あまちゃん

a0192209_2034828あまちゃん (2013年 日本NHK)
■演出:井上剛、吉田照幸、梶原登城ほか
■脚本:宮藤官九郎
■プロデューサー:訓覇圭、菓子浩
■キャスト:
能年玲奈、小泉今日子、尾美としのり、杉本哲太、松田龍平、古田新太、小池徹平、橋本愛、福士蒼汰、有村架純、八木亜希子、吹越満、塩見三省、でんでん、平泉成、木野花、美保純、片桐はいり、渡辺えり、薬師丸ひろ子、蟹江敬三、宮本信子
■オープニング:大友良英
【あらすじ】
夏休みに母の故郷である岩手県北三陸市にやって来た東京育ちの高校生・アキは、現役で海女を続ける祖母と出会い…


「あまちゃん」のおかげで、本当に明日が待ち遠しい、といった半年を送ることができました。毎回笑ったり、突っ込んだり、にやにやしたり、胸が締め付けられたり、泣いたり、と忙しい15分だった。
なんだか、終わっちゃったことが、どこか信じられなくて、でも1週間もすぎると「あまちゃん」が放映されていたあの日々が、遠い昔のようでもあり。
なんだか、不思議な気持ちです。
「あまちゃん」に関しては、なんと83記事も書いているので、私の中ではかなり書きつくした感はありますし、矢吹ジョーのように「真っ白に燃え尽きて」もいたりします。
よく書いたよ(笑)
72回で「トンネルの先に待ち受けているものは、なんでしょうか?」と書いたけれども、まさか本当にトンネルを抜けるまでの物語とは思いもしませんでした(笑)
成長しないヒロインの周囲が成長する物語・・・とのことですが、やっぱりそれはちょっと違うよな、と思っています。
「あまちゃん」において描かれるのは「再生」と「和解」であることは、明白ですが。
やっぱりアキは成長したんです。「再生」したんです。
第1週目に、夏ばっぱに北三陸の海に突き落とされた瞬間に。

 

海底のウニを見つけるように、「本当の自分」を手に入れていく物語でもあるのよね。
海=羊水であり、羊水の中の真実の自分=ウニを手に入れることで、成長していく物語でもあります。
北三陸の海によって、アキちゃんは再び生まれ変わることができたのね。

なんて、56回で考察していました。
アキちゃんは成長しないヒロインに見せかけて、誰よりも早く「再生」したがために、まるで「あまちゃん」156回の中で成長していないように見えた不憫なヒロインなのです。
普通のドラマでは主人公は、終盤にむけて成長するけれども、アキちゃんは物語が始まってたった2話で成長したという(笑)
「海」が子宮ならば、「隧道」も子宮。
トンネルを抜けだすことができないユイちゃんがトンネルを抜け出すまで=「再生」でもありました。
その意味では「あまちゃん」ラストが「隧道」を走って抜ける少女(「スタン・バイ・ミー」・涙)が光に包まれる、というのもやっぱり「再生」なんですね。
「君の代わりは君しかいない」ということを、登場人物たちが自覚する物語でもあるのです。
「再生」した彼らの走っていく先は・・・また、別のお話・・・ということなんでしょうか。
最終週になるにつれて、「あまちゃん」はアキちゃんの物語、というよりは実は春子と鈴鹿ひろ美の物語であったということがはっきりしてきました。
それだけ、鈴鹿ひろ美と春子の「潮騒のメモリー」は衝撃でした。
因縁の二人の鮮やかな「再生」の物語が、「あまちゃん」だったのね。

 

なまっているのはWアキという、抱腹絶倒な突っ込みの中で、アキは問う。
「一人ぐらいなまってたっていいべ。
TVだからってみんながみんな、同じ言葉喋んなくたっていいべ」
そして訛りが無くなれば、北三陸の皆が悲しむので訛るんだと、自分の存在理由を、まっすぐなまなざしで鈴鹿に語るのだ。
「そしたら鈴鹿さんはなんのために女優やんだ」と。
この問いかけに、鈴鹿ひろ美が答える時、それがおそらく25年前の春子、太巻、鈴鹿の因縁が解かれる時なのかも。

