冷静と情熱のあいだ・・・密会 6話まで

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韓国ドラマ「密会」6話まで視聴。

ああ、ゾクゾクする。いいわね~、このドラマ。
通俗的になりそうな展開を、ぐいっと押し止めるクラシックの名曲の数々。
6話はリストの ♪ スペイン狂想曲 ♪にのって、まさに登場人物たちの関係が入り組み始め、様々な思惑が絡み合ってくる。

ソンジェ(ユ・アイン)とヘウォン(キム・ヒエ)の会話はどこか噛みあわないのに、ピアノの音色が介在すると、途端に瞳が潤みだし、私たちの知らない空間で二人だけの囁きごとをしているかのような、演出は秀逸。
年上の女と青年の秘め事をこっそり覗いてしまったかのような、うしろめたさと、甘美な背徳感に満ちている。

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世知にたけた女であるはずのヘウォンが、ソンジェのピアノの前でだけはまるで少女のような面持になる。
真っ直ぐに自分に向かい「僕の方があなたのことをずっと愛しているんだ」というソンジェを、普段は理性で押し止め交わしているのに。
彼のピアノの音色を聞くと、夢を希望を信じていた少女の顔になり、感情の赴くままに感動で涙をぬぐうのだ。
そして、いつもはまだよく恋なんか知らないはずのソンジェが、拙い言葉でしか自分を表現できない少年のようなソンジェが、ピアノを弾いている瞬間にだけ、全てを知っているかのような大人の男のまなざしになっているのが印象的。

20歳の年齢差が逆転し、ヘウォンはまるで少女のように、ソンジェはまるで誘惑している男のように見えてくるから不思議。
ピアノを離れると、年上の女性と彼女に憧れ崇拝する青年に戻ってしまうのに。

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無邪気に派閥だの出世欲だのに駆られていたヘウォンの夫カン・ジュンヒョン(パク・ヒョクグォン)が、そんなソンジェとヘウォンのプラトニックであるにもかかわらず、どこか淫靡な交感に気付く。
彼の顔によぎるのは、嫉妬か、出世欲か、名誉か、それとも天才ソンジェへの憧憬なのか。

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私が見落としているのか、理解不足なのか。

ヘウォンとソ・ヨンウ(キム・ヘウン)、ジュンヒョンの関係は、いえ、この財団の人たちの人間関係は摩訶不思議で、打算と駆け引きとで成り立っているのか。
そんな表面は華やかできらびやかな世界で、少女の頃の夢を、希望を諦めて、優秀なビジネスウーマンとして生き延びてきたヘウォンだからこそ、ソンジェのピアノに心も体も引き寄せられていくのだろうな。

崇高なクラシックの世界の表とは真逆にその裏では脱税、裏口入門、悪徳業者あっせんがはびこる。
そんな世界で生き延びてきたヘウォンは、だからしなやかにしたたかな女性だけれども。

a0192209_22021788このチェロの少女も、何かの伏線だよね?
「密会」は主人公たちに彼らの感情を語らすことを、極度に省いている。
ありきたりの日常的な会話に潜む主人公たちの心の揺らめきを、かぎろいを、なんとかカメラワークや微妙な間から読みとろうと必死で視聴していると、あっという間に1時間が終わってしまう。
決してミステリーではないのだが、実は恋愛がこの世で一番ミステリーなのかもしれない、とも思う。
下手なミステリーよりも息をのんで視聴し、ヘウォンとソンジェの間に扇情的なニュアンスを感じるとドキドキし、うろたえる。

冷静と情熱の間で揺らぐ登場人物たちの、微妙なバランスで平穏が保たれている6話まで。
話が急激に動き出す寸前の、一瞬の静寂のようで。
ジェットコースターが頂点まで上り詰めて、急降下始める前の一瞬の静止のような。
せき止められた感情がいつ迸るのか。そんな緊張感に満ちた、5話、6話です。

BGM: Liszt spanish rhapsody s.254

 

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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