鰥寡孤独・・・帝王の娘スベクヒャン 34話まで

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韓国ドラマ「帝王の娘スベクヒャン」34話まで視聴。

 

 

クオリティの高いウェルメイドな時代劇だと思います、ハイ。
歴史ねつ造ドラマと一部では非難轟々だったらしいのですが、モノガタリだと思えば全然気になりません。
むしろ毎回続きが気になるところで終わって、サクサクと視聴できて面白くて、そしてなんだか泣けてくる、そんなドラマです。
で、私がボーっとしているうちに、KNTV放送分は46話まで進んでしまっているので、追い付かねばなりませぬ!

♪ 井邑詞 ♪という「帝王の娘のスベクヒャン」主題歌ですが、この曲がまたいいんですよね。
切々と恋々と歌い上げてきて、胸に迫るものがあります。
なんかね、もうパブロフの犬状態で聞くと無条件に泣けてくる。
仄かなメロディーに哀切の情感。
叶わなかった願い、届かなかった思い、すれ違っていく感情、幸せになりたいと望んだだけなのに。

月よ高く昇っておくれ
遠く遠く照らしておくれ
オギヤオガンドゥリ アオ タロンディリ
あの人は市場へ行くのね
泥濘に足が掬われないかと恐ろしい
オギヤオガンドゥリ アオ タロンディリ
心しずかに 急がないで
あの人の夜道に胸さわぐ
オキヤ オカンジョリ アオ タロンディリ

 

 

3種類のバージョンがあり、場面場面で挿入されて、なんだか胸が痛くってね。
♪ 井邑詞 ♪は「待つ」詩ですが、「帝王の娘スベクヒャン」は「待つ」物語なのかもしれません。

運命のいたずらで入れ替わった立場を元に戻すまで「待つ」物語。
届かなかった愛が、あの人に届くまで「待つ」物語。
道を間違ってしまったあの人が戻ってくるまで「待つ」物語。
あがき、もがき、苦しみながら幸せになる日を「待つ」物語。
真っ暗な道を未来へとおそるおそる進んでいき、いつかは夜が明けるだろうと「待つ」物語。

 

 

 

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物語では四人の王子王女たちの運命がいよいよ絡まってきます。
消えてしまった妹ソルヒを探すために百済の諜報組織ピムンで働くことにしたソルラン。
物語はこのソルランパートと、そして偽王女として宮中に居座ることになったソルヒパートで交互に進んでいきます。
ソルランパートは、熱血スポ根の様相を呈している(笑)
エリート諜報組織のピムンに入るために、ソルランは顔中血だらけ泥だらけ。
男たちとの競争で勝ち抜くために、女性であるという弱点を克服しのし上がっていかないといけない。
観ていて、スカッとします!
優雅さ嫋さは要求されずに、身体を張って生きていく彼女の姿を見ると、応援したくなる。
大好きな妹を見つけることだけを望んで、まっすぐなまなざしで駆けていこうと行こうとする彼女の物語のパートは、コミカルであり見ていて楽しい。

 

 

 

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百済の唯一の王女として、武寧王に迎えられたソルヒ。まんまと姉ソルランの立場を奪うことができました。
自分の幸せのためなら、実の姉でも蹴落とすことを躊躇わない果敢さ、冷酷さ、非情さは誰に似たのでしょうね。
母チェファや父クチョンではなく、もしかしてこの物語の悲劇の発端になったチェファの父、謀反を起こした祖父ペク・カに似ているのかもしれない。
自分の利益のためには、手を汚すことも厭わず、他人を蹴落とすことに良心の呵責もない女の子。

33話で自分のことをこう語っています。
「生まれながらの善人と悪人がいるのなら、妹は悪のもとに生まれたのだろう。
あの子は憎むものが多かった。
無能な父親を憎み、みすぼらしい家やつまらぬ村人たちも憎んだ。
毎日が退屈でうんざりだと言っていた。
でも、皆が妹のことを好きだった。本心を顔に出す娘ではなかったから。
母の愛が足りないとすねたりもした。でも心の中ではちゃんと分っていた。
母が妹を・・・愛していたことを。
妹はただ・・・すねる理由が欲しかっただけ。
しかし、一人だけ。
妹のことを嫌っていた者がいた。
妹のことを心から嫌っていたのは・・・私の妹、本人だった」