83回で考察していましたが、「あまちゃん」というドラマでは鈴鹿が「なんのために女優やんだ」という回答を、見せてくれた事に感動。
小ネタが取り上げられやすい「あまちゃん」ではありますが、こういう何気ないセリフも最終回に向けてきちんと拾って答えを出すという脚本の緻密さにも脱帽。
11月に出版されるシナリオ本を読みこめば、もっと面白いんでしょうね。
ユイちゃんが「潮騒のメモリーズ 第二章」とノートに書いていましたが、「あまちゃん」は春子と鈴鹿の「潮騒のメモリーズ 第一章」でもあったわけです。
そちらが主眼だったのかも。
そう考えると、アキちゃんのミサンガは1本切れなかったし、彼女をめぐるセンパイ、ストーブさん、(そしてミズタク?)ラブラインはどうも奥歯に物が挟まったような、奥歯そのものがないような、なんとも尻切れトンボ(笑)感も納得がいきます。
そこらへんのお話は、「潮騒のメモリーズ第二章」ってことなのでしょうね。
いつか、また、必ず彼らに出逢えることを信じて。
いつか、再び、クドカンは北三陸の愛すべき人々の物語を書くだろう。楽しみだ。
走っていくその先の物語に、出逢えることを信じて。

 

OMG★★★★★
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□□□□□ おしまい □□□□□


「あまちゃん」記事のINDEX

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 2 )

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  1. はづきす

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    yucaさん、おはようございます!そしてお疲れ様でした。
    あまちゃん考察最終回、楽しみにお待ちしてました。

    そうか、アキちゃんは2話ですでに再生済みだったのですね。なるほどです。そしてその進化形・天野アキは、春子と鈴鹿さんの間の深い溝を埋める橋になったのかな。
    春子と鈴鹿さんの関係は、ほんと美しい奇跡でしたね。あまちゃんは、朝から贅沢な物語を見せてくれてたのですね。(おおう…やっぱりDVD欲しいなあ。。。)

    初めましての書き込みをした時から、yucaさんのブログを楽しみに拝見していました。こうしておしまいの記事を読ませていただいたことで、私の「あまちゃん」にも区切りがつけられました。

    「潮騒のメモリーズ第二章」、ぜひ見たいですね!!奥歯そのものがないようないろんな尻切れトンボエピに決着をつけてもらえればなお嬉しい♪

    yucaさんは今「ちりとてちん」を見ていらっしゃるとのこと、私も見てますよ~!あま好きな方々の中でちりとてちんを推される方がけっこういらっしゃるので、これは見るべきなのかもと感じてます。もしyucaさんが面白いと思われれば、こちらでまた感想を拝見できるのかな?

    ではでは、また参ります(^0^)/

  2. moonlight-yuca

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    ♪はづきすさん、コメントありがとうございます♪

    あまロスが重症ですよね~ 何もする気にはなれないのに、「あまちゃん」を視聴していたのが遠い昔のようで。

    >ほんと美しい奇跡でしたね
    なんだか、最後、全部鈴鹿さんに持っていかれた感がイナメナイヨネ(笑)
    DVD欲しいですよね。
    カットシーンも全部収録された完全版が。

    はづきすさんと、「あーでもない、こーでもない」と言ったり、「ミズタク~っ!」と叫んだり本当に楽しかったです。
    >奥歯そのものがないようないろんな尻切れトンボエピに決着をつけてもらえればなお嬉しい♪
    いや、最後、クドカンがあとは視聴者のご想像にお任せします方式で(笑)
    ミズタクはあのまま、北三陸の陽だまりの中に佇んでいるのでしょうか。
    それともお座敷列車で全国行脚かな。
    絶対、視聴したいよね。

    >あま好きな方々の中でちりとてちんを推される方がけっこういらっしゃるので
    そうそう、根強いファンがいるみたいですね。
    私も「初ちり」になります。
    また、一緒に見ていけたら、嬉しいです♪