのに、その毒に気づいているのはソルランとチンム公だけなのね。
ソルヒの毒が周囲の人を侵していくのでしょうね、これから。

 

 
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明るくて素直なソルランも好きですが、私は真剣に怒るソルランの表情も好きなのよ。
ソルヒに対して怒る理由が、自分の立場・・・王女を簒奪したということではなく、母を辱め、父を貶めたというところであるということに胸を打たれます。
高潔な彼女の性格が表れているよね。
ソルヒには姉ソルランがそんなことで怒っているとは分らない。
ソルランもまた、ソルヒがどうして王女だと偽証するのか分らない。
姉妹ですけれども彼女たちの魂は、光と影であり理解しあえない。

ソルランは「雪蘭」です。雪蘭はスベクヒャンの別名でしょう。香り高く咲く花。国を守る花。
これから彼女がどう、国を守って行くのかが見どころの一つでしょう。
「父」「母」を求める物語ですが、いつまでも私たちは子供のままでいることはできない。
ソルランやミョンノンが百済の母となり、父となることでこの物語は終結するのかもしれないけれども、まだまだ先は長いです。

 

 

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 4 )

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  1. FANです。

    眉芸さま日誌。

    そ、そう、SAWなんですよね、眉芸サマ。
    名は体を表す、ジグソーのスプラッタ映画。 B級の逸品と言う名誉までかぶります。

    で、ですね。この重たいドラマで、何故か爆笑。
    お姉さん・・、太子様と閉じ込められ、切羽詰まった場面で。・・・あの絵の破壊力・・・、凄いわ。
    (覚えておられますか?服を引きちぎって、紅で描いた、状況説明の図です)

    オマケに、太子様と梅を描いて、恋心を紡ぐしっとり場面でも。回想シーンで、その絵。
    ・・もう一回、爆笑させられましたわ。

    絵で爆笑を取れるのは、浜チャンか、草薙クンしか居ないと思っていたのに。まさか、スベクヒャンでねぇ・・。

    と、笑いも入れつつ、いよいよSAW嬢が女官を殺害。破滅に、チンム公が加担して・・。ああ、ドロドロ・・。

    ナンなんでしょ?この二人。どっか?5Bの鉛筆で描いたような、あか抜けないというか、濃い。

    しかしまあ、眉芸サマ。姉が、出自と妹の悪事に気づいたな、と悟る一瞬の、まあ上手いこと。
    そして、SAW嬢を追いつめる時の役者さんは、皆さん、輝きを増しますね。
    上手いのに、相手の演技に委ねて、受けに徹するって、若いのに大したもんだ。
    (あ、あなたに対する厭味じゃないのよ、ナル様)

    しかし、このドラマ。根本的に諸悪の根源は誰なんでしょう?兎に角、オモロイ、ワクワクさせます。

  2. yuca

    FANさん、コメントありがとうございます♪

    >絵で爆笑を取れるのは、浜チャンか、草薙クンしか居ないと思っていたのに
    あら、ヅカ出身のはいだしょうこ画伯をお忘れですわ。


    「おかあさんといっしょに」のスプーが妖怪のようになったときの衝撃はいまだに忘れられません(爆)
    それと同じくらいの絵の破壊力でしたよね。

    >、眉芸サマ。姉が、出自と妹の悪事に気づいたな、と悟る一瞬の、まあ上手いこと。
    そして、SAW嬢を追いつめる時の役者さんは、皆さん、輝きを増しますね。

    お、いよいよ佳境ですね。
    ここら辺からソルランも変貌してくるのです。
    天真爛漫なヒロインかと思いきや、終盤にかけてのミョンノンへの愛を諦めきれないエゴイスティックなヒロインへの変貌は見事。

    獏って知ってる?
    悪夢を食べるという想像上の動物よ。
    ずんぐりとしてかわいいの。
    でも悪鬼を見ると恐ろしい姿に変身する。体中に毒の棘が生えてきて、口から地獄のような炎を噴く。血をふりまきながら歩くの。
    こうなると誰も見わけられなくなる。
    父さんも、母さんも。
    ・・・友もね。

    >諸悪の根源は誰なんでしょう?
    あ、これ、私も考えたなぁ。
    そもそもは国を憂え、国を愛したヘ・ネスクの言動からじゃないですか。
    そしてそんなヘ佐平の清濁をあわせて受け入れ重用した王。

    王が王でいるための不幸、なんてことを考えますね。

  3. 再認識・あなた様のFANです。

    ・・・!!おい!!・・こら!、こらこら!!!
    名やんあチュ、ああ、もう、入力めちゃくちあ。

    なんちゅう、秘密兵器を持ち出されますか?(これを入力するのに、10分、PCから離れました)

    もう、勘弁してよ・・、アカン。まだ、上にスクロール出来ない。

    この図、(これを、絵と称するのが恐ろしい)。
    最果てのSAW嬢って、言ってもいいですか?
    あ、しょうこお姉さんには、何の罪もございません。
    しかし、まあ、よく、この恐ろしい図を、ご存知でしたね。
    彼女の歌声に免じて、記憶から消し去りたい、この恐怖の図。まさか、ユカさんから突きつけられるとは・・・。しかも、スベクヒャンで・・。お姉ちゃん、ソルヒが彼女を意味なく憎む気持ち、分かるわ・・。(どこで共感してんネン)

  4. yuca

    FANさん、コメントありがとうございます♪

    >なんちゅう、秘密兵器を持ち出されますか?
    あははは、喜んでもらえたようで嬉しいです。
    しかもスプーの画像がかなり大きいよね。
    もはやスベクヒャンの感想記事ではなくなっています(笑)
    衝撃ですよね~

    >お姉ちゃん、ソルヒが彼女を意味なく憎む気持ち、分かるわ・・。(どこで共感してんネン)
    あ、ここは私も共感したなぁ。
    いい子って嫌な子なんですよね、実は。
    ソルヒがひねくれる訳もわかる。