三代前からマーメイド、親譲りのマーメイド・・・あまちゃん153回その2

a0192209_6272043「あまちゃん」153回。

 
鳥肌が立って、言葉にならなくて、何回も何回も繰り返し視聴した153回。
半年かけて、この美しいシーンをスタッフは創りあげてきたし、半年かけて、私たちはこのシーンで涙するようにこのドラマに寄りそってきたのだ。
こんなにも、どこかユーモラスに、そしてこんなにも美しいシーンを視聴することが出来るなんて、なんて至福なんだろうか。
「再生」を見た。
鈴鹿ひろ美の再生であり。
天野春子の再生であり。
そして、荒巻太一の再生であり。
北三陸の人々の希望の再生を。

 

 
a0192209_6371581またもや影武者を用意しようとした太巻。
「まっとうなやり方で勝負しなさいよ」とかつて春子に言われ、その後改心したかのように見えるた太巻だが、やはり変わってなかった太巻。
「あの人(鈴鹿)も殻を破れるかもしれない」と言いつつ、あくまで「鈴鹿ひろ美」の外面だけを守ろうとした太巻。
まるで、そんな彼に天誅を与えるかのように電池が眉間に飛んでいく。
(蛇足ですが「SPEC」のラストシーンを思い出しました)

 

 
a0192209_6425196そして母と和解し、娘に感謝をし、「天野春子」として自分の戻りたい場所を見つけた春子は、もう「鈴鹿ひろ美」の影武者としての声は出なかった。
ドラマ序盤からアキは「影武者」を「落武者」と間違えて、何度も私たちを笑わすが。だが実は春子は「落武者」でもあったかもしれない。
自分の戻る場所が分からずに、彷徨っていた飛べない鳥。
「落武者」だからこそ、他人の声になりすます、鈴鹿の声になりすますという「影武者」をやってしまったのだ。
自分のアイデンティティを見失っていたから、他人のアイデンティティを創り上げることに加担してしまう。
春子の声は「天野春子」としての声でしかなくなった瞬間。
自分が自分に戻った瞬間。

 

 
a0192209_6502938マーメイドは声を失う代わりに、いつか王子様が自分をアイドルとして見出してくれる芸能界で生きていこうとしたが、魔法は解けた。
ここからは、自分の声で、自分の足で、芸能界で、いや人生に立ち向かっていくのだ。
もう、魔法なんかいらない。
「その少女の姿は、それっきりもう見えなくなってしまいました」とアキの声でナレーションが入るのも、意味深い。
少女の夢は昇華して、残ったのは「天野春子」だから。
三代続くマーメイドだから。

 

 
a0192209_651495鈴鹿ひろ美が ♪ I miss you ♪ と歌い出した時、鳥肌がたちました。
実は彼女もずっと、I miss me だったのだから。
鈴鹿にとってI miss you のyou は「鈴鹿ひろ美」だったのかもしれない。
彼女はこの舞台で歌いだすことで「紛れもなく鈴鹿ひろ美」になったのだから。
鈴鹿の気持ちを考えると、また涙が出る。
「大当たり」が出たけれども、彼女は舞台の上ではいつも完璧なのだ。
だって女優だから。
まるで「ガラスの仮面」のマヤちゃんを彷彿とするような、役作りのメソッド。
80年代で時間が止まっている春子の部屋で、あの頃の春子の育った環境に思いを馳せ、北三陸の海を眺め春子の気持ちに寄りそう。
「鈴鹿ひろ美」の声だった若春子になるために。
彼女は、80年代に活躍したアイドル「鈴鹿ひろ美=若春子」という役を作り上げることで、自分を取り戻す。

 

 
a0192209_724886鈴鹿ひろ美のその孤独な闘い、「自分の声で誰かに感動を伝えたい」という希求が私たちを泣かせる。
彼女も春子と同じように見失っていたかつての自分を見出し、自分が自分に戻った瞬間。
つづく・・・

その時々の、私の心の琴線に触れたモノ・・・ 小説や、映画、音楽、ドラマ、ファッションについてだけの簡単な備忘録。 Everything was beautiful and nothing hurt.

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  • コメント ( 2 )

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  1. IVY

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    yuca様、おはようございます

    鈴鹿ひろ美の歌う「潮騒のメモリー」の動画、ありがとうございます
    若鈴鹿は絶対音感がマヒしそうですが(苦笑)
    今の鈴鹿さんはすごくよかったです

    クドカンのドラマは一体どこまで本領発揮度が高くなっていくのでしょうか

    そしてyuca様の文章もこれぞ!という感じで涙です

  2. moonlight-yuca

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    ♪IVYさま、コメントありがとうございます♪

    154回では太巻氏と春子の間で「鈴鹿ひろ美はわざと下手に歌っていたのか」という論争が起きましたが。
    どちらにせよ、鳥肌で感動ものです。

    薬師丸演じる鈴鹿はあまり大女優という気がしていませんでした。
    私の中での大女優のイメージは「Wの悲劇」の三田佳子なもので(笑)
    優しい人だなぁ・・・と思っていましたが、153回で「プロ」の力を見せてくれました。

    >クドカンのドラマは一体どこまで本領発揮度が高くなっていくのでしょうか
    いやあ、本当にそうです。
    ピタッとおさまる所に収まりつつある台本に脱帽。
    クドカンって朝ドラ向きかもしれませんね。
    次はいつ彼の作品をTVで視聴できるのか。

    「あまちゃん」残り2回。
    来週のことを考えると憂鬱になります。