ソルヒの複雑な、その複雑すぎる愛を求める歪な心のカタチにゾクゾクします。

 

 

 

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百済太子ミョンノン。
高潔でさわやかなのに、潔癖症で、気難しい、愛すべき太子。
ソルランをピムンにするために陰でそっと手を差し伸べる彼が、愛に堕ちる瞬間はいつなんでしょうね。
しかし、彼の立場を考えると、切ないです。
実の父と敬愛している武寧王とは血のつながりがないことを彼は知らないので、父がどうして自分に対して少し距離があるのかが分からない。
太子としては大切にしてもらっているのに、息子としての親密さがないことをそっと諦めている彼の姿が切ないなぁ。
全てを完璧にこなせる太子が、ソルランといる時だけにみせてくれるコミカルな表情に、そっと私も癒されています。
彼の活躍は、まだまだこれからでしょうね。

 

 

 

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チンム公!
彼の孤独さが分かって、泣けてきた34話までです。
こういう孤独に押し潰されそうなキャラクターって私好きなんです。
親の愛が欲しくって、肉親の情が欲しくって、それだけなのにすれ違ってしまった思い。
チンム公はこの物語ではどちらかと言うと、ダークサイドの人物なのかもしれませんが、そうなる理由が非常に分るんです。
手に入らないものならば壊してしまおう。
その人の一番大切なものを壊してしまおう。
そんな思考をしてしまう彼の、深い悲しみと絶望と憎しみ。それらは愛の裏返しだものね。
ソルヒが偽女王ということを知る唯一の人物です。
彼がこの切り札をどう使ってくるのか。
どうやってスベクヒャンを壊そうとするのか。
チンム公の孤独とソルヒの狂おしいまでに全てを求めようとする気持ちが、いつしか重なり合うんでしょうね。

 

 

 

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武寧王!いい人なんです。
清廉潔白、高邁な王。彼が持っていないのは肉親の愛だけなんですよね。
自分の幸せを犠牲にして国に殉じようとする王の姿は、王の理想の姿ではないでしょうか。
彼が身内だと思っているミョンノン、ソルヒ共に血が繋がっていないことに運命の皮肉を感じます。
「帝王の娘スベクヒャン」って、絵にかいたような悪人がいないんです。
一生懸命生きているのに、皆心のどこかに欠落を抱えていて、その欠落を埋めるためにダークサイドに落ちていく。
ソルヒなんて典型的な例で、やっていることは酷薄なのに、彼女が王に対する娘が父に対するような思いは、本当なんだと思います。
だから胸が痛い。

皆、ほんの少しの愛を望んだだけなのにね。
孤独な人たちが織りなす物語が、狂おしく胸に迫ります。本当に素敵なドラマだわ。

 

 

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 4 )

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  1. Tommy Bamboo

    帝王の娘スベクヒャン主題歌「♪ 井邑詞 ♪」の楽譜がほしいのですが、どのようにすれば求められますか?

  2. yuca

    Tommy Bambooさん、コメントありがとうございます♪

    ごめんなさいね、私は楽譜のことはあまりよく分かりません。
    韓国のサイトではもしかしてあるかも。

  3. chisuku

    帝王の娘 スベクヒャン

    本当に、このドラマに墜ちました。
    ソルランのひたむきな生き方に心が高鳴ります。

    本当に、このドラマには悪人がいません。

    ヘザピョンのペクカへの企みも、王様は承知してたんですね。
    私情を交えず、百済の為だけに働いた事を理解していた。
    それもまた、感動した1つです。

  4. yuca

    chisukuさん、コメントありがとうございます♪

    >私情を交えず、百済の為だけに働いた事を理解していた。
    このドラマ、オーソドックスな作り方のように見えて、こういうところが新鮮ですよね。
    情を描いていながら、情だけではない判断が国づくりには必要なのだということを見せてくれます。
    おっしゃる通りに、そういう点にも感動しますよね。
    誰も悪人はいなくて(ソルヒは病気なだけなのです)、皆愛されたくって愛したくって、苦しんでいる。

    私も大好きなドラマです。